織田信長が“兵10万人の心”を掴んだプレゼンの「核」とは?──マイクロソフト澤円のプレゼン塾(その5)

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織田信長が“兵10万人の心”を掴んだプレゼンの「核」とは?──マイクロソフト澤円のプレゼン塾(その5)

プレゼンテーションを成功に導くには、やはり聞き手に響き、さらには周囲に伝えたくなるような「核」となるものが必要です。

今回は織田信長を例に、彼がマイクやスピーカーやプロジェクターも使わず、どのように10万人もの兵力を動かすプレゼンテーションをしていたのかを考えてみたいと思います。

プレゼンテーションの「核」を作れば成功確率は格段に上がる

いよいよプレゼンテーションの「核」の作り方について考えてみましょう。

「核」をきちんと作ることができれば、プレゼンテーションの成功確率は格段に上がります。逆の言い方をすれば、「核」のないプレゼンテーションは非常につまらない、聞き手に響かないものになる可能性が高くなります。

では、プレゼンテーションの成否を左右する、しっかりとした「核」を生み出すにはどうしたらよいのか。そもそもプレゼンテーションの「核」とはなにかという点を、再度明確にすることが必要です。

プレゼンテーションの「核」とは、「プレゼンテーションが終わった後にしっかりと相手の心に残って、しばらくの間その人の中にとどまり続けるもの」であると、プレゼン塾・第3回の記事でお伝えしました。(第3回記事はこちら)

プレゼンテーションは、その場にいる人々にしっかり伝えるのがまず大事です。それは間違いないですね。さらに上をいくプレゼンテーションは「聴いた人たちが、ついつい他の人にも教えてあげたくなるもの」ではないかと私は考えています。

「こんな面白いことを聴いた」「仕事に役立つ知識を得た」「自分たちが大きなリスクを抱えていることを知った」という感想を抱くと、人は誰かに伝えたくなる習性を持っています。まあ、時々自分だけのものにしようとする人もいますが(笑)。

戦国時代の将はどうやってプレゼンテーションしていたのか

私は、プレゼンテーションが「大いなる伝言ゲームのスタート」ではなかろうか、と思っています。そして、その伝言ゲームの主役こそ、プレゼンテーションの「核」になるのです。

ちょっと日本の歴史を想像してみましょう。

例えば織田信長さん。多いときは10万人を超える連合軍を率いたとも言われる、戦国武将の大スターです。

私の記憶が正しければ、その当時はマイクやスピーカーやプロジェクターもなく、無敵のプレゼンテーションツールであるPowerPointもまだリリース前だったはずです。にもかかわらず、10万人を超える兵力を動かして勝利できたのは、なぜだったのでしょうか。

これは実際に見たわけではないので単なる澤の想像なのですが、彼は側近に対するプレゼンテーションが抜群にうまく、しっかりと「核」を伝えることによって、後方に控える末端の兵士まで続いていく伝言ゲームを制したのではないかと思います。故に、他の武将よりも多くの成功をおさめることができたのではないかと。

信長さんが考える全体戦略と将来展望を、分かりやすい形でまとめ、効果的な言葉を使い、表情豊かに伝えることによって、側近の武将たちが大いなる感動と尊敬を持ってそれを受け止めたのではないか。

そして、側近の武将たちは伝えられた言葉が自分の中で熱を帯びているうちに、自分の配下の者たちに大いなるパッションをもって伝え、それを聴いた者たちはその下の兵士たちに…といった感じで、どんどん伝わっていったのではないかと想像しています。これはただの妄想ではあるのですが、あながち間違ってはいないのでは?と思っています。

ITはもちろん、印刷技術すらまだない時代、伝えるための術は「口コミ」が全てであったことでしょう。いかに言葉で伝えてもらうか。そのためには、最初の起点となる言葉、すなわち信長さんのプレゼンテーションが素晴らしいクオリティであることが絶対条件になります。

織田信長が行ったプレゼンテーションの「核」を考えみる

では、彼のプレゼンテーションの「核」は何だったのでしょう?

万単位の軍勢が命がけの戦いに身を投じるだけの必然性を与える言葉とは、どんなものだったのでしょうか。

これも私の想像ですが、「この人についていけば、必ず自分たちの生活は豊かになる」「きっと昨日よりもいい暮らしが送れるに違いない」という期待を持たせてくれる何かがあったのではないでしょうか。

鉄砲隊で有名な長篠の戦いを前にし、信長さんは自分の側近に対して、火縄銃のスペックについてあれこれプレゼンしたとは思えません。合戦における全体戦略を語り、勝利の結果に得られる民衆の素晴らしい暮らしについて語ったのではないでしょうか。

信長さんが統治する地域の拡大のために行ったと想像されるプレゼンテーションの「核」は、具体的には以下のようなことが含まれていたのではないかと思います。
側近たちの地位向上 その配下の兵士たちの評価のアップ 統治する民衆たちの暮らしの改善

ちなみに、信長さんが戦場に現れたときの兵士たちのモチベーションアップはすごかったそうです。それまで直接彼の話を聴いたことがない兵士たちが盛り上がるのは、伝言ゲームがうまくいっている証拠ということですね。

次回は、より具体的なプレゼンの「核」の作り方について、解説していきたいと思います。

連載:マイクロソフト澤円のプレゼン塾 記事一覧はこちら

著者プロフィール

澤 円(さわ まどか)氏

日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。2011年7月、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長に就任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界世界No.1プレゼン術」

Twitter:@madoka510

※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。

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