「第一線で活躍する人で性格の悪い人は見たことがない」。個性派俳優【新井浩文】ロングインタビュー<後編>

「第一線で活躍する人で性格の悪い人は見たことがない」。個性派俳優【新井浩文】ロングインタビュー<後編>

クズ男から弁護士、刑事、ビジネスパーソン、戦国武将に幕末の志士、ゴリライモ……。ありとあらゆる役を見事にこなし、しかも短時間でも強烈な存在感を残す俳優・新井浩文さん。Twitterによるドラマ実況も大きな話題に。また、アニメのキャラクターのモチーフにもなり、とうとう声優も務めることに。俳優、声優、実況もいけちゃう唯一無二の存在、新井浩文さんはいかにしてできあがったのか。ロングインタビュー。(前編より続く)

第一線で活躍する人で性格の悪い人は見たことがない

――映画にドラマに引っ張りだこの超売れっ子です。どうしてこんなに次々に声がかかるんでしょうか。

新井:いっぱい仕事をしている人は、ウチ(※編集部注 新井さんは自分のことをこう呼ぶ)だけではないけど、自己分析では世渡り上手なんじゃないでしょうか(笑)。好きな人には、すごくちゃんとしていますから。嫌いな人にはしないけど。

でも、長くいい仕事をしている先輩たちを見ていると、行き着くところは人間力なんじゃないかと思います。年を取っていくと、第一線ではやっぱり淘汰が始まっていきます。それでも第一線にいる人で、悪い人は見たことがないです。

例えば礼儀とか、スタッフへの態度、若手への態度。いわゆる権威のあるプロデューサーへの対応と、権威がないスタッフへの対応が違うような人は、一度は消えると思いますね。そこから這い上がってくるかは別にして。これは俳優に限らず、あらゆる職業でも、会社でも同じなんじゃないでしょうか。

まわりのせいもあるんですよ。事務所の扱いが間違っていたり。若くして大きな稼ぎをもらったりすると、勘違いしかねない。映画の世界では、スタッフさんに悪態つくなんて、ありえない、とウチは最初に教わりましたから。厳しかったけど、今思えば、いい環境でした。

そして人間力って、普段が出ちゃうんですよ。いかなる名優も、普段がすべて出ると思っています。普段をどう生きているかで、顔も変わっていきますからね。

思っていることは全部叶うと思っている

――そうなると、クズ役を演じるときには、どうするんでしょうか。

新井:それは、仕事ですから(笑)。基本、台本通りのことしかやりませんので。台本通りにやると、誰でもああなるんです。だから、なんとも思わないですよ。まわりがなんと言おうと。

ただ、『モンテ・クリスト伯—華麗なる復讐』のとき、Twitterで実況したのは、ツッコミどころはこっちもわかってる、というのを伝えたかったからです(笑)。それこそ、つっこみどころ満載でしたから。ドラマは、放映時間が決まっているので、たまにやります。映画ではできないですから。

 

――でも、Twitter実況にファンは大喜びだったみたいです。ファンサービスやSNSも熱心な印象です。

新井:サインや写真も、できる限り応じますよ。メシ食べてるときは、さすがにちょっと難しいときもありますけど、そうじゃなければ。映画のような娯楽は、それこそ絶対に必要ではない仕事なんですよ。なのに、食わせてもらってる、という認識があります。だから、ウチごとき、いくらでも出ていきます。お客さんがいて、成り立っている仕事ですから。

Twitterは本当に便利なツールだと思います。映画宣伝などはしたからといって、どれだけの人が映画に行くか、と思っていて、それより、地方の舞台挨拶に行くほうが、よほど信頼感があると思っています。

SNSって、好きな人をフォローするわけですよ。好きな人の情報を知りたいから、フォローしている。興味ない人はフォローしない。興味のある人だけが見てくれているということです。それが、テレビとの違いです。ウチは、宣伝が苦手、というのも大きいんですけど(笑)。

――そして新しいチャレンジとしてアニメ『ブラッククローバー』で新井さんがモチーフのキャラクター・ライアが誕生して、自ら声優を務められています。

新井:もともと「週刊少年ジャンプ」のファンだったんですよ。あるときテレビ番組の放送作家に出演の条件として、ジャンプに連載中の漫画家の家に行けるなら、と言ってみたんです。そうしたら、『ブラッククローバー』の田畠裕基先生に本当に会えまして。それで、よければウチをモデルにキャラクターを描いてくれませんか、と言ったら、ぜひ、と。しかも、脇役かと思ったら重要な役で、これにはびっくりして。

ただ、声優は、難しいと思いました。S級のプロの声優に交じってやるのは、やっぱり大変です。技術が違う。そもそもの根本が違う。映像では通用することがアニメでは通用しない。

現場では声優が全員で一度に録音するんですが、S級プロのようにはいきません。NGを何度も出したり、撮り直しもしました。これはもっと勉強しないと、です。

でも、嬉しかったですけどね。子供の頃からジャンプが大好きでしたけど、自分のキャラクターが魔法を使って戦っているなんて、本当に驚きですよ(笑)。

 

――お忙しいと思います。仕事に向かうモチベーションは何でしょうか。

新井:お金です(笑)。もちろん、いい作品に関わりたいという思いもありますが、生活のためにやってるんですよ。社会不適合者ですから。メシを食べるためには、これをやるしかないんです。やらないといけないんですよ。それが仕事だから。

仕事がなくなる不安は常にあります。ほぼ毎日ある。この仕事がダメだと次はない、という危機意識はいつも持っています。あっても、どうしようもないですけど、ネガティブに捉えてもしょうがないですね。

こんなふうになっていたい、と決めて、その経過の道を頑張る。人はそれを努力と呼んだりします。経過が大事なんです。そうすると、結果はおのずとついてくる。ウチは、思っていることは全部叶うと思っています。逆に、思わなかったら、できないし叶わない。

でも、大事なのは、思っていることは明かさないことですね(笑)。思っていることは口に出してこそ実現する派もいますが、ウチは人には言わない派です。言わないと、絶対にできると信じています。

(前編はこちら)

文:上阪 徹 写真:平山 諭

スタイリスト:立花文乃

ヘアメイク:岩川エリ

編集:丸山香奈枝

 

 

<衣装協力>

・ブランド名:YOHJI YAMAMOTO

・問い合わせ先:ヨウジヤマモト プレスルーム/03-5463-1500

 

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