マイウェルボディ協議会が「女性の低体重/低栄養症候群」(FUS)に関するセミナーを開催

マイウェルボディ協議会・代表幹事であり、順天堂大学大学院医学研究科 スポーツ医学・スポートロジー/代謝内分泌科学 教授の田村好史氏のもと、「女性の低体重/低栄養症候群」(FUS)に関するセミナーが開催されました。

このFUSに含まれる主な疾患には、低栄養・体組成の異常・性ホルモンの異常・骨代謝の異常のほか、循環・血液の異常、そして精神・神経・全身症状が挙げられます。

本セミナーで、閉経前までの成人女性における、低体重や低栄養による健康課題についての問題点や対策について伺うことができました。

 

若年女性に多いFUSによる健康リスク

日本は先進国の中で、最も痩せた女性の割合が多いという統計結果になっています。

1980年代から増え続けており、その原因としてダイエットブームの定着を指摘。

美容大国である韓国では痩せている人が多いイメージですが、実は日本の半分程度の割合となっており、アメリカではさらに少ない結果に。

糖尿病の専門医でもある田村氏は、

「実は痩せていると糖尿病になりやすいという疫学があり、その原因を探索する研究を6年ぐらい前から進めていた。」

と説明。

肥満だと糖尿病のリスクが高いということは知られていますが、痩せている方も実は同じぐらい、あるいはそれよりもリスクが高いということも知られているのだそう。

この原因に関して、痩せた女性との相関関係の研究が順天堂大学で実施されました。

ある実験で、痩せた20代の女性約100名に砂糖水を飲んでもらい、血糖値がどれぐらい上がるかを測ります。

通常だと血糖値が上がって、約2時間後には正常な値に戻るそうなのですが、上がった血糖値が2時間後も戻らずに耐糖能異常が起こる割合が、標準体重の方は2パーセントぐらいだったのに対し、低体重の方では標準体重の方の約7倍程に高まることがわかりました。

田村氏は様々な国で肥満対策が講じられる中、日本では女性の痩せがもたらす健康リスクが問題になっているのではないかと考え研究を進めています。

この痩せの問題は血糖値だけではなく、骨の問題や月経不順、あるいは不妊の原因など様々な疾患の原因となっており、そして高齢になると寝たきりになってしまう原因にも。

骨密度は10代でピークとなり、閉経ぐらいまで横ばいとなり、閉経後に落ちてくるのですが、この骨密度を増やすものとしてしっかり栄養をとって体重を増やす、運動するというのが重要であると説明。

あまり食べないで運動もしていない状態だと、10代の頃に骨密度が上がりきらないというデータもあるようです。

実際にこの健康課題に関しては国も問題視しており、若年女性の痩せ対策、骨粗鬆症検診の受診率の向上を目指しているそう。

そして若年女性の低体重/低栄養の疾患概念確立を目指したワーキンググループを設立。

さらに個人の意識や行動に焦点を当てるだけではなく、

「瘦身願望を生み出す社会構造へのアプローチが不可欠である。」

と目的を掲げます。

この低体重や低栄養はどのような健康リスクをもたらすのかというと、骨や月経の問題やビタミン不足・鉄不足での貧血・代謝異常・糖尿病にもなりやすくなるとのこと。

さらには倦怠感や不安・冷え性、肌質・髪質の低下などにも関連するということが分かっているそうです。

疾患概念確立の目的と定義として、

「低体重または低栄養の状態を背景として、それを原因とした疾患・症状・兆候を合併している状態です。」

と説明。

「日々感じているような体調の良し悪し、あるいは病名、こういうものは実はこの氷山の上の部分だけを見ているものであって、その容体あるいは原因は低体重や低栄養にある。」

とし、概念化したイラストを掲載。

この氷山の上部に出てきたものばかりを1つずつ対処していくのではなく、

「サプリを飲むとか、肌は(ケア用品を)塗ってみるとか、薬を飲むとか、色々な対策が考えられるわけですけれども、この氷山の水面下の部分、ここに直接アプローチする。しっかり食べる・運動する、そういうことによって氷が溶けていって全体が沈んでいき、この上部の症状は同時におおむね改善するのではないか。」

と解説しました。

 

FUSの原因の1つである「瘦身願望」

FUSの原因として特に注目されているのは、

「メディアなどの痩せてる方が良い」

という価値観の浸透の影響によって瘦身願望が高まり、過剰なダイエットなどで痩せた結果、調子を悪くしてしまうという問題があります。

東京・大阪・和歌山の小学生195名にアンケート調査を行ったところ、なんと小学校1年生の女児では約3分の1が痩せたいと思うと回答し、6年生になると約半数が痩せたいと回答するという結果に。

この痩せ願望に対する価値観がなぜ形成されるのかについて、

「体型に関する、どなたかからの指摘がかなり深く関係しているということが分かってきています。」

と言及。

ご家族からの体型に関する指摘や「痩せてよかったね」「痩せたね」ということが褒め言葉として使われてしまい、それが瘦身願望へ帰結することが問題点となっているそう。

これによって「痩せていた方が良い」という価値観を同時に押し付けている可能性を指摘。

またもう1つの問題は、中高生になるとSNSや友達同士での会話で痩せ願望がより強化されていくこと。

田村氏は女性のボディイメージと健康改善のための研究開発を進めており、

『ボディイメージ教育として、自分自身や他者の多様な美しさを尊重すること』
『社会的ムーブメントとしても、多様な美の理解と前向きな自己表現を楽しめる社会づくり』
『FUS健診率の向上』

この3点の推進を提言しました。

そしてFUSの現状を変えていくために、設立されたのが『マイウェルボディ協議会』

マイウェルボディ協議会では身体的にも精神的にも、そして社会的にも健康であることを目指して活動。

FUSを教育することでヘルスリテラシーの向上を目指し、そして社会全体の痩せへの当たり前を崩すこと、痩せている人だけが可愛いという社会の当たり前を崩すこと、そして最終的に医学的に適正な体型を自分の意思で選択できる世界を目指しています。

SNSの普及により他者と比較する機会や時間が圧倒的に増え、社会が生んだ痩せが良いという価値観が根付いている昨今。

健康を害すことなく、誰もが身体的にも精神的にも自分らしく満たされた状態を選択できる社会、認め合える社会になっていくことを願っています。

 

マイウェルボディ協議会HP

人生100年時代に、健康への関心が高まるなかで、過度な情報社会において
自分らしく健康な身体を保つことが困難になっていることも、注目すべき課題の一つです。

身体的にも精神的にも、そして社会的にも良好な状態が継続すること。
それがウェルビーイングなら、その基盤であるひとりひとりの身体の健康がまず、何よりも重要だと私たちは考えます。
私たちマイウェルボディ協議会が目指すのは、ひとりひとりが自分らしく、
心地よくあり続けられる健康な身体=“ウェルボディ”を自らの意志で選択できる社会。
それは個人だけではなく、社会全体で取り組まなくては成しえない挑戦なのです。

URL:https://mywellbody.jp/

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