年収UPのカギは「特殊人材」…どうすればなれる?コネクタ日比谷尚武さんに聞いてみた
複数の名刺を持ち「コネクタ」という耳慣れない肩書で、さまざまなプロジェクトに関わっている日比谷尚武さん。若くしてベンチャー企業の役員を務めた経験を持ち、イベントへの登壇実績も多数。
今回は日比谷さんに、ビジネスパーソンなら誰もが気になる「年収UPの方法論」をじっくり語っていただいた。
プロフィール
日比谷尚武
学生時代よりフリーランスとしてWeb関連の企画運営に携わる。新卒でNTTソフトに入社。2003年、株式会社KBMJに転職し、取締役として開発マネジメント・営業・企画全般を担う。 2009年よりSansanに参画し、マーケティング&広報機能の立ち上げに従事。現在は、コネクタ/名刺総研所長/Eightエヴァンジェリストとして社外への情報発信を担う。並行して、複数企業・団体のエバンジェリスト、理事なども務める。
年収UPしたいけど、マネジメントはやりたくない
→「特殊人材」を目指そう
年収UPの方法はいくつかあるが、一般的には以下のようなものが考えられる。 出世する(役職手当などでアップする) 転職する(今より高い年収を出してくれる会社を探す) 副業する(社内制度的にOKか要確認) 生活コストを下げる(相対的にアップする)
いずれにしても、そもそも自分の市場価値がどの程度なのかを知っておくことは重要だ。今の年収が妥当なのか、上げられる余地があるのか第三者に評価してもらわないと分からないものだ。
いますぐ転職するつもりがなくても、試しにキャリアカウンセラーに話を聞きに行き、自分にどんな求人が紹介されるのかを見てみたり、強み・弱みの整理をしてもらったりするのは、すぐにでもできる――こういうと至極当たり前のアドバイスのように聞こえるかもしれないが、日比谷さんも20代後半から年に1〜2回、キャリアカウンセリングを受けていたという。
日比谷さん「年収を上げるには、マーケットで自分の価値がどのくらいか、どこがお金を出してくれそうか分かっていないと選べない。そのためにも情報は必要です。自分をデューデリジェンス(調査)する+情報を得るために転職相談に行っていました」
その上で日比谷さんが勧める方法は2つ。
1つは「お金を使わず、やりたいことを実現する方法をHACKする」。
たとえば、自己研鑽として勉強したいとき、ビジネススクールに通うのはお金がかかるが、自分で勉強会を主催して講師を呼ぶ。メディアの知り合いを作って、イベントやパーティーに招待枠で行けるようにするなど、さまざまな方法がある。
もう1つの方法は、社内で「特殊人材」になることだ。
日比谷さんの定義する「特殊人材」とは、「替えが効かない」「辞められたら困る」人材を指す。
日比谷さん「自分に課せられた仕事だけやって、それができた/できないだけの評価だと、年収UPの機会は非常に制限されてしまいます。本来のミッションを達成するのは前提として、そうではない軸で自分の価値を作ることが重要です」
たとえば、「特定の業界に詳しい」「毎月メディアとの交流会を仕掛けていて顔がひろい」など、自分のミッション以外の付加価値を持つこと。それが社内で役に立っていれば、自ずと社内での交渉力は上がる。
もちろん、それが年収に直結するとは限らないが、少なくとも上がる可能性は高まるはずだ。
日比谷さんはSansan社時代、まさに特殊人材として「コネクタ」という肩書を自ら創出してきた。コネクタとは、社内外の人をつなげ、業績に貢献する専門職のこと。
自分が与えられたミッションに対して「本当はこういう仕事をしたいわけじゃない」「もっと会社をこうしたい」「こういうことが好きで勉強したいし、それを仕事にしたい」と思っているなら、なるべく所属企業の事業に紐づけつつ、業務外の活動として始めるのが良さそう。
さらにその活動を「見える化」しておくことがポイントだ。興味のあることを発信していくうちに、向こうから話が舞い込んでくることも十分あり得る。自分の活動や興味のあることを社内に向けて発信するでもいいし、ブログを書く、SNSの活用でもいい。
新しいことを始めるときは必ず「人に聞く」
日比谷さんの行動の種は、常に好奇心やWant。それを実行・仕組み化していく際、重視していることがあると言う。それは基本的に「人に聞く」こと。
もちろん本を読んで勉強したり、自分なりに試したりもするが、「手っ取り早いのは実践している人や先達、専門家に聞くこと」と、一次情報に当たる重要性を語る。
誰に聞きに行けばいいのかは、本やネットで調べていくうちに浮かんでくるが、いきなりアポイントを取るのは躊躇してしまう人も多いはず。どうすれば良いのか聞いてみたところ、「小さな成功体験を積み重ねること」と教えてくれた。
日比谷さん「躊躇するのは、例えば無視されるんじゃないかとか、時間を割いていただいて申し訳ないとか、自分のやりたいことを否定されたらどうしよう……など、いろいろな理由があると思います。でもそれは思い込みであることがほとんど。
知らない人に聞きに行って教わったことで『なるほど、目が開いた!』という成功体験を積んでいくことで、自分の中で実現に向けて行動に移すハードルが、どんどん下がっていくはず」
ファーストアクションの例として、相談したい相手が登壇する講演会や勉強会に出向き、直接本人に挨拶してみる、質疑応答で最初に手を挙げ印象に残る……など、小さなことからでいいので始める。もちろん、相手の著書やメディアでのコメントをチェックし、鋭い質問をする( = 分かりきったことは聞かない)のが前提。それを繰り返すうちに、アポイントを取ることの抵抗感は薄れていくはずだという。
ここでも自分の活動を「見える化」しておくことが効いてくる。会いたい人の情報を発信しておくことで誰かに紹介してもらいやすいし、直接アポイントを取る際も「こういう発信をしている人なんだ」と相手に安心してもらえる、予め存在を知っていてもらえる可能性も高まる。
日比谷さんが「人に聞く」ことを重視しているのは、効率化の狙いもあるが、何より本やWebに載っていない情報を得ること。
日比谷さん「単なるHow toだけでなく、なぜそれをやっているのか? どういうところに苦労したのか? という文脈やマインドセット込みでのHow toを聞ければこそ、真に生きたナレッジになります。メソッドそのものではなく、なぜそこに至ったのか、本に書かれていないけど気をつけていることはあるかなどは、直接本人に聞かなければ分かりませんから」
人から聞いたことをベースに、自分流にアレンジ、適応させていくのが何事も手っ取り早い。それを常に意識していると日比谷さんは教えてくれた。
「お呼びがかかる」ためには、見える化がマスト
今や12種類の名刺を持ち、さまざまなプロジェクトに携わる日比谷さん。これまで社員として3社経験してきたが、いずれも大学時代の友人からの紹介など、「誘われて」転職している。
2社目のKBMJは最初から役員として声がかかった。当時まだ20代半ば、なぜ誘われたのか。その理由は、大学時代から個人事業主として知人のベンチャーを手伝ったり、WEB制作や動画配信の仕事に携わったりしていたこともあり、知り合いには「プロジェクトマネジメントができる人」「ネット界隈に詳しい人」と認知されていたことが大きい。ここでも自身の実績の「見える化」が活きてくる。
何か結果を出し、それを見える化しておけば「誘われる」可能性は高まる。では最初はどんなところから着手していけば良いのだろうか。
日比谷さん「僕の場合は全部好奇心やWantからスタートしています。すると日比谷はアレが好きで、面白いから……と声がかかる。それを繰り返してきて、雪だるま式に呼ばれることが増えていった形かな」
自分でアクションして終わるだけでなく、それを自分の言葉で発信する、それを仕組み化して継続することで、結果的に「広報の専門家」「エヴァンジェリストの人」として認知されるようになるという。
20代の頃はSNSがなかったため、周囲のクチコミだけだったが、SNSが広がった後は「○○が得意な人」と加速度的に広まりやすくなり、日比谷さん自身も実務→仕組み化・発信→専門家と認識されるサイクルを、自覚的に回すようにしてきた。
さらに日比谷さんは、このサイクルを複数並行している。「マーケティングの人だよね」と認知が広がった時点では、既に新しいチャレンジを1〜2つスタートしているのだ。最近は「広報の専門家」として呼ばれることが多いが、実は広報の実務は最近ほとんどやっていない。
日比谷さん「今まさに進行中のチャレンジは発信していません。実務・勉強している最中ですから。常にタイムラグがあって、表に出てくる感じですね。食べるための活動と、種をまいている最中のことは意識して分けています」
日比谷式年収UPのカギは、替えの効かない「特殊人材」になること。自ら手を上げるのではなく、相手から「呼んで」もらうために、やりたいこと・実績を発信することから始めてみよう。
文・筒井智子 写真・壽福憲太 編集・鈴木健介関連記事リンク(外部サイト)
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