さっそくジロ・デ・イタリア2012を振り返る! 【デンマーク編】
ワウテル・ウェイラント選手の死から一年となる今大会。
彼のつけていたゼッケン108番は永久欠番となり100番台ゼッケンをつけるグリーンエッジのゼッケンは101番からではなく100番から始まり、108番を飛ばして109番まで
となっています。
あの悲惨な事故を誰もが頭に過る中、皆が彼に黙とうを捧げ、ジロ・デ・イタリア2012が開幕致しました。
【第1ステージ】
開幕一日目となる第1ステージ。
昨年の覇者、現役最強選手とうたわれているアルベルト・コンタドールがドーピング認定されタイトルをはく奪。
2位のミケーレ・スカルポーニが急きょ昨年覇者となり、先日マリア・ローザが贈呈され初日は昨年の王者としてそれに袖を通してのスタートです。
オープニングなので選手の顔見世として行われたのが個人タイムトライアル。
個々の実力によりタイムが決定する為、このステージでもっとも速かった選手がマリア・ローザを獲得し、最初に袖を通す栄誉を与えられる。
天候は晴れで一見温かそうに見える現地ですが、場所は北欧 デンマーク。
気温は8度の中ヘアニングの町中、8.7キロのコースで競い合います。
日本人として気になるのは昨年の6月日本のタイトトライアルチャンピオンになった別府選手だ。
現行のチャンピオンなので、彼はナショナルジャージ、日本チャンピオンの証となるジャージの着用が義務付けられている。
日本人唯一の出場選手である別府選手の雄姿に期待! のはずが、
所属するチームグリーンエッジはつい先日メインスポンサーにオリカ社が加わりチーム名がオリカ・グリーンエッジへと変更。
それに伴いチームジャージも急きょ作り直されることとなったのだが、別府選手のナショナルジャージバージョンの製作が間に合わず
残念ながらその姿を見ることはかないませんでした。
(でもカナダのスヴェイン・タフト選手のナショナルジャージは間に合う)
というか映像にすら別府選手が出てませんでした。 ぐぬぬ。
気になる結果は198名中145位。
別府選手はアシスト役であり、タイムトライアルでは勝ち目は全力でも無いでしょう。
翌日に体力を温存する為全力ではなかった可能性もありますが、世界の壁はやはり厚い。
インタビューでは「今年のジロは、はじめチョロチョロ、中パッパ、最後にドーン、です」 というように、終盤のステージでどうやら勝利を狙っている様子です。
期待しましょう。
今回開催された場所は上記した通りデンマーク。
場所はヘアニングですが、この町は人口4万人ばかりの小さな町ですが、資産家が多く住んでいる所なのだそうです。
毎年開幕は国外で3ステージぐらいはお馴染みになっているとはいえ、住宅街なのでホテルもなくスタッフはもちろんファンも選手も多くの苦労をしているとか。
誘致に莫大なお金が動いたとの噂もあるのです。
なんでこんなことを今ここで書くのかというと、お祭り騒ぎなのではしゃいじゃったんでしょうね。
マリア・ローザにちなんだピンク色の水が出るように噴水に塗料を流し込んだ結果、
噴水が詰まってコースに水があふれ出し選手が次々に転倒しました。
ついでに言うと大会2日前にデンマークの航空会社キンバースターリング社が前触れなくいきなり倒産。
飛行機が飛ばないすったもんだ劇もあった模様です。 凄いぞ。 デンマーククオリティ。
さらに言っておくとグランツール初出場となるチームネットアップのチームバスが大会前日にカーナビがパクられるなど
大会開始前からもひと波乱あった模様です。 凄い。 凄いぞ。 デンマーク!
そんなアクシデントもありながら、このステージを制したのはプロ2年目を迎えるテイラー・フィニー。
タイラー・ファラーを発音の違いでテイラー・フィニーと言ってると思われる方がたまにいるそうですが、別人ですよ。
BMCレーシングのテイラー・フィニーが最初のマリア・ローザを獲得しました。
両親は共にオリンピックのメダリスト。 若干21歳のサラブレットは今後の人生を変えかねない大金星を打ち上げました。
またポイント賞であるマリア・ロッソ・パッショーネと25歳以下の為新人賞ジャージ マリア・ビアンカもトリプル受賞。
最初のステージを制した者にだけ許される、まさに独占状態となりました。
【第2ステージ】
いよいよ本番となるチームロードレースがスタート。
コースはヘアニングをスタートし一路西へ、強風吹き荒れる海沿いを北上し、東に向かって山岳ポイント超えれば南下し、ヘアニングに戻ってくる全長206キロ 一周して帰ってくるコースです。
48キロ地点にスプリントポイントが設けられ、また最初の山岳ポイントも117キロ地点に設けられていますが、標高わずか47mという山じゃねぇよ これ小高い坂だよ と言いたくなるレベルです。
これぐらいだと山に強い選手ではなく、スプリント力のある選手が有利な山岳ポイントです。
ちなみに今大会から山岳賞ジャージの緑色だったマリア・ヴェルデはは青色となり、マリア・アッズーラと名称も変わりました。
新しくなった山岳ジャージの最初に袖を通すことになるのは誰なのか。 このコースで一番の見どころな気がします。
しかしコースはあくまで平坦のスプリント勝負。 スプリンターたちの熱き戦いが始まります。
レース開始早々ミゲール・ルビアノ、アルフレード・バッローニ、オリヴィエ・カイセンの3人が猛烈なアタックを決め、
後続集団に最大13分半もの大きなリードを作り出します。
狙いはもちろん、ステージ優勝!ではなく、おそらく栄えある新山岳ジャージに最初に袖を通すこと。
ステージ優勝できれば文句はないのでしょうが、そこは10キロ1分の法則。
10キロ走ると集団に1分差を詰められるというやつです。 というか人数が多い序盤で平坦続きのステージで集団が本気出したら
10キロ1分なんてそんな優しいレベルではありません。
3人は100キロ以上を逃げ切り最初の山岳ポイントへと突入。
長さ1キロ 平均勾配4.5%の坂を一気に登り切った3人のうち、獲得したのはアルフレッド・バッローニ選手。
ゴールまで100キロを切り、集団ものんびりはもうしていられない。
ペースを上げ猛烈ないきおいで追い上げる集団。 その流れにより穏やかに流れていたものは激流へと変わり、
選手の落車が目につくようになります。
ゴールまで残り20キロで逃げる3人を吸収し、ゴールに向かいさらに加速しレースはクライマックスへ。
しかし残すところ8キロ地点!
そこで投げ出されたのがピンク色のジャージに袖を通した選手。 前日を制したテイラー・フィニーだ。
前方の選手がした急ブレーキに反応できずバランスを崩し転倒、さらにチェーンが脱落し復帰に手間取りかなりの時間をロスしてしまいます。
痛みをこらえながら必死に追いかけます。
こういう場面で助けてくれるのがチームメイト。
レース後テイラー・フィニーは「(アレッサンドロ)バッランと(マルセル)ウィスがオートバイのように力強く牽引してくれたおかげで集団に戻ることができた。」
と感謝のコメントを出しています。
だが悲劇はまだここでは終わらず、ゴール500m手前の90度に曲がる大会主催者ちょっとこのコース配置おかしいんじゃねぇのと思うカーブで案の定大集団落車が発生!
100名以上の選手がここで足止めされ、ゴールスプリントに加わったのはわずか!
しかしゴール前とあって一流のスプリンターたちの面々が顔をそろえている。
マシュー・ゴス
タイラー・ファラー
トル・フースホフト
マーク・カヴェンディッシュ
マーク・レンショー
名前を聞けば自転車乗りならだれもがわかる面々で、正直だれが勝ってもおかしくない。
しかも全員チームバラバラという激熱なスプリントバトル!
最後まで競り合ったのはマシュー・ゴスvsマーク・カヴェンディッシュ。
昨年までHTCコロンビアチームで同じ釜の飯を食った二人の戦い!
それを制覇したのはやはりこの男。 現役最強スプリンターとも呼び声が高いマーク・カヴェンディッシュ!
世界チャンピオンジャージは伊達じゃない所を見事に見せつけてくれました。
ちなみに落車の影響でスプリントに加われないテイラー・フィニーはマリア・ローザを失う可能性もありましたが、
大集団落車のおかげでゴール前3キロでトラブルがあったらみんなと同タイムルールのおかげで失わずに済みました。
このトラブルで先頭集団と同タイム扱いでゴールし、守りきれました。
先頭集団と同タイムでゴール出来たのは本来ならわずか7人でした。
【第3ステージ】
一年前のこのステージで彼、ワウテル・ウェイラントは旅立ちました。
スタート前には黙祷が捧げられ、彼の好きだった曲Sex on fireが流されます。
http://www.youtube.com/watch?v=zbEqiKTzyAA
翌ステージ、ウェイラントのチームメイトと共にチームは違えどウェイラントの一番の親友、タイラー・ファラーが並んでゴールしたことはよく覚えています。
「涙が止まらないんだ」 と言いこのゴールで彼はこの年ジロから去りました。
なのでこのステージはタイラー・ファラーに取ってもらいたい。 と感情的に見ずにはいられません。
平坦ステージということもありレース展開はかなりのハイペースで進行。
山岳ポイントもあるものの、解説に「とってつけたような山岳ポイント」と酷評される始末。
6人の逃げが成功し集団に差を開くも、誰から見ても逃げ切れるアタックではなくスポンサーへのアピールアタック。 もしくは
「いぇーーーい!! かーちゃん!見ってるー!!!」 の通称「かーちゃんアタック」です。
タイム差も30秒まで迫ったところで先頭集団が諦めモードに入ったとき一人の選手が飛び出します。
デンマーク出身の選手、サクソバンクのマッズ・クリステンセンが「本当のかーちゃんアタックを見せてやる!」と言わんばかりの猛アタック。
左足には先日の集団落車で負った傷の手当てが痛々しいほどにあるものの、それを感じないと言わんばかりにペースを上げて逃げます。
地元ということもあり勝利を上げることはできずとも盛り上げたいという思いが伝わるアタックでした。
そんな印象深いアタックも5キロもせずに吸収され、いよいよラスト20キロを切りレースは最終局面へ。
集団でのゴールスプリントになるため先端では早くも各チーム最高の発射位置をスプリンターに捧げるためポジション争いが始まります。
息を飲む静かな攻防はそのままゴール前スプリントに引き継がれます。
いい位置に着たのは我らが別府選手が所属するオリカ・グリーンエッジ。
別府選手も加わったアシスト4人で上手くエースのマシュー・ゴスを先頭に連れてくることに成功。
しかもその時点でアシスト2名の万全体制。
これは決まったか。 と思ったとき後続から飛び出してきたのは先日の勝者マーク・カヴェンディッシュ!
10番目あたりに上手く付いて他チームの選手を風よけにしたお得意の無賃乗車スタイル!
この差で飛び出した彼の爆発力あるスプリントならマシュー・ゴスも刺されかねない。 またもや勝者はカヴェンディッシュか、
と思ったとき凄まじい斜行でカヴェンディッシュの前に飛び出し後輪でカヴェンディッシュの前輪をすくい上げる選手が。
落車だ。
時速60キロを超えるゴール前のこの場面で地面に放り出されなおかつ後続の選手に轢かれ大集団落車を巻き起こしてしまいます。
その中には先日も転倒したマリア・ローザ、テイラー・フィニーもいた。 なんともついていない。
一瞬で起きたアクシデント。 しかし次の瞬間前方では歓喜の瞬間を迎えます。
このステージはマシュー・ゴスが制しました。 万年2位とも言われる彼に取ってグランツールでのこの勝利は何事にも代え難い。
チームメイトと抱き合い喜びを分かち合うゴス。
破れてボロボロのジャージを身にまとい壊れたバイクを担いでゴールを目指すカヴェンディッシュ。
もしあの斜行が無ければ結果は逆だったかもしれない。 明暗は一瞬で別れました。
斜行した選手はイタリアのロベルト・フェラーリ選手。 彼はイギリスに行ったら袋叩きに遭いかねない。
降格処分は免れないほどの危険運転なのは誰の目から見ても明らかでした。
気になるマリア・ローザを身に纏うテイラー・フィニーですが、ダメージが大きかったのかマリア・ローザ継続の表彰式には出れず、
何故か代わりに扉を苦労しながら開けて出てきたのはマリア・ローザを身にまとった少年でした。
テイラー・フィニーの子供ではなく、どうやらたまたまマリア・ローザ姿で観戦してたら丁度いいと言う具合に連れてこられ代理人に仕立て上げられたようです。
小さな彼にマリア・ローザが贈呈され満面の笑み。 一生物の思い出になったでしょうね。
デンマークでの3ステージも終わり、移動の休憩日を一日挟んでいよいよ舞台はイタリアへ。
本番はこれから! 一体どんなレースが待ち受けてるのか楽しみですね。
5月9日に行われる第4ステージはチームタイムトライアルです!
(これは第3ステージ終了直後の物なので、後々発表される内容は後日追記訂正致します)
(指摘事項等は教えていただけると幸いです)
ツイッターアカウント:miagi1552
※この記事はGAGAZINEさんよりご寄稿いただいたものです
ウェブサイト: http://gaagle.jp/gagazine/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。