日本におけるドッジボールの起源が微妙すぎた(山下泰平のブロマガ)
今回は山下泰平さんのブログ『山下泰平のブロマガ』からご寄稿いただきました。
日本におけるドッジボールの起源が微妙すぎた(山下泰平のブロマガ)
ドッジボールの歴史は曖昧です
ドッジボールの歴史というのはよくわかってないらしく、海外のページを見るとケニアの部族の風習をみた宣教師が考案しただとか、一九〇〇~四〇年にかけて、現在のルールが確立されただとか、いろいろなことが書かれています。
要するにその起源は、かなり曖昧な感じです。
日本ではこのページ*1には、明治の四二(一九〇九)年、可児徳氏と坪井玄道氏によって海外の競技「円形デッドボール」が紹介されたとあります。ところがこれはちょっと微妙でして、実は明治二八(一八九五)年の日本に、現在のドッジボールに近い競技を考案してる人がいます。
*1:「ドッジボールの歴史」『JDBA』
https://www.dodgeball.or.jp/ドッジボールの歴史/
明治二八年のドッジボール
考案したのは嚶々亭主人という人、普段は小説なんかを書いてたみたいです。
この人が考案したスポーツのルールは、下記の通りです。
・二チームが二列に並び向かい合う
・ボールを相手チームに向かって投げつける
・相手チームはボールを受け取り投げ返す
・ボールを受け取ることができなかった場合はアウト
・アウトになった人間は、後ろでボールを受け取るサポート役になる
・相手チームのメンバーを全員アウトにすると勝ち
コートの概念が曖昧だったりするものの、ほぼドッジボールといっても良いでしょう。なかなか良くできたゲームですし、嚶々亭主人さんは偉いなーって思っちゃいそうですね。
名称が最悪でした
ところがこのゲーム、その名称が少し微妙でしてその名も「日清戦争」です。
なぜ日清戦争なのかと説明すると、この当時は日清戦争がブームになっていたからです。
このスポーツは少年教育遊戯*2という書籍に掲載されているんですけど、「日清戦争」ゲームの安全性を高めるため、ボールではなく鳥の羽を使う遊びも紹介されている。「日清戦争」ゲームを紹介するためには、自然に鳥の羽バージョンのゲームも紹介する必要が出てくるのだが、残念なことにゲームの名称の最悪度がさらに向上している。
*2:「少年教育遊戯」『国立国会図書館デジタルコレクション』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/860167
明治ならokかもしれないが現代では「チャンチャンの生虜(いけどり)」は完璧アウト、なんでこんな最悪の名称をつけてしまうのかといえば、もちろん嚶々亭とかいう奴がイカれた人間だからです。
イカれた少年教育遊技たち
少年教育遊技から貼り付けてるんですけど、これは当時西洋で大流行していたらしいスポーツらしいです。
ゲームのルールは単純明快、天井から菓子をつるし、後ろに曲げた両足を両手で掴み、膝で歩きながら菓子を食うだけ、見てる分には笑えるかもしれないが絶対に参加したくないゲームだし、どう考えても西洋で流行なんかしていないと思う。というか遊びというか拷問に近いし、勝ち負けも曖昧だし、すべては嚶々亭の妄想だろう。
この書籍には、他にも変な遊びが大量に掲載されていて、全編通してかなり異常な雰囲気がある。
これは乾燥した里芋を火の中に入れて炭にしたものか、檜の炭ならば、火がついた状態で口に入れても全然熱くないっていう秘術なんだけど、絶対に熱い。嚶々亭は口の中に入れても大丈夫なのかもしれないけど、普通の人は火傷する。
以上のことからもわかるように、嚶々亭は頭がどうかしている可能性が高い。
嚶々亭の事は忘れよう
俺の考えでは、日本で最初にドッジボールに近いスポーツを考案したのは、嚶々亭だと思う。しかしその名称が「日清戦争」と「チャンチャンの生虜」では、他国の人々に向かって紹介したりは出来ない。
嚶々亭がきちんと名称をつけていれば良かったのになって思うんですけど、火を食うような人間なのだから、話の通じる相手ではないだろう。
歴史を知り、過去から学ぶことは大切である。しかしながら、後ろばかり見ていては、前に向って進むことは出来ない。
そんなわけですから火を食う嚶々亭は黙殺し、明治の四二(一九〇九)年、可児徳氏と坪井玄道氏によって紹介された「円形デッドボール」が日本のドッジボールの始まりだということにしておきましょう。
執筆: この記事は山下泰平さんのブログ『山下泰平のブロマガ』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2018年07月30日時点のものです。
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