社員が「自然と」ユーザー目線に立つ仕掛けは、ランチタイムにあった|クックパッド株式会社

社員が「自然と」ユーザー目線に立つ仕掛けは、ランチタイムにあった|クックパッド株式会社

ビジネスパーソンの昼休み。それは、空腹を満たすだけでなく、忙しい仕事の合間にほっと一息つけるリフレッシュタイムでもあります。お弁当派、外食派、社員食堂利用派など、それぞれに午後の英気を養うための過ごし方があることでしょう。

料理レシピ投稿・検索サービスの運営で有名なクックパッド株式会社では、社員食堂ならぬ「社員用キッチン」で社員が自分たちで料理をつくっているとのこと。食堂ではなくキッチンである理由、社員用キッチンの運用から効果まで、広報部の徳成祐衣さんと人事部 労務・Workplaceグループの梶尾俊さんにお話を聞いてきました。

プロフィール

徳成 祐衣(とくなり ゆい)さん (写真右)

クックパッド株式会社 広報部。2015 年新卒入社。クックパッドニュース編集部での企画業務などを経て、2017年10月から現所属。一番好きなレシピは「☆絶品餃子☆ by ☆栄養士のれしぴ」

梶尾 俊(かじお しゅん)さん (写真左)

クックパッド株式会社 人事部 労務・Workplaceグループ。2012年中途採用入社。前職での経験を生かしてファシリティに特化した業務に従事。現オフィスの社員用キッチンの設計にも携わる。一番好きなレシピは「お豆腐とキャベツのお好み焼き風 by なお★nao」

「社員用キッチン」は、クックパッドのアイデンティティ

ーー「社員用キッチン」の導入はいつからですか?

梶尾さん「クックパッドがオフィスに社員用キッチンをつくったのは約10年前です。オフィスの移転とともに社員用キッチンのスタイルも少しずつ変化しましたが、コンセプトは、“『毎日の料理を楽しみにする』を体現する場”です。レシピサービスを行っている会社ですから、自社サービスにユーザー目線で触れられる場という狙いもあります。」

ーーオフィスの受付から社員用キッチンの様子が見渡せますよね。受付に着いてまず目に入ったのは、キッチンに立つ社員の方の明るい表情でした。

梶尾さん「はい、社員が楽しく料理をしている姿を来訪者の方々にもお見せしたいと思いまして。あえて受付からすぐの場所に設置して、間仕切りもガラス壁にしました。

オフィスにキッチンがあるというのは、当社のアイデンティティのひとつでもあります」

ーーキッチンに並んでいる食材に値札がついているのはなぜでしょうか?

梶尾さん「食材はまかないとして会社で用意しており、自由に使えるのですが、一人あたりの予算を300円目途と決めています。もちろん社員が食材費を会社に支払うことはありませんが、市場での相場価値を意識することが、ユーザー目線に立つうえで大事だと考えています。」

ーーなるほど。ところで、食品ロス対策は何かとられていますか?

梶尾さん「基本的によく料理をするため、ロスはあまり発生しません。その中でも日持ちがしない青果物については閉店前のスーパーと同じで、休日前は値引き価格にすることもあります。そうすることで、同じ予算内であってもたくさんの食材を使ってもらうようにしています。

また、つくりすぎて少し残った料理は、いつ、誰がつくったかを所定の“シェアカード”に明記して、“おすそわけ料理”としてキッチンに置いておくことで誰かに食べてもらえるという文化もあります」

一緒に料理をして共に食べるランチタイムは、部やチームの垣根を越えたコミュニケーションを取りやすくする

ーーつくるメニューや、誰と食べるかなどはどうやって決めているのですか?

梶尾さん「誰と何をつくって食べるかは、それぞれの自由です。大人数で料理をすることで予算も増え、料理の幅の広がり、コミュニケーションも活性化されるので、部署なども関係なくフレキシブルに集まって利用してもらっています。

一人で調理から片づけまで全部担当すると休み時間が足りなくなることもあるので、グループでつくる時は、早めに昼休みを開始する調理班、遅れて昼休みを開始する片づけ班の二手に分かれて時間差で昼休みをとるなど、それぞれに考えて時間をやりくりしているようです」

ーーどのくらいの頻度で利用していますか?

徳成さん「私は週に2、3回程度は利用しています。ふらっと足を運んで、コーヒーを飲んだり、立ち話をしたり。ちょっとした気分転換に利用することもあります。

日常の業務ではあまり関わりのない部署のメンバーでも、キッチンでは『何をつくっているの?』などとラフにやりとりしたり、小さな気づきを共有したり、悩みを相談することもあるようです。

当社は多くの社員が中途採用入社ですが、社員用キッチンがあることで横のつながりも生まれ、業務も円滑に進むようになっています」

ーー社員用キッチンがコミュニケーションのハブになっているのですね。

梶尾さん「新入社員には、入社オリエンテーションとは別に“キッチンオリエンテーション”を実施しています。社員用キッチンにこめた思いとキッチン使用のマナーを伝えた後、実際に料理・食事・片づけを行うのですが、料理をするとそれまで緊張していた新入社員の表情が一気にほぐれていきます。会議室での自己紹介とは違って、一緒に料理して一緒に食べるとその人がどういう人かもわかりやすいですよね。こういう一歩踏み込んだコミュニケーションができるのも、キッチンがあることの強みかなと思います」

自社サービスの検証の場としての役割も担う

ーーやはり料理好きな方が多いのでしょうか?

徳成さん「入社前は料理をあまりしなかったという社員でも、社員用キッチンを日常的に利用することで、少しずつ料理が好きになったという話も耳にします。エンジニア職の社員は料理にこだわりをもっていたりして、いろんな検証を行ったり、構造を分析したりする社員までいるんですよ」

ーーまさに、ミッションである“『毎日の料理を楽しみにする』を体現する場”として機能しているんですね。

徳成さん「社員コミュニケーションの場として、また会社のミッションを体現する場としてつくられた社員用キッチンですが、昨年くらいから新しい活用法が求められてきました」

ーーどのような変化があったのでしょうか?

梶尾さん「福利厚生的な役割のほかに、自社のサービスに貢献できるような場としてこのキッチンを活用できないかという声が出てきたんです。例えば、社内の部署とコラボしたイベントを実施したり、新規事業の検証や発表の場に使ったり。楽しく料理をしながら、アプリのレシピ検索や投稿、新機能を実際に試してみるなどです。自分たちが使いたくなるサービスは、ユーザーにとってもいいサービスだろうと思いますから。

私も検証の一環でレシピを投稿したのですが、“つくれぽ”(『みんなのつくりましたフォトレポート』の略でそのレシピをつくったという報告のこと)をもらえるという感動を味わいました。ユーザーはこういう気持ちで利用しているのかとリアルに感じられましたし、自社サービスを好きになれた機会でもありました(笑)。思いついた時にすぐ検証や実験ができますから、社員用キッチンがあるのは素晴らしい環境だと思っています」

社員用キッチンから、『毎日の料理を楽しみにする』を世界中に

ーー最後に、社員用キッチンの今後についてビジョンをお聞かせください。

梶尾さん「先に述べたように社員用キッチンは、社員のコミュニケーションを深める場、自社サービスを検証してユーザーに寄り添える場として機能していますが、これからはそれに加えて、新規事業など新たなチャレンジの場という役割も担えればと考えています」

徳成さん「このキッチンを中心としたオフィスを舞台に、まずは社員が料理を楽しむことで『毎日の料理を楽しみにする』を体現し、世界中に広げていきたいと思っています」

クックパッド株式会社 取材・文:タナカ トウコ 撮影:刑部 友康

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