重要な「2割の仕事」を見つければ、仕事は“劇的に”片づく
『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)の著者である石川和男さん。石川さんは、建設会社総務部長・大学講師・専門学校講師・セミナー講師・税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパービジネスパーソンです。そんな石川さんに「残業しないチームと残業だらけチームの特徴」についてお聞きしました。
突然ですが、あなたは「パレートの法則」をご存知ですか?
イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した法則で、「経済活動において全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出している」という説です。例えば、「商品の売上の8割は、全商品のうちの2割の銘柄が生み出している」「企業の売上の8割は、全従業員のうちの2割の従業員が生み出している」「所得税の8割は、課税対象者の2割が担っている」など「20対80の法則」「ニハチの法則」と呼ばれることもあります。
まずは全ての仕事を書き出してみる
20年ほど前です。元上司から建設会社を立ち上げるので、開業準備を手伝ってくれとの連絡が入りました。当時は税理士試験の勉強をしていたため、会社が軌道に乗る1年を目途に手伝うことしました。そのとき「パレートの法則」を考えさせられることがあったのです。
元上司である社長は、受注計画の作成、得意先との打ち合わせ、現場担当者の採用などを行い、私は総務経理関係の準備を進めていました。毎晩11時過ぎまで残業。朝8時に出社し午後11時に退社。深夜2時まで働くという日もありました。会社が作り上げられていく喜びで、寝食を忘れて没頭しました。しかし期限が決まっている仕事があまりに多く、私1人では仕事が滞おり、このままでは迷惑をかけると思い社長に相談したのです。社長は現場一筋です。総務経理の仕事はあまり詳しくないため、何がどう忙しいか仕事内容を紙に書き出すよう言われました。
設立登記、建設業許可の申請、社会保険、雇用保険の加入手続き、銀行開設、銀行への資金繰り、以前の取引先への案内、書式の統一、工事現場地図作成、現預金の記帳、公共料金の支払い……次々と書き出しました。
書き出した仕事のうち優先順位の高い仕事は?
社長は書き出した紙を見ながら「これだけの量の仕事を1人で行うのは無理だな。しかし設立手続き関係が終われば、多少は落ち着くかな?」と言ってきたのです。
たしかに設立登記、建設業許可の申請から銀行開設などは、一刻を争う緊急かつ重要な仕事ですが、会社を設立したら行わなくて済む仕事です。
紙に書いて全て見える化したことで気がついたことですが、優先順位の高い仕事が2割、優先順位の低い仕事が8割でした。期限の迫っている仕事が2割、後からでもいい仕事が8割。私でなければできない仕事が2割、総務経理の経験が多少ある者ならできる仕事が8割でした。
そこで社長と話し合い、6カ月だけ派遣社員を雇い入れました。書式の統一や現預金の記帳など簡単な8割の仕事は派遣社員に任せ、優先順位が高い2割の仕事を私が行うことにしたのです。各種手続きなど自分にしかできない重要かつ緊急な2割の仕事に集中することで、仕事も滞りなく行えるようになりました。依頼される仕事を次から次へとこなしていたときには気づきませんでしたが、全体の仕事の8割は任せてもいい仕事だったのです。
仕事を4つに分けることで、優先順位が明確になる
あれから20年。今の会社でも仕事の全体像が見えずに忙しいという部下がいます。そのようなときは、今抱えている仕事を全て書き出させます。
書き出すときには、 1.重要かつ緊急な仕事
2.重要だけど緊急ではない仕事
3.緊急だけど重要ではない仕事
4.重要でも緊急でもない仕事
の4つに分けてもらいます。そうすることで、大抵の場合、いかに重要じゃなく緊急でもない仕事に時間をかけていたかという事実を知ることができるのです。
そして楽な仕事や雑用を先に行い、優先順位の高い仕事を後回しにしていたために残業をしていたということに、本人も気がつく場合が多いのです。
紙に書き出したら、上位2割の仕事だけをまず行うように指示します。優先順位の高い仕事をやり終えることでストレスも減ります。残業をしなくても定時内で充分に成果が上がります。
残業だらけのチームは、全体を把握せず仕事を行うため、緊急性もなく重要でもない8割の仕事を先に行う場合があります。全体の8割にあたる仕事を定時に終わらせているのに、優先順位の高い仕事が残っているため、残業して終わらせることになるのです。
残業しないチームは、優先順位の高い2割の仕事に集中します。優先順位の高い仕事さえ終わらせれば、残りの8割の仕事は、本来やらなくていい仕事、後回しでもいい仕事、隙間の時間でできる仕事、他の人の任せてもいい仕事などが多く、残業せずに済ませることができるのです。
プロフィール
石川和男(いしかわ・かずお)
建設会社総務部長、大学、専門学校講師、セミナー講師、税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパーサラリーマン。大学卒業後、建設会社に入社。管理職就任時には、部下に仕事を任せられない、優先順位がつけられない、スケジュール管理ができない、ダメ上司。一念発起し、ビジネス書を年100冊読み、月1回セミナーを受講。良いコンテンツを取り入れ実践することで、リーダー論を確立し、同時に残業ゼロも実現。建設会社ではプレイングマネージャー、専門学校では年下の上司の下で働き、税理士業務では多くの経営者と仕事をし、セミナーでは「時間管理」や「リーダーシップ力」の講師をすることで、仕事が速いリーダーの研究を日々続けている。最新刊の『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)ほか、『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(明日香出版社)など、勉強法、時間術などのビジネス書を6冊出版している。
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