「かぼちゃの馬車」が経営破綻!国が改定したサブリース契約の標準契約書の中身は?
世間を騒がせた、シェアハウス「かぼちゃの馬車」トラブル。ついに運営会社の民事再生法申請に至った。シェアハウス運営事業のカギを握るのは「サブリース」の賃貸借契約にある。これまでもサブリースには問題点が指摘されてきたが、国土交通省が「賃貸借標準契約書」を改定した。改定ポイントは何か、見ていこう。【今週の住活トピック】
「賃貸住宅標準契約書」等を改定/国土交通省
不動産のサブリースとは転貸借のこと。手軽な半面リスクもある
女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズの経営破綻。この事業の仕組みには、「サブリース」という賃貸借契約が利用されている。
サブリースとは、不動産会社が入居者に転貸することを目的に、物件オーナーから建物を借り上げる賃貸借契約(一般的に「サブリース原契約」と呼ばれる)のこと。つまり、物件オーナーが、実質的には不動産会社に入居者の募集(仲介)と管理を一括して任せ、賃料を得る仕組みとなっている。
不動産経営では「空室リスク」が大きな課題となるが、サブリースでは空室期間も不動産会社から安定した賃料を得ることができる。つまり、専門的な知識がなくても、手間をかけずに不動産経営ができるというメリットがある。
一方で、不動産会社との契約期間中に、契約賃料の減額や中途解約を求められる可能性があったり、不動産会社が倒産したりする危険性もある。もちろん契約賃料は、不動産会社が入居者の募集や管理にかかるコストや空室率を見込んで設定するので、オーナーが自ら不動産経営するよりも低くなる。
「かぼちゃの馬車」は、サブリースでなぜトラブルになった?
とはいえ、サブリースが、常に危険性が高いというわけではない。健全にサブリース事業を行っている不動産会社も、数多く存在する。
今回のトラブルの経緯を見ていこう。
2012年に創業したスマートデイズは、首都圏を中心に女性専用のシェアハウスを運営し、事業を急拡大させた。しかし、2017年10月ころからシェアハウスを所有するオーナーに賃料の大幅な減額を通告しはじめ、2018年1月ごろからはオーナーに保証した賃借料の支払いが停止するようになった。
すると、数多くのオーナーがローンを返済できなくなり、各所への相談が急増して、トラブルが大きく報じられるようになった。ついに運営会社は、4月9日に民事再生法の適用を東京地裁に申請し受理されたと発表するに至った。
トラブルの原因は、空室リスクへの対応が不十分なのに高い賃料を保証するなど、健全なサブリース事業を行っていなかったことにある。ビジネスモデルも、資金力が豊富とは言えない会社員などに高額のローンを借りさせて、シェアハウスを高い価格で取得させ、その差額を賃料の支払いに充てるといったゆがんだ構造だった。加えて、金融機関のローン審査についても問題が指摘されている。
国土交通省が「賃貸住宅標準契約書」を改定した理由は?その内容は?
国土交通省が「賃貸住宅標準契約書」を改定した理由は2つある。
1つ目の理由は、2020年4月に施行予定の「民法改正」だ。
賃貸借契約では、以下のような点が改正される。
・退去時の敷金返還や原状回復に関して明文化する
・連帯保証人を保護するために、あらかじめ保証する限度額の合意を必要とする
限度額を記載した連帯保証にはなじみがないこと、連帯保証人を依頼しづらいために保証会社による保証を希望する人が増えていることなども背景にあり、新たに「賃貸住宅標準契約書(家賃債務保証業者型)」を作成し、「賃貸住宅標準契約書(連帯保証人型)」に極度額の記載欄を設けるなどの改定が行われた。
もう1つの理由が、サブリースに関するトラブル対応だ。
これは以前から、「長期間にわたり一括借り上げて家賃保証をするので、安定した賃料が手に入る」と賃貸アパートを建てることを勧誘されて新築したものの、一定期間経過後に賃料相場の下落を理由に賃料の減額を求められ、これに応じないと中途解約されるといったトラブルが生じていたからだ。
特に、2015年からの相続税増税の影響で、節税対策として賃貸アパートの建設に拍車がかかり、トラブルは増加していた。2018年3月27日には、国土交通省が消費者庁と連携し、「サブリース契約に関するトラブル」への注意を呼び掛けたほどだ。
では、具体的に「サブリース住宅原賃貸借標準契約書」で改定された点を見ていこう。
次に示したように、「賃料の改定時期の明確化」や「サブリース業者から契約を解約できない期間の設定」が追加されている。マーカー部分が追加項目※マーキングは筆者による(出典/国土交通省「サブリース住宅原賃貸借標準契約書(平成30年3月版)」より抜粋転載)
つまり、運営会社が勝手に減額を通告したり、短期間で中途解約をしたりできない契約内容になる。ただし、※以降にあるように、周辺の賃貸市場の変化や建物の不具合などに応じて、協議のうえで賃料を改定することは可能だ。
ほかにも、転貸の条件項目への「民泊の可否に関する事項」を追加したり、「個人情報保護法等の遵守」を盛り込んだりといった、最近の変化に応じた改定も行っている。
賃貸借契約書の国土交通省のひな型が変わったからといって、不動産経営を安易に考えるのは禁物だ。不動産会社任せにすることなく、提示された賃料が妥当なものなのか、周辺の賃貸市場に需要はあるのかといった基本的なことを、自分自身でも見極める必要があるだろう。
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