「いいから早く帰れ」(ジタハラ)では残業はなくならない。残業の個別管理が必要。
「残業するな」と早く帰ることだけを一方的に強要するジタハラ
最近「残業代ゼロ法案」「働き方改革」など労働時間の短縮を推進する言葉がかなり定着してきました。その第一歩として多くの企業が取り組んでいるのが「残業抑制」です。企業ごとに「ノー残業デー」を作るなどして、「時短」を進めています。
それに伴い「ジタハラ」という言葉が登場しました。「ジタハラ」とは、「労働時間短縮ハラスメント」のことです。具体的には、企業として時短のための何の取り組みもないまま「残業するな」「さっさと帰れ」と早く帰ることだけを一方的に強要し、相手に不快感を与える行為のことです。
慢性的に残業が多い人はなぜ生まれるのか?5つの特徴
私は、かつて大型ショッピングセンターで、常時800人ほどいた従業員の労働時間を毎月管理していました。「三六協定」違反や極端な長時間労働者がいた場合には、会社として理由を聞き、今後同じことが起こらないように指導を行うためです。
小売業は、売場によって業務の繁閑がはっきりしています。花売場が一番忙しいのは花の日の前です。おもちゃ売場が一番忙しいのは、クリスマスの時期です。こういった繁忙期に残業が増えるのは仕方がないことと言えます。しかし、数多くいる従業員の中には、年間を通じて残業が多い人、売場が変わっても残業が多い人というのが何人かいました。
こういった慢性的に残業が多い人には、いくつかの共通点が見られます。
① 商品の整理や売場の掃除など、明確な終わりがない仕事をダラダラとやっている。
② アルバイトに頼める作業も、自分でやろうとする。
③ 残業代が生活費の一部になっている。
④ 仕事以外にやることがない。
⑤ 家の居心地が悪くて帰りたくない。
③④⑤は面談で実際に発せられた言葉ですが、使命感やこだわりで自らサービス残業をする人もいました。タイムカードを押した後にも仕事をしたり、自分の休みの日に売場に来て勝手に仕事をしたりするのです。
本人はやりがいを感じているようでしたが、会社としては未払い残業代を問われることになりかねません。こういった会社が命じたわけではない、自主的残業をする人は他の会社にも存在するらしく、現在のお取引会社からもよく相談があります。
社員一人一人の日々の残業の意味を確実に把握することが必要
残業と聞くと、会社の命令で仕方なくやっているという印象がありますが、決してそればかりではありません。
私自身、自分が本当にやりがいを感じている仕事をしていたときには、24時間仕事をしても足りないくらいの気持ちでした。また、会社員の給与が上がらない今の時代では、残業代に生活費を頼らなければならない人も多くいます。
残業が減って、自分の時間が増えたとしても、その時間をどう使うかが問題になってきます。残業が減ると、いいことばかりではありません。
ジタハラは、不快感だけではなく、社員の生活に悪影響を与えたりサービス残業による未払い賃金を引き起こしたりする可能性もあります。社員一人一人の一日一日の残業の意味を確実に把握することが必要です。
(小倉 越子/社会保険労務士)
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