広がる年末年始の休業の動き。「働き方」について企業の姿勢が問われる時代に
人手不足を背景に広がる「年末年始休業」の動き
飲食や小売の業界を中心に、年末年始に休業を設ける動きが広がっています。
大戸屋ホールディングスは、定食チェーン「大戸屋ごはん処」の直営店の約半数に当たる80店舗を、17年の大みそかと18年の元日に休業すると発表しました。一方、三越伊勢丹ホールディングスは、18年の正月の初売りは店舗によって2日又は3日で17年と同じとなり、検討していた正月三が日の休業の実現には至りませんでした。
こうした年末年始休業の動きが活発になっているのは、様々な業界で課題となっている『人手不足への対応が急務になっている』という背景があるからです。
働き手と消費者のニーズのせめぎ合い
最近では、大手から中小まで企業規模に関わらず多くの企業で人手が足らず、サービスの質の維持が難しくなるなど経営全体にも深刻な影響が出始めています。
こうした状況を改善するために、働きやすさや職場環境を整えることで『働き手に選ばれる会社』を自発的に目指す又は目指さざるを得ない企業が増えています。一方、環境整備の一環として実施する年末年始休業や営業時間短縮は、「24時間営業!年中無休!」を打ち出して消費者からの信頼を築いてきた企業にとっては、大きな収益の減少に繋がる可能性も否定できません。
実際に多くの企業で、人材不足解消への希望と収益減少の不安を抱きながら、つまり働き手のニーズと消費者のニーズを天秤にかけながら方針を決定せざるを得ない状況になっています。しかし、働き手のニーズも消費者のニーズも調査しなければ漠然としており、結局のところ、経営判断をする時の経営者の考えによって方針が左右されることも少なくありません。
年末年始休業は効果的な方法か?企業が考えるべきことは?
確かに、年末年始休業や営業時間短縮は多くの働き手のニーズに合っているかもしれません。しかし、「年末年始こそ働きたい」「稼ぐために少しでも長い時間働きたい」という働き手は本当に近くにいないでしょうか。
一方、年末年始休業や営業時間短縮により一部の消費者のニーズを満たさないことになるかもしれません。しかし、一部の消費者が離れたと仮定した場合の企業全体の収支は本当にマイナスになるでしょうか。
注意しなければならないのは、年末年始休業や営業時間短縮はあくまで働きやすい職場を実現するための方法のひとつでしかない、ということです。本来の目的は「人材確保と収益確保を両立すること」のはずです。そのためにまず取り組むべきなのは、社員アンケートや消費者ニーズ調査などにより自社の働き手と消費者のニーズをできるだけ正確に把握した上で、数値上のシミュレーションなども行いながら、実施した場合と実施しない場合のメリットとデメリットを比較することです。
動きが広がりつつある年末年始休業についても、世間の動きは参考にしつつも惑わされ過ぎず、自社の業種、規模、地域などを考慮して、働き手と消費者の満足を両立させる『自社に適した働き方か?』という姿勢で検証することが必要です。
(岸本 貴史/人事労務コンサルタント、社会保険労務士)
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