リアルでもネットでも余計な失言で失敗しないためには?
インターネットの普及によって、他人とのコミュニケーションは、直接の会話ばかりでなく、遠く離れた顔の見えない相手とも、瞬時に、気軽にできるようになりました。ローマ法王もアメリカ大統領も、皆と同じようにSNSを利用して、情報を発信する時代。ビジネスはもちろん、プライベートでもSNSは欠かせないツールになっています。
しかし、誰もが情報を発信でき、さまざまな情報が溢れる現代社会だからこそ、「コンプライアンス」の遵守が求められているのです。業務内容や得意先について、飲食店やエレベーター内で交わされた何気ない会話が、それを耳にした誰かによって、SNSにアップされ、世界中に広まることだってないとは言えません。プライベートでも、SNSに他人についての情報や写真をアップしたことで、人間関係が台無しになってしまったという事例は、珍しくないのです。
広報のプロであり、広い分野のリーダーたちの情報発信のコーチング役として活躍する大谷恵氏の手による本書『「選ばれる人」はなぜ口が堅いのか』は、現代社会における「情報発信」の基本マナーと「情報の伝え方」をまとめたものです。
「SNSによって『私』と『社会』の直結が起こり、目の前に突如『社会』が広がっている状態になりました。そうした中では、だれもが、社会の中での『私的なもの(プライベート)』と『公的なもの(パブリック)』の境界線を日々問い、自ら選択すべき時代になったといえます」(本書より)。
筆者は、リアルとインターネットという二つの世界の中で生きている私たちに必要とされるのは、「情報を『発信する』と同時に『発信しない』ことを意識すること、すなわち、『口の堅さ』」と定義しています。
ひとつの情報を全員に知らせるのか、一部の人に個別に教えるのかを戦略的に変えるといった「小さな『沈黙と饒舌』の使い分けがリアルとネットの世界、双方での人間関係の構築、維持に影響していくのです」と著者は言います。また、ネットでも会話でも、思ったことをすぐ口にせず、一呼吸おいて、「『情報の受け手はどう思うか?』を考えることの習慣づけは欠かせない」とアドバイスしています。「言ってしまった」の失敗を防ぐために効果的なのは、発信する前に「友達や家族の前でも言えることか」「この先20年後にも、後悔しないだろうか?」と大切な人の顔や遠い未来をイメージすることとか。
本書では、失言を回避するために、「タブーやNGワードは増え続ける」と心得て、世の中の空気に敏感になることや、「言葉を選ばずに言うと」などの「失言予防の前置きフレーズ」を効果的に使うこと、他人の意見に流されず「迷ったら、言わない」を選ぶ等々、いろいろな場面で、信頼される「口の堅い人」がとるべき対応についても、実例を挙げて説明しています。
「即回答、即返信が評価の基準となる環境で、瞬発的に反応するだけでなく、『ゆっくり考える時間』『待つ時間』を意図的に日常に組み入れる。それは、『本当に言いたいこと』『本当にやりたいこと』を見つけるためにも、必要な時間なのではないでしょうか」と述べた上で、筆者は本書をこう締めくくっています。「自分の手足、五感を使えば、必ず感動に出会います。人と直接会って話せば、何かが動き出します。そしてそこには『新たな言葉の種』があるはずです」(本書より)。
「ついうっかり」の失言をなくし、「選ばれる人」になるためには、情報発信の目的をきちんと認識して、自分の言葉で語ること。気軽に情報を発信できるネットの時代に、忘れてはいけないコミュニケーションの基本を教えてくれる一冊です。
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