古代メソポタミアで食べられていた料理をガチで作ってみた【歴メシ】

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5000年前、古代メソポタミアの人々は何を食べていたんだろう……。人間、一度は考える問題だと思います。あれ? 考えない? でも、古代に思いをはせ、文献を読みあさり、できるだけ当時に近いレシピで「歴史メシ=歴メシ」を作り続けているのが歴史料理研究家・遠藤雅司さん。そんな遠藤さんに自宅でも作れる「古代メソポタミア、古代ギリシャ、古代ローマ」のオススメ3大古代メシを聞いてみました。

古代メソポタミア(紀元前3000~紀元前400年頃)

■歴メシ1

優しい味わいのメソポタミア風だしが決め手

「古代小麦とラム肉のシチュー」

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【材料】(4人分) ラム肉 200g エンマー小麦 50g セモリナ粉 50g (※パスタ等に使用する小麦粉の一種) にんじん 80g クミン粉 大さじ4 (※カレー等に使用するスパイス) コリアンダー粉 大さじ4 (※パクチーのスパイスで柑橘系の香りが特徴) ミント 1枝 にんにく 1片 水 600ml

(メソポタミア風だし) 水 1.2リットル クレソン 50g きゅうり 100g フェンネル粉 大さじ1 (※セリ科の多年草のスパイスで甘い香りが特徴) クミン粉 大さじ1

【作り方】

1. メソポタミア風だしをつくる。鍋に水を入れて、ざく切りにしたクレソン、きゅうり、フェンネル粉、クミン粉を入れて水が半量になるまで弱火で煮込む。

2. ラム肉、にんじんを一口サイズに切る。にんにくをすりつぶす。

3. 鍋に水と1を入れてラム肉、クミン粉、コリアンダー粉、セモリナ粉、エンマー小麦、にんにく、にんじん、ミントを入れて火にかける。

4. 沸騰したらアクをとり、弱火で30分煮込む。適度にとろみが出てたら完成。

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▲世界中の歴史料理を自宅の台所で作り再現している遠藤雅司さん

――紀元前3000年って、約5000年前ですよね。食材を調理する概念があったのでしょうか? イメージ的にヤシの実をかじっている……とかしか浮かばないのですが……。

遠藤:しっかり調理していますよ。栽培した小麦を挽いて小麦粉にし、パンを焼いたり、野菜くずからダシをとったり、豆と麦でリゾットを作ったりしています。これらの料理は現存する世界最古の物語である『ギルガメシュ叙事詩』やイエール大学が保管する粘土板にも書かれています。

――ダシがあったんですか!

遠藤:そのダシを使ったのが「古代小麦とラム肉のシチュー」です。古代メソポタミアで収穫されていた野菜を煮てフェンネルやクミンで風味づけ。まぁ、コショウを入れたらもっとおいしくなるんですけどねー。

――そうなんですか? だったら入れましょうよ!

遠藤:ダメです(即答)。コショウはこの当時はまだ文献に出てきていません。「歴メシ」は当時の文献に出ているものだけしか使用しないので。文献にあるものの中で、多少アレンジしながら今の時代でも食べられるレシピが「歴メシ」なんです。

――なるほど、こだわりがビンビン伝わってきました。ちなみに、エンマー小麦という聞き慣れない食材はなんですか?

遠藤:メソポタミア・エジプト地域で栽培されていた古代小麦の一種。ここ最近では健康的な側面から古代小麦を復活させるプロジェクトも進んでいます。日本では栽培していませんが、インターネットで買えますよ。

■歴メシ2

ビール大好きメソポタミア人の定番主食

「アカル」

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【材料】(4人分) エンマー小麦 200g セモリナ粉 200g 薄力粉 200g ハチミツ 適量 塩 適量 ビール 350ml

【作り方】

1. エンマー小麦、セモリナ粉、薄力粉をボウルに入れ、ハチミツ、塩を加える。

2. 1にビールを注ぐ。

3. 木べらで粉っぽさがなくなるまでよくかき混ぜる。

4. 耐熱容器に移し、180℃のオーブンで40~50分焼く。

――ビール味のパンですか!?

遠藤:古代メソポタミアではビールが盛んに醸造され日常的に飲まれていました。パンをふやかしてビールを作ることもあれば、ビールを入れてパンを作ることもあるほどビールは食と密接的な関係があります。このレシピではイースト菌の代わりにビール酵母で発酵。メソポタミアでは約100種類以上のパンが作られていたといいます。

――どんな味なんですか?

遠藤食感はベーグルのようにしっかりしていて、後味がほんのりビール。「アカル」は毎日のメニューはもちろん、備蓄色や旅行などに持っていく携帯食として食べられていました。

古代ギリシャ(紀元前800~紀元400年頃)

■歴メシ3

スパルタの兵士が飲んで戦にGO! した精力増進スープ

「メラス・ゾーモス」

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【材料】(4人分) 豚肉 200g ブラッドソーセージ 30g セモリナ粉 20g さやいんげん 30g レンズ豆 30g ひよこ豆 30g ハチミツ 大さじ1 塩 適量 コショウ 適量 水 3リットル オリーブオイル 50ml 赤ワインビネガー 30ml リコッタチーズ 20g

【作り方】

1. 鍋に水、オリーブオイル、赤ワインビネガーを入れ、火にかける。

2. 豚肉とブラッドソーセージ、さやいんげん、レンズ豆、ひよこ豆を鍋に加え沸騰したら弱火で20分煮込む。

3. セモリナ粉、リコッタチーズ、ハチミツを入れてとろみをつけ、塩、コショウをかけて食べる。

――おっ! コショウが出てきましたね。

遠藤:ただ、コショウは当時、相当高価なもので庶民の年収と同じぐらいの価値がありました。古代ギリシャ人は美食家で宴会が大好き。エーゲ海をはじめ海に囲まれていたため魚介類が豊富で、ワインを好み、チーズやガレットなどおつまみもあったんです。二日酔いに効く、キャベツの料理なども考えられたほどです。

――美食家だったんですね。ならばさぞかし、この「メラス・ゾーモス」もおいしいはず……。

遠藤:いえ、マズイと評判の料理です。このスープはギリシャ本土で一番大きな都市、スパルタの料理。スパルタの兵士といえば幼少の頃から厳しい訓練を受け、最強の兵士と言われています。そんな彼らに与えられていたのがこのスープ。もともとは豚の血がベースで真っ黒の「ブラックスープ」です。訓練のときはこのまずいスープを飲まされ、戦争のときはおいしい料理が食べられるんです。つまり、兵士たちを食でコントロールしていたんですね。

――スパルタ、恐るべし。それにしても豚の血のスープってどんな味なのか想像がつかない……。

遠藤:フィリピンから「DUGO(デュゴ)」と呼ばれる豚の血を取り寄せて、文献通り作ってみましたが、ニオイもすごいし食べられたものではありませんでした。食事をしながら涙目になったのは初めての経験でしたね。

――遠藤さんのプロ根性がすごすぎる……。だからブラッドソーセージで代用ということなんですね。

遠藤:そうです。何度も試行錯誤を重ねて、食べた方が納得いただける味に作り上げることが出来ました。このレシピでは「おいしい」という味に仕上がっていますよ。

古代ローマ(紀元前600~紀元400年頃)

■歴メシ4

貴族たちしか食べられない甘酸っぱい肉料理

「古代ローマ風 牛のステーキ」

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【材料】(4人分) 牛ヒレ肉 400g パセリ 10g

(ソース) 赤ワイン 50ml 赤ワインビネガー 30ml ハチミツ 大さじ1 魚醤 10ml オリーブオイル 50ml ぶどう果汁 30ml フライドオニオン 10g 干しぶどう 10g ブイヨン(パウダー) 小さじ1 セロリ粉 小さじ1 クミン粉 小さじ1 オレガノ 小さじ1 (※シソ科の多年草のスパイスで清涼感のある香りが特徴) コショウ 適量

【作り方】

1. 一口大に切った牛ヒレ肉をフライパンでソテーする。

2. ソースを作る。ボウルにフライドオニオン、干しぶどう、セロリ粉、クミン粉、オレガノ、コショウを入れてつぶしながらよく混ぜ、赤ワイン、赤ワインビネガー、ハチミツ、魚醤、オリーブオイル、ぶどう果汁、ブイヨンを加えて混ぜる。

3. 1にソースを注ぎ、さっと煮たてる。皿に盛り付けパセリを飾って完成。

――おぉ! 肉が出てきました。一気に華やかになりましたね!

遠藤古代ローマでは豚肉と鶏肉が一般的に食べられていましたが、牛は神聖な動物とされ、初期の時代は食べられておらず、後年貴族が食すようになりました。古代ローマは小さな都市でしたが、少しずつ領土を広げ、地中海地域に多くの植民地を持つ巨大帝国に成長。その結果、さまざまな国の食文化が混ざり合い「いいとこどり」の料理が出てきます。特にギリシャを制圧するとワインや酒宴の文化も取り込み、豊かになっていきました。

――ところで、一見、普通のステーキですが、何が古代風なんでしょう?

遠藤:ソースです。古代ローマはガルムという魚醤や香辛料などを多く使い、エスニックな味わいが特徴。また、ワイン文化が発達しローマ人は完熟した甘いワインを好みました。そのため甘味調味料としても使われ赤ワインビネガーが作られたりと“甘酸っぱい味”が主流に。ただ、肉やワインを食べられるのは貴族だけ。つまり金持ちの料理ということです。

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▲古代ローマ人の庶民の味「プルス」。プチプチした大麦の食感がポイント

――庶民は何を食べていたんですか?

遠藤:「プルス」と呼ばれる麦の粥です。この料理は古代ローマでもっとも古い料理のひとつで、甘さと酸っぱさ、塩辛さがミックスしたような味わい。外食店で出されることも多く、現代で例えるならば牛丼店で丼をかき込むように、ローマ人も安くて財布に優しい「プルス」をお店でサクッと食べていたそうです。

「歴メシ」のよさは料理から各時代の食文化や人々の生活が感じられること。どの時代も食が文化を作ってきたんです。ぜひ、「歴メシ」を堪能して古代に思いをはせてください。

プロフィール

遠藤雅司

歴史料理研究家。2013年より世界各国の歴史料理を再現するプロジェクト「音食紀行」を開催。著書に『歴メシ! 世界の歴史料理をおいしく食べる』(柏書房)がある。現在、銀座のレストランにて「歴メシ!×日々輝☆世界の歴史料理をおいしく食べる~古代ローマ・カエサルお食事セット~」を提供中。

歴メシ!×日々輝☆世界の歴史料理をおいしく食べる~古代ローマ・カエサルお食事セット~ | 銀座 日々輝(ダイニングバー) | ホットペッパーグルメ 歴メシ!  世界の歴史料理をおいしく食べる

歴メシ! 世界の歴史料理をおいしく食べる 作者: 遠藤雅司 出版社/メーカー: 柏書房 発売日: 2017/07/24 メディア: 単行本

※この記事は2017年10月の情報です。

撮影:八木虎造

書いた人:中屋麻依子

中屋麻依子

21歳で物書き稼業に足をつっこみ、気が付けば10数年。漁師から起業家、ハリウッドスターまで述べ10000人以上にインタビュー。ウマいメシと至福の一杯のために物を書くをモットーに日々、文章と戯れ中。座右の銘は「酒の誘いは断るな」。

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