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Interview with !!!(Chk Chk Chk)about『Shake The Shudder』

NeoL_chk_02 | Photography : Shuya Nakano

チック・チック・チック史上、もっともダンス・オリエンテッドにして、ワイド・レンジなサウンドを誇るニュー・アルバム『シェイク・ザ・シャダー』。楽曲によって異なるプロデューサーやゲスト・ヴォーカリストを迎え入れる現在のチック・チック・チックは、単なる「バンド」という枠を超えてフリー・フォームにスタイルを変える「コレクティヴ」といった感さえある。そもそもボーダーレスで生粋のミュージック・フリークの集まりだったチック・チック・チックだが、『シェイク・ザ・シャダー』はまさにその極み。真夜中にライヴを控えたニック・オファーは、相変らずテンションが高かった。

——今回のニュー・アルバム『シェイク・ザ・シャダー』ですが、手応えはどうですか。

ニック「うん、めちゃくちゃいいよ。今回のアルバムって、今まで作った中でもとくにライヴでやってて楽しい感じの曲が多いっていうかさ。ライヴでの爆発力がハンパないし、今夜のライヴもきっととんでもないことになるよ。今回はツアーもガンガンにやってるし、バンドとしてはかなり強力なステージに仕上がってるよ」

——初期のチックでは、ライヴのエネルギーをいかにして音源に落とし込むか、という点を念頭に置いていたところがありましたが、ふたつ前のアルバム『スリラー』(2013年)あたりから、スタジオでできることとライヴでできることとを分けて考える方向へとシフト・チェンジするようになりましたよね?

ニック「今はスタジオとかライヴとか意識しないで、完全に自由にやってるね。たとえば今回の”The One 2″とか、スタジオで完全にコンピューターだけで作った曲で、アルバムがリリースされるまでライヴで一度も演奏してなかったんだけど、それはそれでオッケーだし。今回、本格的にレコーディングする前に、1週間ハコを押さえて、毎晩新曲をプレイするっていう作業をしてるんだけど、そのあとスタジオに戻ってライヴ感をそのまま音にすることもあれば、スタジオ仕様に作り変えたこともあったし、そのあたりは完全に自分達の気分次第なんだ。こうじゃなきゃいけないってルールはないし、曲が何を求めてるかなんだよね。曲に導かれるようにして作っているから曲がライヴっぽいサウンドを求めてたらそっちに流れていくし、よりコンピューター系のサウンドを求めてたらそっちに流れていくし」

——前作の『アズ・イフ』(2015年)から顕著ですが、今作では曲によってゲスト・ヴォーカルを呼んだり、プロデューサーやエンジニアを変えたりと、レコーディングのアプローチも自由で柔軟ですよね。

ニック「そうだね。どのアルバムも毎回、趣向や形を変えて進化していくもので、もっと前からその傾向があったんじゃないかな。最初の頃に出した『ミス・テイクス』(2007年)の“Heart of Hearts”のときに、初めてゲスト・ヴォーカルを呼んだんだけど、そのときだって『え、マジで、もう1人ヴォーカル入れてオッケーなの!?』って感じだったけど、『いや、それも大胆で面白いアイデアかも』と思って挑戦したんだ。そこからアルバムを出すごとに色んな要素を付け足すのが習慣になって、今はもう普通になちゃってるもんね。ゲスト・ヴォーカルを呼ぶにしたって、新しいギターの技を試すみたいなもんで、『この技を使って何ができるんだろう?』っていう、そういうノリだよね。サウンドによりバラエティを持たせるために、クリエイティヴなプロセスの一貫として普通にやってるよ」

NeoL_chk_01 | Photography : Shuya Nakano NeoL_chk_03 | Photography : Shuya Nakano

——そうして複数のプロデューサーやプレイヤーがクロスオーヴァーしながらコラボレートしていくやり方は、いまのポップ・ミュージックやヒップホップではメジャーな手法ですよね。

ニック「ダンス・ミュージックなんかとくにそうだよね。基本サンプリングで作るから、誰の声を使ったっていいわけだし。自分達も日常的にそういう音楽を聴いているし、だったら自分達もいろんなヴォーカルを取り入れてみようぜっていうさ。いろんな音が描けたほうが面白いし。たとえばストロークスの音が5色だとしたら、うちのバンドの音は24色くらいあったらいいなと(笑)」

——ちなみに、いまってチックのメンバーは何人なんですか。

ニック「現状、ステージでは6人かな。ただ、ヴォーカルがイギリスで活動するときと、アメリカで活動するときの2手に分かれてて、だから7人になるのかな。ただ、今、ステージに立ってるのは6人だよ」

——感覚としては、固定された「バンド」というよりも、もっと自由なコレクティヴな感じに近い?

ニック「まあ、そんな感じだよ。一応、オリジナル・メンバーが3人残ってるんで。でも、いつ誰が出たり入ったりしてもおかしくないし、すごくフレキシブルにやってる。オリジナル・メンバーを中心にファミリーみたいな感じでやってるね」

——今回、メインのプロデューサーを務めるパトリック・フォードの他にジョアキンが一曲手がけていますね。これはどういう経緯で?

ニック「昔から好きなアーティストができると、その人と一緒にスタジオに入って間近で仕事ぶりを見て、勉強したいって気持ちがあるんで。あの曲(“NRGQ”)もパトリックと作ってたら全然違うものになってただろうし、これも作品により多くの色を取り入れるっていう発想から来ているから、新しいサウンドなり感覚に触れてみたかったんだ」

——たとえば最近のポップ・ミュージックの世界では、マックス・マーティン(テイラー・スウィフト、アリアナ・グランデ、ケイティー・ペリーetc)のようなプロデューサーに代表される分業制のソングライティングが多く見られますよね?

ニック「バンドのメンバー全員ってわけじゃないけど、とりあえずラファエル(B)と自分は(マックス・マーティンが)好きで(笑)。そもそも、ポップ・ミュージック自体がダメっていうメンバーもいるから(笑)。ただ、ラファエルと自分は好きだし、自分達の手法とも近い気がするんだよね。インストゥルメンタル・パートとか、あるパートを作ったら、それをみんなに送って、みんながそれにアイデアを足してまた返してきて、そのうちの誰かが歌った1フレーズのメロディが気に入って採用して、その人の名前を曲のクレジットに入れるってことをしてるし。だから、自分達ももともとそんな感じなんだよね。インストゥルメンタルって、聴く人によってまるっきり解釈が違ってくるじゃないか。マックス・マーティンのやり方って、モータウンとかあの時代の手法に近いのかもね。アリアナ・グランデとかテイラー・スウィストのアルバムなんて、ここ10年での最高傑作だと思うしさ」

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