今村復興相更迭!激高記者会見とあり得ない失言はなぜ起きた?
激高記者会見から学ぶべきこと
今村元大臣の最初のつまずきは、4月4日の記者会見で記者の挑発的な質問に乗ってしまったことです。
ニュースなどでは、今村元大臣が声を荒げ、質問した記者に暴言を発しているシーンが放送されましたが、復興庁のサイトに掲載されている記者会見全文を見ると、当初は、国の責任を問う厳しい口調での質問に対し、冷静に対応していた様子がうかがえます。
そして、やり取りが平行線を辿る中、いったん「ここは論争の場ではない」と質問を打ち切ろうとしたところに追い打ちをかけるように浴びせられた「責任を持った回答をしてください」の声に、ついに激高した、というように私には思えました。
質問をした記者は繰り返し「自己責任だというのか」「人のせいにするのか」とたたみかけるように聞いており、「国は責任回避、無責任」という言質を取りたいのは明白です。が、目の前の一問一答しか、元大臣には見えなかったのでしょう。
私たちも、仕事や日常のやり取りで、後で冷静になって考えると「なぜ、あのとき、あんなに感情を高ぶらせてしまったのか」と思ったことはないでしょうか。
特に、会議での意見の対立やクレーム対応など「一対一」の図式になった際に、立場を忘れ、あたかも「自分が攻撃されている」「自分がおとしめられている」ような恐れに陥り、それに対して防御本能が過剰に出てしまい、冷静さを失ってしまうことがあります。
そんなときは、「視点を変えてみる」ことです。
目の前の相手ではなく、その場の目的、自分の役割、この議論の先にあるゴールに気持ちを向けます。
会議などでは、その場をリフレッシュさせるために、「コーヒーブレイクにする」「窓を開ける」「席の配置を変えてみる」など提案してみるのも効果的です。
そして、再び席についたら、「ここでこれまでの議論の流れを整理してみませんか」と全体を振り返り、会議の目的・ゴールを全員で共有してから議論に入りましょう。
「目の前の相手に言い負かされてはいけない」という「虫の視点」から「鳥の視点」に切り換えるのです。
クレーム応対でも「場所を変える:応対をする場所を変える」、「時間を変える:いったん電話を切って掛け直したり、翌日、訪問する」、「人を変える:担当者を変える、役職者が対応する」など、お互いにクールダウンすることで解決へとつなげることが出来ます。
失言は自分が普段意識していることから発せられると自覚すべき
そして、今村元大臣から学んだもう一つの教訓です。
「(震災が起きたのが)東北で良かった」という致命的な発言は、党の会派のパーティーで話されたものでした。
失言、失敗をしてしまった政治家がそれを取り返そうとして、さらに失敗を重ねてしまうケースはこれまでにもよくありました。
失敗でのダメージを早く払拭したい、あんな失敗に屈しない強い自分を見せたい、そんな焦りや虚勢から、周りが見えなくなってしまっていたのではないでしょうか。
内輪のパーティーと言っても発言には必ず責任が伴うこと、ましてや不名誉な注目を集めている立場であるならば、より慎重に神妙にしなければいけないところを、東日本大震災で多くの尊い命が失われ、甚大な被害があったことを「まだ、良かった」と表現するのは、あまりにも許しがたい発言でした。
日頃から、中央第一主義、中央が上、地方は下、と軽んじる意識を持っていることも露呈しました。
誰に向かって、どういう立場・役割である自分として発言するのか、それにはどんな責任を伴い、どのような影響が出るか、を常に想定しておかなければいけないことを改めて学ばせてくれた更迭劇でした。
「東北で良かった」発言に立ちあがった人たちによって、ツイッターでは東北の美しい景色、産物など「東北で良かった」投稿が次々と展開されています。同じ言葉であっても、心に響く言葉としての命を吹き込み、紡ぎ出されるふるさと自慢の数々。言葉というのは北風にも太陽にもなることを心にしっかり刻みつけておきたいものです。
(川邊 暁美/話し方講師)
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