【Excel作業の最速化を目指して覚えておきたい】上司のダメ出しに対抗する「5つの備え」
ビジネスパーソンにとってエクセルは必須のツール。しかし、苦手意識を持っていたり、なかなか効率的に作業が進められないと不満を持っていたりする人も多いのではないでしょうか。なかには、「Excelへの理解が足りない上司からのダメ出し」をその理由だと感じている人もいるでしょう。
実際に、エクセルスキル、財務モデル作成についてのセミナーなどでは「上司の無駄なリクエストに付き合っていられない」といった愚痴をよく耳にするもの。しかし部下もまた、準備が足りないまま自分の思い込みで作業を進めてしまっていることも多いようです。
実のところエクセルワークは、上司やチームとのコミュニケーションをいかにとるかが肝心。そこで必要となる“上司のダメ出しに対抗する5つの備え”を紹介しましょう。
【その1】仮エクセルで「最終目的のブレ防止」に備える
上司からの「売上をまとめてくれ」のひと言だけで作業に移り、表ができたあとに「知りたいのはこれじゃない」と言われてやり直しになる。こうしたエクセル作業の無駄な例が多く見受けられます。
はじめから目的を明確にしておくことが、やり直しを防ぎ、完成までの時間を短縮することにつながります。そこで作業の第一歩として、アウトプットイメージの作成、つまりゴールがイメージできる「仮エクセル」を作ることが必須となります。この段階での数字は空欄、もしくは仮のもので構いません。ただし、仮の数字を入れる場合は信憑性に上司の目が向いてしまわないように、必ず数字が仮であることを明記しましょう。
この「仮エクセル」をあらかじめ用意することで、作業中の迷いがなくなり、作業スピードが速くなります。さらに、イメージを共有しやすくなるため上司、経営陣、他部署のスタッフなどからの要望を事前に拾い上げることにも役立つでしょう。
【その2】急がば回れ! 「やりなおしリスク」に備える
「仮のエクセル」が出来たら、関係者全員が集まるミーティングを開き、合意を取ります。特に重要なのが、ポジションが最も高い(エライ)人の了承を取ってしまうこと。早めの段階でその人の了承を取っておけば、その後の「やり直しリスク」を大きく減らすことができます。
その後も実作業に入る前のキックオフミーティング、データをアウトプットイメージにそって集計し数字の妥当性を確認する中間レビューなど要所ごとに意志を共有する機会を設けることが大事です。これを省いてしまうと後になって「この数字が違う」「あのデータも入れて欲しい」という声が必ずといっていいほど挙がります。こうしたリクエストに対処していると、締め切り直前に徹夜するといったことになりかねません。
また、そうした要所で最終的なイメージ、スケジュールの共有を徹底すること。これでやり直しの無駄や、納期の遅れなどを防ぐことができます。
なお、あいまいな内容しか伝えてこない上司については「たとえば?」の切り返しをきっかけに内容を具体的に詰めていくようにしてみてはいかがでしょう。課題となる部分は決して“宿題”にはせず、その場でできるだけ具体的に詰めていくこと。内容はいったん決めてしまい、実際にデータを見てから再度議論したほうが効率的なのですから。
【その3】人それぞれ「言葉の定義」の行き違いに備える
ミーティングでアウトプットイメージについて検討するときは、項目の立て方や表やグラフの見た目といったところに意識が行きがち。もちろんそれも大切ですが、欠かせないのが言葉の定義について確認することです。
例えば社員といっても、正社員、契約社員、アルバイトといろいろな立場の人がいますが認識は人それぞれ。上司とあなたで言葉の定義が違っていると、それだけで作業のやり直しが発生してしまいます。これは時間をロスするだけではなく、とてもストレスを感じることなので特に避けたいものです。 こうした言葉の定義は、上図のような一覧表にしておくと便利です。
エクセルでは、どのような過程でアウトプットができたのかをファイルを見た人が確認できるよう、シートの並び順は計算の流れに合わせるのが基本。言葉の定義一覧はすべての作業の前提になるものですから、定義一覧はエクセルの最初のシート(一番左)か、最後のページに入れておくようにしましょう。
【その4】シミュレーションで「数字を変えた場合」の質問に備える
中間レビューで収益計画などを検討していると、上司がいきなり「この数字を変えるとどれくらい利益は変わるのか」といった質問をしてくることがあります。 しかし、その場ですぐ答えるのは難しいものです。質問のたびに「計算しますので少々お待ちを」などと言っていると、ミーティングの時間はどんどん過ぎていきます。
このようなことがないように、主要な数字、例えば売上や利益などはあらかじめ感応度分析を行っておきましょう。感応度分析とは、ある数字を変えたときに別の数字がどれだけ変わるかをシミュレーションすること。たとえば、販売数と値段を変えたときの利益をシミュレーションした感応度分析は上図のようになります。
【その5】エクセルを使わない「数字の議論」に備える
さて、最終調整が終わり、最後の意思決定のミーティングに漕ぎつけた際に重要なポイントがあります。それは「いかにエクセルを使わずに数字を議論できるか」です。
ミーティングの場では、数字についての質問が飛び交います。そのときにいちいちエクセルを見ているようでは、スピーディに返答することができません。しっかりエクセル計算をした後は、それで満足するのではなく、その数字を頭に叩き込む時間が必要です。
オススメしたいのは、ミーティング前に一度エクセルを紙に印刷して、それを読み込むこと。印刷された数字を見て、その数字の意味を理解しておきましょう。例えば「売上が前年より上がった理由は?」「売上が上がったのに売上原価が下がった理由は?」などと自問自答を繰り返すわけです。もし自分で答えられなければ、エクセルの計算式に戻ってチェックします。こうして、「数字の反射神経」を鍛えておけば最後の最後に上司に振り回されることもなくなるはずです。
さしずめ「備えあれば滞りなし」といったところでしょうか。上司のダメ出しに悩んできたみなさん、この5つの備えを持ってExcelの最速化を目指してみてはいかが?
<プロフィール>
著者:熊野整
『外資系企業がやっている 最速のExcel』著者。
熊野整 元モルガン・スタンレー証券バンカー、エクセルの鬼
ボストン大学卒業後、モルガン・スタンレー証券(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社し、投資銀行本部で大型M & Aや資金調達プロジェクトをリード。退社後はグロービス経営大学院にてMBAを取得。その後、エムスリー株式会社に入社し、事業責任者として事業計画の立案から戦略遂行、予算管理まで行う。現在はスマートニュース株式会社にて、財務企画として収益計画の策定や資金調達を担当。「グローバル投資銀行のエクセルスキルを、わかりやすく伝えたい」というモットーの下、2013年10月から週末や平日夜に個人向けエクセルセミナーを開催し、これまでにのべ1万人以上が受講する大人気セミナーとなっている。大手上場企業を中心にコンサルティングを行うほか企業研修も数多く開催し、多くのビジネスパーソンに収益計画の作成指導を行っている。著書に『外資系投資銀行のエクセル仕事術』(ダイヤモンド社)、『外資系投資銀行の資料作成ルール66』(プレジデント社)がある。
<書籍リンク>
http://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g3216090006
<セミナー概要>
5月15日(月)に、著者のセミナーが行われます。お申し込みはこちらから
http://store.kadokawa.co.jp/shop/k/k301703000496/
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