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WHITNEY『Light Upon The Lake』Interview

photo : Shuya Nakano | text : Junnosuke Amai | edit : Ryoko Kuwahara

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昨年リリースされたホイットニーのデビュー作『ライト・アポン・ザ・レイク』は、多くのメディアでその年の年間ベスト・アルバムの候補に選ばれるなど高い評価を得た。シカゴのフォーク・デュオが紡ぎだす、繊細で豊潤な響きに満ちたメロディとサウンド。そして、讃美歌のようにも厳かで、切なく沁み渡る歌声。そんなかれらの音楽は、リリースから一年近くが経とうとしている今も、静かに、しかし確実に聴く者の心を捉え続けている。この6月には、カントリーの歌姫ドリー・パートンの“Gonna Hurry (As Slow As I Can)”のカヴァーを含む新作の12インチがリリース予定、そしてサマーソニック2017にも主演決定。そちらも楽しみにしたい。

―デビュー・アルバムの『ライト・アポン・ザ・レイク』が世界中の音楽リスナーの心を捉えたことについて、率直にどう感じていますか。今回の東京公演もソールド・アウトですよ。

ジュリアン「こうして東京に来られただけでも嬉しいよ(笑)。もちろん、それだけ良い作品を作ったっていう手応えはあったけど、それが他人にどう受け止められるかは予想外の範疇だし、気に入ってもらえる保証はないわけだからね。そこからどうなるかは神のみぞ知るという」

―スミス・ウエスタンズやアンノウン・モータル・オーケストラをやっていた頃とは違う手ごたえがあった?

マックス「そうだね、今のほうがもっと自分らしいというか。スミス・ウエスタンズをやってた頃は、まだ19歳とか20歳とかで、何も考えてなかったわけで。今はもっとライフワークとしてコミットしてるから」

ジュリアン「今だからこそ、いろんなことの有り難みがわかるというか。昔はただ今が楽しければいいやって感じだったけど、今はここまで来るのにどんな苦労があったのか知ってるからね」

―スミス・ウエスタンズの活動をしていた当時から、今みたいな音楽をやりたい気持ちがあったんですか。

ジュリアン「というか、スミス・ウエスタンズの当時は、そもそも他のことを考える余裕すらなかったんじゃないかな。1つのプロジェクトに関わると、それだけでいっぱいいっぱいで。実際、今はホイットニーのことだけでこれだけ手一杯なんだし(笑)」

マックス「他に選択肢がなかったからね。音楽以外に自分にできることなんてないし。スミス・ウエスタンズが終わったらどうするのかとか、そもそも自分がどんな音楽を作りたいかすらも考えてなかった。そこでこれだけ共感し合える相手に巡り会って、それが受け入れられたんだから、自分はすごくラッキーだったよね」

photo : Shuya Nakano | text : Junnosuke Amai | edit : Ryoko Kuwahara

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―ホイットニーの音楽がこれだけ多くの人に受け入れられたのは、どうしてだったと自分たちでは思いますか。

マックス「むしろ、そういうことはあんまり意識しないようにしてる。初心を忘れないようにというか……自分達が一番最初にライヴをやったときなんて、まるで得体の知れないものだったのに、それを期待して集まって楽しんでくれている人達がいて。あのときの感覚を忘れないようにね。自分達は今まで通り、ただ普通の人間だって思うようにしてる」

ジュリアン「過去は過去として割り切って考えてるからね。今回のアルバムも1年とか1年半前とかに作った作品なわけで、自分達にとっても過去のものだし。実際に作品を聴いてくれた人達にとっても、そのリスナー体験自体は過去のものであって。だからこそ、この瞬間、目の前にあることだけに集中するようにしてる。今は今晩(※東京公演)のショウを最高のものにすること、そして、次のアルバムをもっと良い作品にしてやるってことだけを考えるようにしてるよ」

―たとえば、メジャーもインディーも関係なく、ジャンルも関係なく、「ポップ・ミュージック」という大きなカテゴリーの中で様々な音楽がフラットに聴かれている今のような状況って、スミス・ウエスタンズの頃にはなかったものだと思うんですね。それこそ、ビヨンセやフランク・オーシャンのアルバムと並列にボン・イヴェールとホイットニーのアルバムも聴かれている、みたいな。

ジュリアン「たしかに、状況が変わりつつあるのかもしれないね。けど、そこに時代の変化だとかクロスオーバーを感じるとしたら、むしろユーザー側の視点だよね。今はクリック1つでありとあらゆる音楽にいつでもアクセスできる時代になったんだ」

マックス「そうなると、従来でいう『ポップ・ミュージック』だとかラジオで流行ってる曲とかが、もはや意味をなさない。誰でも自分の聴きたい音楽をジャストなタイミングで聴けるようになったわけだから」

―では、ホイットニーとして曲を作るうえで、あるいはステージで演奏するうえで最も大切にしていることはなんですか。

ジュリアン「ジェフ・トゥイーディー(ウィルコ)が言ってた言葉に『どんなにライヴが最高のバンドでもアルバムが良くなければ、一介のバンドとして記憶から忘れ去られてしまう』っていうのがあってさ。要するに、作品とライヴと両方からの働きかけが必要なんだ。ただ、実際、現在の状況と照らし合わせてみて、20年前とかと比べて確実にCDが売れなくなってるし、現実問題としてただCDを作るだけで生計を立てることは難しくなってる。今どきミュージシャンで食っていくには、ライヴをやってかないことには始まらないわけで、そうなるとどうしてもライヴの比重が大きくなるよね」

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