大津波に遭いながら、なおも故郷に暮らし続ける被災者たち

被災地の子供たちを取材し続けた森氏

 ジャーナリストの森健氏は2011年12月23日、ニコニコ生放送に出演し、東日本大震災で被災した家族たちの声を伝えた。森氏は、東日本大震災で被災した東北地方の子供たちに取材した『つなみ 被災地のこども80人の作文集』などを執筆。被災地の子供や家族を追っている。取材当初は、被災した子供たちが津波について語ったり作文に書いたりすることを嫌がるだろうと考えていた森氏だが、意外にも子供たちは進んで引き受けてくれたと語る。

 番組では、視聴者から「被災した子供や若い親たちは再び家に戻りたいと思っているか」という質問があった。森氏によると、「取材したなかで被災地を出たのは2人だけ」だという。「高校生から上の子には『どうかな』という子もいるが、『ここを逃げたい』という人は1人もいない」と森氏。「そこに風土というか、(東北という)地域ならではの特色がある」と語る。

 森氏が津波の被害に被った子供たちを取材しようと考えたきっかけは、明治と昭和に計3回発生した津波を追った書籍『三陸海岸大津波』(吉村昭著)と出会ったことだ。なかでも、昭和8年の昭和三陸地震に伴う津波で家族7人を失い、作文に「私は1人ぼっちの子なのです」と書いた小学5年生の女の子が心に残っていたと森氏は明かす。その女性は今なお健在で、東日本大震災と合わせて大津波を2度も経験したことになるが、今なおそこに「住み続けたい」と話しているという。

 こうした故郷に対する愛着について森氏は、「東京で育った人が合理性だけで考えたら、理解なんか不能」とする一方で、「作文集で取材した子のなかには、あと5年もすれば成人になる子もいる。(そうなれば)復興を担う当事者となる可能性が強い」と述べ、被災地で生まれ育った子供たちが土地へのこだわりの強さゆえに自ら復興させていくことに期待を寄せた。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 2度の大津波を生き延びた女性の話から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv74988542?po=news&ref=news#1:01:58

(安田俊亮、土井大輔)

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