愛車と一緒に寝たい!を叶えるためのガレージを囲むようなデザイン【edge HOUSE】
▲なによりも愛車最優先……。いつも見ていたい……。そんな施主の希望を現実のものとするために邸内に立体駐車場を設置。さらに、ガレージ自体をショーケースのようにすることで……
ショーケースに入った愛車を包むように暮らす|建築家・濱里豊和
ショーケースに入った愛車を眺めながら暮らしたい……そう思ったことはないだろうか。これまでにedgeHOUSEでは、そのようにデザインされたガレージハウスをいくつも紹介してきた。しかし今回のA邸は、その割り切り方がすごい。なにしろ、車最優先! という意志が至るところから感じられるのだ。外観とのギャップも面白い。一見するとシャッター付きガレージを2つ備えた一般的なガレージハウスに見える。建物自体にも、とくに奇をてらったようなデザインは見受けられない。ところが、シャッターを開放して近づいてみるとこだわりの仕掛けが至るところに施されていた。
Aさんの愛車は、メルセデス・ベンツ CLK63 AMGと日産 GT-R NISMOというハイパフォーマンスモデルに加え、日常の足としてのホンダ フィットという布陣。近づいてよく見ると、CLKがパレットの上に載っている。そこから見上げると高い吹き抜けとなっていて、2階まで愛車をリフトアップできる設計となっていたのだ。
「車を限りなく近くに感じられる暮らしをしたかったのです。なので、1階は寝室や浴室など生活を中心とした間取りにしてもらいました。この家は、完全にガレージ主体なので、あらゆるところが割り切ったレイアウトとなっていることが特徴です」
と、Aさん。自他ともに認めるカーフリークだけあって、このCLK63 AMGブラックシリーズも日本に数台しかない希少車。きっかけは、富士スピードウェイでF1が開催された際にペースカーとして走っていた姿にひと目惚れしたからだという。CLKもGT-RもAさんが趣味の時間にじっくりと味わうための特別な存在。とくにCLKは年間1000㎞程度しか乗らず、GT-Rとともに雨天未使用。ほぼ新車に近いコンディションを保っている。これまでの車遍歴は一貫してスポーツモデルで、それも必ず独自のチューニングによりポテンシャルアップを施してきたという。つねに速さとカッコよさを追求していることが車に対するこだわりで、そんなマインドを知れば今回のガレージが車最優先でデザインされていることが理解できる。
1階はガレージの後方に寝室を設定。ベッドに入ってからも、眠りにつく直前まで愛車を眺めていられる。また、ガレージから室内へ通じる出入り口も一面ガラス張り。一歩足を踏み入れると、そこはAさんのコレクションが展示されているホビールームとなっている。もちろんすべて車に関係するアイテムばかりで、愛車との一体感ある生活を満喫できる空間だ。圧巻は2階。リフトアップされた車をガラスの壁がグルリと囲む様子は、まさにショーケースに収まった実物大のモデルカーのようだ。CLKの運転席側はリビングスペース、後方は絵画コレクションが並ぶ廊下、助手席側はベッドを備えるゲストルームというレイアウト。ガラスの壁面にはロールカーテンが備えてあるので、ゲストが訪れた際にはプライバシーが確保できる。
夢の城の進化はとどまるところを知らない
このようなレイアウトは、Aさんの「生活する中で、つねに愛車を近くに感じていたい」という思いから。その思いを具現化したのは建築家の濱里豊和さん。Aさんとの出会ったときの印象を伺ってみた。
「とにかく車が好きで、いつも車の近くで生活ができるようにしたい。できれば一緒に寝たいぐらい…、と話す様子から『Aさんの車愛を形にしよう!』と思いました」
車が見えるように、という希望でガレージハウスを設計するケースは多いが、「もっともっと近くに!」というAさんの情熱を感じたらしい。A邸を設計するにあたって苦労した点は?
「ガレージがメインですので、やはりそのプランニングには苦労をしました。当初は1階に3台を平置きにして、車と車の間にも部屋を挟み込めないか……と検討したのですが、敷地の奥行きに限界があってうまく部屋がとれませんでした。Aさんと打ち合わせをするなかで、1台を2階部分に置いては? というアイデアが浮上し、プラン化してみると居室周りもしっくりしてきたのです」
構造的にも難易度が高そうですが?
「そのとおり、とても難しい計画でした。家の中心に大きな吹き抜けがあって、その周りはガラスだらけ。建物奥行きにも限界がある……と、構造設計者泣かせでした。最初は一般的な構造設計会社に打診をしてみたのですが、不可能という回答だったので、最終的にアクロバティックな建物を得意とする個人の構造設計者に依頼をしました。2階建てだからこそ成立した設計で、3階建て、立面が長くない、敷地奥行きがもう少し狭い……などなにか一つ条件が異なっていたら、構造的に成立しなかったと思います」
難易度が高かったことは、邸内を見ると想像に難くないが、さらに濱里さんがA邸の設計で注力した点は、「わたしがいつも心がけているのは、デザインばかりが目立ってしまうような装飾的な建物にならないように、という点です。A邸では車を見せるという面に配慮しつつも、使い勝手や機能面、生活する人の動線を考えながら最もバランスのよいところを探りました」
設計を依頼してから竣工までを振り返ってAさんは、「濱里さんのフットワークの軽さが印象的でした。邸内にリフト設置の提案をしてくれるなど、わたしのニーズをしっかりと捉えていただき、設計についても安心して一任しました」
今後は、屋外にあるゲスト用パーキングスペースにガレージを建てる計画もあるという。そこに収める愛車候補は、現在時間をかけて思案中とのこと。もちろん濱里さんには打診済み。妥協のないガレージハウスを現実のものとしたAさん。その夢の城の進化はとどまるところを知らないようだ。
▲ガレージを囲む壁面は、1階も2階もガラス張り。邸内から見る愛車の姿もひとしおだが、愛車の中から見える邸内の景色もまた格別
▲2階にリフトアップされたCLKを、リビングルームから眺める。まさにショーケースに収まった1/1スケールのモデルカーといった佇まいだ
▲2階のゲストルーム。ゲストも強制的に「車と寝る」ことに……。ロールカーテンによりプライバシーは確保される
▲Aさんの寝室。「できれば車と一緒に寝たい!」という思い限りなく現実のものとなっている
▲広い廊下により実現できたホビールーム。ショーケースには、Aさんこだわりのアイテムが整然と並ぶ
▲ギャラリーのような玄関は、将来的にオートバイが置けるよう広めのスペースを確保
【施主の希望:邸内からの愛車の見え方に徹底的なコダワリをみせた】
■3台が収納できるインナーガレージであること。そしてガレージの車が、生活において可能な限り近くに感じられるようなレイアウトにしてほしいということ。ガレージの細かい部分では、車両への照明の演出があること、とくに立駐の下段にも照明を備えることや排気ガス設備など、ガレージの機能性についても希望を出しました。その他、モノが多いので、生活感を出したくないという思いから収納スペースの確保もお願いしました。
【建築家のこだわり:ガレージを囲む廊下を、ホール状の部屋として捉えた】
■車の周りをぐるりと囲むように……となると、どうしても通路的な形状になります。一般的な廊下の幅だと「ただ囲んでいるだけ」になってしまいますので、幅を広くしてホールのような部屋にしました。また、ガレージ回りのサッシが綺麗に見えるように、柱の落とし方にも気を使っています。ガレージのスケールと比べてサッシが大きすぎても小さすぎても綺麗に見えませんし、構造上はある程度の柱は必要になってきます。そのバランスにこだわりました。
■主要用途:専用住宅
■構造:在来木造
■敷地面積:159.38平米
■建築面積:87.26平米
■延床面積:139.12平米
■施工:ラムズカンパニー
■設計・監理:濱里豊和建築事務所/濱里豊和
■TEL:03-6666-9084
text/菊谷 聡
photo/田村 弥
※カーセンサーEDGE 2016年9月号(2016年7月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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