自分の望み通りに相手を動かす心理メール術

f:id:k_kushida:20160823185341j:plain

■行動を促すメールでは、読み手の感情に訴えかけよ!

世の中には2種類の人がいます。相手の心を動かすメールが書ける人と、相手の心を動かすメールが書けない人です。

たとえば、ある会社の社長に対して、営業マンAと営業マンBさんがアポ取りのメールを書いたとします。そのときに、営業マンAには「では会いましょう」と快諾の返信がきて、営業マンBには「忙しいのでまたの機会に」と断りの返信がくる。私たちの身の回りでは、そういうことが頻繁に起きています。当然、仕事で成果をあげ続けているのは営業マンAのほうです。

両者の違いはどこにあるのでしょうか? それは、読む人の心を動かす文面を紡げているかどうかです。人は「感情」を備えた生き物です。したがって、相手に何かしらの行動を望むのであれば、「感情」に訴えかける文面を紡ぐ必要があります。

■名著に学ぶ「人の名前」の重要性

自分の名前を覚えていて、それを呼んでくれるということは、まことに気分のいいもので、つまらぬお世辞よりもよほど効果がある。逆に、相手の名前を忘れたり、まちがえて書いたりすると、やっかいなことが起きる。

デール・カーネギー著『人を動かす』より

自己啓発作家のテール・カーネギーは、自身の著作のなかで、名前の重要性について、こう語っています。平たく言えば“人は自分の名前を呼ばれると嬉しい”ということです。なぜなら、自分を大切に扱ってくれている、と感じるからです。

逆に、相手から名前を呼ばれなかったり、名前を間違えられたりすると、「軽んじられた」と感じ、相手に好意を持てなくなったり、抗戦的な態度に出たりすることがあります。人は、それほど自分の名前を大事にしています。メールを書くときにも、この人間心理を押さえておく必要があります。大事なのは以下の2点です。

ポイント1:人の名前を間違えて書かない

ポイント2:積極的に人の名前を書く

ポイント1を意識するのは、マナーとしても当然でしょう。一方で、ポイント2を意識している人は意外に少ないかもしれません。メール冒頭の「宛名」以外にも、適宜、相手の名前を挟むことによって、相手が好意や好感を抱きやすくなります。

△ お会いできるのを楽しみにしております。

二宮さんにお会いできるのを楽しみにしております。

このわずかな違いが、「相手の感情が動く or 相手の感情が動かない」の差を生み出すのです。

■依頼のメールでは、相手の自己重要感を満たすことに注力せよ

f:id:k_kushida:20160823185459j:plain

筆者のもとには、よく講演や研修の依頼メールが届きます。たとえば、次のようなメールです。

【依頼メールA】

弊社の社員向けに「文章作成」の研修を検討しております。

山口先生に講師をお願いしたく、ご連絡差し上げた次第です。

仕事の依頼ですので、ありがたいメールには違いありません。しかし、感情が揺さぶられるほど嬉しいかといえば、答えはノーです。では、次のようなメールであればどうでしょう。

【依頼メールB】

弊社の社員向けに「文章作成」の研修を検討しております。

いくつかの「文章の書き方本」に目を通しましたが、

山口先生のご著書がずば抜けて分かりやすく、

また、その的確なノウハウにたいへん感銘を受けました。

山口先生のノウハウこそが弊社社員に必要であると判断し、

ダメ元でご連絡差し上げた次第です。

先ほどよりも心に刺さる依頼メールです。「ずば抜けて分かりやすく」「たいへん感銘を受けました」というフレーズを目にして喜ばない著者がいるでしょうか。メールAとBは、同じ依頼メールですが、「なんとかして、この会社の力になりたい」と意気に感じるのはメールBです。

なかには、「『ダメ元』という言葉を使うのはマナー違反では?」とツッコミを入れたくなった人もいるでしょう。ごもっともな意見です。確かに「無理を承知で」などの言葉に置き換えれば、よりスマートだったかもしれません。

しかし、大事なのは相手の心が動くかどうかであり、依頼メールであれば、快諾がもらえるかどうかです。相手を動かすメールに求められるのは、表面的なマナーや日本語的な正しさではありません。相手の自己重要感を満たしたうえで、「嬉しい」「力になりたい」と感じてもらえる文面を心がけましょう。

■指示のメールは「ネガティブ表現」ではなく「ポジティブ表現」で書こう!

① 説得力のない企画書はいりません。

② 説得力のある企画書を期待しています。

上司から届いたメールです。あなたがメール受信者なら、気持よく受け入れられるのは①と②のどちらでしょうか? おそらく②ではないでしょうか。①には「説得力のない」「いりません」などのネガティブな表現が使われています。人によっては、自分が責められている、あるいは、嫌味を言われている、と感じる人もいるでしょう。

一方、②は「説得力のある」「期待しています」などのポジティブ表現が使われています。部下を鼓舞、応援する姿勢が感じられます。同じ内容のメールでも、言い方を工夫するだけで、受ける印象が大きく変わるのです。

【ネガティブ表現で書かれたメールを受信した場合】

気分が沈む/モチベーションが下がる/テンションが下がる/嫌な気持ちになる/拒絶したくなる/悪意を抱く

【ポジティブ表現で書かれたメールを受信した場合】

気分がよくなる/モチベーションが上がる/テンションが上がる/嬉しい気持ちになる/受け入れたくなる/好意を抱く

“指示する”ということは、相手に何かしらの成果を出してもらいたいわけです。その目的を達成するためには、相手のモチベーションを損なうネガティブ表現ではなく、モチベーションを高めるポジティブ表現を使ったほうが賢明です。

くどいようですが、相手は感情をもった人間です。行動を促す目的のメールでは、その感情をコントロールする書き方が求められるのです。

■えっ、「よろしくお願い致します」は危険!?

多くの方は使っている「よろしくお願い致します」は、とても使い勝手のいい結び言葉です。しかし、「よろしくお願い致します」と書いておけば、万事安泰というわけではありません。

資料をお送り致します。お手数ですが、よろしくお願い致します。

もしも、相手に何かしらの行動を期待しているなら、「よろしくお願い致します」だけでは物足りません。相手の行動を促す言葉を書く必要があります。

資料をお送りいたします。お手数ですが、内容をご確認のうえ、ご返信いただければ幸いです。よろしくお願い致します。

このように、具体的に行動を促すことによって、相手も「しっかり資料を読もう」という気持ちになります。

× 忘年会を予定しております。よろしくお願い致します。

◯ 忘年会を予定しております。お手数ですが、明日の正午までに出欠のご返信をいただけますでしょうか。よろしくお願い致します。

× A案とB案を用意しました。よろしくお願い致します。

◯ A案とB案を用意しました。恐縮ですが、忌憚のないご意見、ご助言をいただければ幸いです。よろしくお願い致します。

もちろん、命令調や押し付けがましい言い回しはご法度です。はっきりと指示しながらも、言い回しはていねいでなければいけません。相手の行動を促すときは「明確さ」と「配慮」、この2つのバランスが求められます。

■メールに求められるのは「文章力」よりも「コミュニケーション力」

相手の心を動かすためのヒントをお伝えしてきました。実は、対面のコミュニケーションも、メールのコミュニケーションも、その本質に大差はありません。

ところが、メールになると、とたんに、味気ない、冷たい、物足りないコミュニケーションを図る人が少なくありません。おそらく、目の前に相手がいないことで気が緩むのでしょう。

しかし、メールを打つパソコンの向こう側には、そのメールを受け取る人が100%存在します。どうか、そのことを忘れないでください。メール受信者の顔を鮮明に思い浮かべながらメールの文面を紡げる人は、自分の望み通りに相手を動かすことができる人です。

著者:山口拓朗

f:id:k_kushida:20160823184847j:plain

『だから、読み手に伝わらない!(もう失敗しない文章コミュニケーションの技術)』著者。

伝える力【話す・書く】研究所主宰。「伝わる文章の書き方」や「メールコミュニケーション」「キャッチコピー作成」等の文章スキルをテーマに執筆・講演活動を行う。著書に、メールコミュニケーションの方法を紹介した『だから、読み手に伝わらない!(もう失敗しない文章コミュニケーションの技術)』(実務教育出版)のほかに、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)他がある。モットーは「伝わらない悲劇から抜けだそう!」。

山口拓朗公式サイト

http://yamaguchi-takuro.com/

関連記事リンク(外部サイト)

メールやプレゼンも声で作る!ビジネスで大活躍する「音声入力」の極意
仕事が3倍はかどる! ダンドリの達人になる9つのワザ
手頃な受講料でオフィスワークからモノづくりまで学べる「在職者訓練」とは?

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. 自分の望み通りに相手を動かす心理メール術

リクナビNEXTジャーナル

ビジネスパーソンのための、キャリアとビジネスのニュース・コラムサイト。 キャリア構築やスキルアップに役立つコンテンツを配信中!ビジネスパーソンの成長を応援します。

ウェブサイト: http://next.rikunabi.com/journal/

TwitterID: rikunabinext

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

記事ランキング