積み立て金、修繕状況が明らかに。マンションにも情報開示の波
マンションの管理について、いろいろな見直しがなされている。今回は、マンションの管理組合が管理会社などに管理を委託する際に使用される契約書のひな型「マンション標準管理委託契約書」が改正された。マンションを売買する際に、管理に関する情報をできるだけオープンにしようというのが、改正の主な内容だ。【今週の住活トピック】
「マンション標準管理委託契約書」及び「マンション標準管理委託契約書コメント」を改正/国土交通省
マンションの管理は課題が山積み。売買の際に管理情報をより多く開示する方向へ
マンションの管理については、居住者の高齢化などによる役員の担い手不足、管理費滞納による管理不全、災害時に資産を保全するための管理組合の対応など、さまざまな課題が生じている。一方、大規模修繕工事の実施状況や予定、修繕積立金の積み立て状況など、重要な管理情報については開示をしていく必要がある。
こうしたことを踏まえて、2016年3月に、各マンションのルールブック「管理規約」のひな型となる「マンション標準管理規約」が改正された。(詳しくは、筆者の記事「サークル活動に管理費はNG!? マンション標準管理規約はどう変わった」を参照)
これを受けて同年7月に、マンションの管理組合と管理会社が交わす契約書のひな型「マンション標準管理委託契約書」が改正された。主な改正点は、マンションの売買の際に、管理に関する情報提供の依頼を受けたときに、管理会社が管理組合に代わって開示する情報の項目が明記されたことなどだ。具体的に見ていこう。
売買の際の開示情報が充実。売り手も閲覧可能に
今回の改正で注目されるのは次の2点。(1)マンションの購入予定者が買おうとするマンションの管理に関する情報の開示項目が充実したこと、(2)情報を得る対象に売却予定者も加わったことが大きなポイントだ。【画像1】イメージ図(国土交通省「マンション標準管理委託契約書・同コメントの改正概要」より転載)
例えば、購入予定者がリフォームを検討しているのに、希望通りのリフォームができない管理規約になっていたり、入居してすぐに、知らされていなかった大規模修繕工事のための追加修繕費を請求されたりといった事態になると、想定した暮らしができなくなる。購入者の利益保護のために、事前に多くの情報を把握しておくことは重要だ。
マンションを購入したいと思う人は、通常は物件を仲介する宅地建物取引業者(以下、宅建業者)を通じて、情報を集める。多くの場合は、宅建業者が管理会社とやりとりして、管理規約などの重要な管理情報を入手して、購入予定者に提供するという流れになる。
今回の改正では具体的に、開示すべき情報が例示された。
・管理規約
・使用細則や専有部分の使用制限など
・管理組合の役員数や選任方法、年間の理事会開催回数など
・駐車場や駐輪場等の使用料や空きの有無など
・購入予定者が負担する管理費や修繕積立金などとその支払い方法
・管理費や修繕積立金の収支状況、滞納の有無
・長期修繕計画の有無、共用部分の修繕実施状況や予定
・耐震診断等の実施の有無とその内容
などが主なものだ。
個人情報にかかわらない限りで、できるだけ多くの情報を開示しようという方向性なので、管理組合が管理費の滞納があっても放置している場合、長期修繕計画で必要とされる修繕積立金を蓄えていない場合などは、購入予定者が事前にその情報を得て購入の可否を決める判断材料とすることができる。
つまり、情報開示によって中古住宅の購入者の利益を保護するとともに、「こんなはずでは…」というマンション内のトラブル防止にも、管理組合が資産価値の維持向上のために管理の質を高くすることにもつながることになる。
また、売ろうとする場合も、どういった情報が開示されるか自身でも分かるようになるので、そのときになって慌てないように、日ごろからマンションの管理については注視していく必要があるだろう。
前述した「マンション標準管理規約」が改正されたといっても各マンションの管理規約を改正するのは簡単なことではない。事前に改正案を検討し、管理組合の総会で4分の3以上の賛成を得る必要があるからだ。
各マンションが管理会社と交わす管理業務委託契約書のほうは、契約を更新する際に改正が可能だ。マンションの管理会社は、国が定めたひな型にできるだけ沿った契約をしようとするところも多く、契約の更新をする際に改正案の内容を盛り込んだ契約書を提案し、管理組合の総会で重要事項説明を行い、承認を得られれば改正した内容になるからだ。
そうなると、情報開示が充実した管理業務委託契約書を交わすマンションは急速に増加すると考えられるので、マンションを買ったり売ったりしようとしている人には、見逃せないポイントになるはずだ。
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