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「脱原発から日本の繁栄を見出すのは難しい」 東工大・柏木教授に「エネルギー政策」を聞く

東京工業大学大学院の柏木孝夫教授

 脱原発か、原発維持か。日本のエネルギー政策に対して国民の関心が高まるなか、脱原発を訴えるデモや集会が立て続けに行なわれている。その一方で、経済成長のために原発を維持すべきだとの声もある。

 福島第一原発の事故を受け、政府はエネルギー政策の見直しを迫られている。経産省の「総合資源エネルギー調査会」では、有識者による基本問題委員会(三村明夫委員長)を2011年10月3日から開き、今後のエネルギー政策についての議論を始めた。

 原発はゼロにすべきなのか。将来のエネルギー構成はどうあるべきなのか。委員会のメンバーであり、「スマート革命」の提唱者でもある東京工業大学大学院の柏木孝夫教授にエネルギー政策のあるべき姿を聞いた。

■「反原発vs原発推進」という二項対立を乗り越え、多様な選択肢を

――原発に対する不安の声が高まっている。今後、原発はどうあるべきか

 あれだけの事故を起こしているのだから、当分原子力は進まない。もちろん新設はできないだろう。ただ、原発をゼロにするのか、残っている原発を継続するのかは、これからエネルギー基本計画や経済産業省、コストの計算などを通して考える。国民的な対話も含めて議論しなければならない。

 個人的には選択肢を減らすべきではないと考えている。安全性をできる限り高めて、日米欧で原発の国際標準をつくり、さらに事故が起きた際の損害賠償に備え国際的な保険機構を創設するなどして対応する。その上で、どの程度維持できるのかを考えていく必要がある。

 反原発と原子力推進という二項対立を乗り越えた上で、選択肢は多く持っておくことが重要。社会的な背景、国民的な世論、技術開発の動向などを複眼的に見た上で、電力全体のうちどの発電方法がどのくらいのシェアを占めたら日本の国力を維持できて、かつ発展につながるようなビジョンを描けるかを考えていかなければいけない。

 原発をやめるという決断は、心情論的に理解できるが、そうなると日本の産業構造を「ものづくり」からシステムインテグレーター(情報技術産業)にするなどの変革をしていかないと、脱原発から日本の繁栄を見出すのは極めて難しい状況になるのではないか。

■2030年、エネルギー全体のシェアはどうなる

――昨年6月に策定された「エネルギー基本計画」では、2030年までに原発を増設し、原子力の発電比率を現在の約30%から50%に引き上げることを骨子としていた。福島第一原発事故を受けて、今回新たに設置された基本問題委員会では、その見直しが図られるということだが、2030年の電源構成についてどう考えているか

 2030年までに、原発は半分くらいがなくなる。そうすると原発が占める割合は、エネルギー全体のシェアのうち、最大でも25%。残りのうち、30%が分散型システム。内訳は太陽光、風力など再生可能エネルギーの分散型が12~13%で、天然ガスやコジェネレーション(熱電併給)のような燃料型が17~18%になる。水力や地熱など大規模の再生可能エネルギーは約10%だ。残る35%が火力発電で、そのうち15%が天然ガスなどのコンバインドサイクル(ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式)で、約20%が石炭になる。

■スマート化で変わるライフスタイル

――柏木教授は著書の『スマート革命』で、エネルギーの「スマート化」について言及していた。「スマート化」とは何か

 原子力の代替としてスマート化が重要になる。スマート化とは、ICT(情報通信技術)とエネルギーの需給システムが一体化すること。要するに、ICTがエネルギーのコントロールシステムに組み込まれるということだ。スマート化により、ディマンドレスポンス(需要応答)に対応できる機器を住宅に導入し、太陽光や風力などの不安定な電源を有効に使えるようになる。

 スマート化された住宅は「スマートハウス(次世代住宅)」と呼ばれる。「スマートハウス」の家電製品はICTが入った「スマート家電」になり、電気メーターの代わりとなる「スマートメーター(次世代電力計)」が電力の消費・発電状況を電力会社に伝えることにより、(家庭のエネルギー消費機器を効率的に管理する)「ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)」が可能になる。また、「スマートハウス」では、電気料金が需要に合わせて変化する「リアルタイムプライシング」になる。スマート化が広がれば、住宅の屋根に設置した太陽光パネルで発電した余剰電力を売るなど、個人も自由に電気を売買できる電力の全面自由化が進むだろう。

 電力の自由化が促進されれば、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車などの「eモビリティ(自動車の電化)」が進む。それが日本の成長戦略の柱となるだろう。スマート化が進んだ社会では、「スマートハウス」で電気自動車が余剰電力を蓄電し、スーパーマーケットへ買い物に行った際は、駐車場のコンセントにプラグインすることにより、電力を売ることができるようになるかもしれない。このような動きを加速させるのが、今年8月に成立した(再生可能エネルギーを固定価格で全量買い取る)再生可能エネルギー特別措置法だ。再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度(フィード・イン・タリフ)はビジネスチャンスの多様化を可能にするだろう。

■エネルギー政策を話し合う組織が乱立 決定権はどこにあるのか

――今後のエネルギー政策について国民の関心が高まるなか、「基本問題委員会」のほかにも内閣府の「原子力委員会」、国家戦略室が所管する「エネルギー・環境会議」など政府内にエネルギー政策の基本方針を議論する組織が乱立している。このような状況について、どこの組織に決定権があるのか不明確などと困惑する声が上がっているが

 そう思う。会議を作るというのは、今の政権の特徴。しかし、林立した組織がどういう意思決定機構になり、どこが決定権を持つのかは明確でない。菅前首相が経産省は信用できないとして、「政治主導でやる」という趣旨でエネ環会議(エネルギー・環境会議)を作ったのだろう。最終的にはエネ環会議が決めることになるかもしれないが、エネルギー政策というのは「エネルギー政策基本法」という法律がある。

 エネルギー政策基本法とは、経済産業大臣が総合資源エネルギー調査会の意見を聞いて、3年おきに策定しなければならないと規定されている法律。たとえエネ環会議が内閣官房にできたとしても、エネ ルギー基本計画というのは経済産業省が作る。それを変えるのであれば、法律改正をしなければいけない。最終的には、総合資源エネルギー調査会の基本問題委 員会が日本のエネルギー基本計画を作ることになると思う。

 これまで総合資源エネルギー調査会には、経産省に関連の深い委員が多く、原子力に批判的な人は多くなかった。だが今後は、原子力に批判的な人も慎重な考えを持っている人も入れた上で議論をする。最終的にはエネルギーの基本計画は経産省、CO2(二酸化炭素)の問題など環境については環境省が担当し、決断はお互いの合議のもとでやっていくだろう。

――藤村官房長官は10月3日の記者会見で、中長期的なエネルギー構成のあり方について「エネルギー・環境会議を中心にまとめていく」と発言していたが

 それについては、エネルギー政策基本法を改正しなければいけない。日本は法治国家であり、基本法に基づいてやっている。法律に基づいたものを最終的に仕上げていくというのは首相がやるかもしれないが、そのためには新しい法律を作らなければいけない。まだまだ来年の6月までは、混沌とした議論が続くのではないか。これからは、エネルギー政策について国民がよく考え、対話していく時代になっていくと思う。

(三好尚紀)

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