「アポを忘れた!」「先方から無理な要求が…」 ピンチを乗り切るメール術

「取引先とのアポを忘れていた」「取引先から無理な要求をされた」「スケジュールが急に変わった」など、仕事をする中で青ざめてしまうシーン、ありますよね。それが「相手」がある状況の場合、ここで信頼を失うのも深めるのも、対処法次第。

そこで今回は、ピンチへの対応にあたり、「メール」をどのように活用すれば効果的かをご紹介します。

日本ビジネスメール協会の代表理事であり、ビジネスメールやコミュニケーションに関するコンサルティング・教育を手がける平野友朗氏にお話を伺い、ポイントをまとめてみました。

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「取引先とのアポイントを忘れ、すっぽかしてしまった!」

外出先から戻ったら、デスクにこんなメモが…。

「○○社の××様からお電話があり、今日13時に約束をしていたはずだが来なかった、とのことです。折り返し連絡してください」

さて、皆さんはどんな行動を取りますか?

相手が怒っていると想像すると、直接話すのを恐れて、メールに頼ってしまう人も多いのではないでしょうか。しかし、「謝罪」においては、メールを優先するのは間違い。ミスに気付いた時点に、すぐに電話をかけるべきです。

では、電話をしたら相手が不在だったら。この場合、時間をおいて再度電話するのではなく、メールを使います。最初の謝罪のタイミングは、なるべく早い方がいいからです。このときのメールで押さえておきたいポイントは以下のとおり。

●「すぐに電話した」ことを伝える

「メールで済ませようとするとは失礼だ」と思う相手もいますので、電話をした事実は伝えましょう。

例)「先ほどお電話をさせていただきましたが、ご不在とのことですので、まずはメールにて失礼致します」

●謝罪の言葉を「真っ先に」「丁寧に」伝える

真っ先に、謝罪の言葉を述べます。普段親しくしている相手だとしても、謝罪の言葉は軽々しくなってはいけません。

例)「本日はお伺いできず、大変申し訳ありませんでした」

重要なアポイントであった場合、謝罪の言葉はさらに丁重に。例えばこのような表現を使います。

例)「多大なるご迷惑おかけし、深くお詫び申し上げます」

「非礼このうえないこと、謹んでお詫びを申し上げます」

「すべては私の不注意によるもので、心より陳謝申し上げます」

●理由は率直に述べる

「××様からは○日とご指定いただいたような気がするのですが」といったように、相手のせいにするような表現は当然NG。潔く自分の非を認めましょう。

例)「お約束の日にちを間違って記憶しておりました」

●二度としないことを誓い、「とりいそぎ」の旨を伝える

例)「今後はこのような不手際のないよう、厳重に注意致します」

「メールにて恐縮ですが、とりいそぎお詫び申し上げます。後ほど改めてお電話させていただきます」

――ここでは「アポイント忘れ」を例に挙げましたが、これらのポイントは、さまざまな「ミスへの対処」に共通するものです。謝罪をしなければならない状況に陥ったとき、参考にしてください。

「取引先から無理な要求が…」

例えば、「注文を受けたが、値引きなど無理な条件をつきつけられた」という場合。

相手が納得できるように断り、かつ取引も継続できるような関係を保ちたいものです。

この場合のメールの送り方のポイントは次のとおり。

●感謝を伝える

断りのメールだからこそ、挨拶は丁寧に。依頼をしてくれたことに対しての感謝を述べます。

例)「この度はご依頼をいただき、誠にありがとうございます」

●経緯を伝える

依頼を受けてからの経緯を記すことで、断るにしても「真摯に受け止め、熟考した」ことを伝えます。

例)「○○様のご期待に沿えるようにと、社内で検討を重ねました」

●はっきりと断りつつ、「今後の可能性」は残す

相手を気遣うがゆえに、断っているのか受託しているのかよくわからない文章になるのはよくあること。相手にとってはかえって迷惑となるので、断る意志は明確に記しましょう。

このとき「現状では」「今回は」という前置きをつけることで、全面的・永続的に拒絶しているわけではないというニュアンスが伝わります。今後の取引の可能性を残しておきたい場合は添えると有効です。

例)「大変申し訳ありませんが、現状ではお引き受けいたしかねる結果となりました」

「せっかくのお申し出ではございますが、今回はご要望に沿うことができません」

●断る理由を示しつつ、代替案も提示する

相手を納得させるために、断る理由・事情も簡潔に伝えてください。また、条件を変えることで受託できる場合はその条件も提示します。

例)「材料費の高騰に伴い、先日ご提出したお見積書の価格を維持するのが精一杯、というのが私どもの実情です」

「○○個以上のご注文をいただけるようでしたら、再度検討させていただきます」

●理解を求め、決意表明で締めくくる

例)「何卒事情をお察しいただき、ご了承賜りますようお願い申し上げます」

「かかる事情をご理解のうえ、あしからずご了承くださいますようお願い申し上げます」

「弊社一同、よりいっそうのサービス向上に努める所存です。今後も変わらぬお引き立てのほど、よろしくお願い申し上げます」

「予定が急きょ変更に! 取引先にも対応してもらわなければ…」

社内の事情で、予定していたスケジュールがいきなり前倒しに。それに合わせて、プロジェクトに関わる関係者や取引先にも急いで対応してもらわなければならない…なんてことも起こりがちです。相手に快く対応してもらい、その後も良好な関係を続けられるようにするには、依頼メールでどんな点に心を配ればいいのでしょうか。

●「指示」ではなく「お願い」「相談」の形で申し出る

一方的に、いきなり「こうしてください」では、当然ながら反発を買います。「お願い」「相談」といった言葉を使って切り出しましょう。

例)「~の件でご相談させていただきたく、ご連絡致しました」

「~の件につきまして、お願いがございます」

●事情を伝え、相手を気遣う言葉を添えて依頼です

なぜこのようなメールを送ることになったのか、事情や背景を説明します。「やむを得ない都合があるんだな」「この人も困っているんだな」という理解・共感を得ることが大切です。事情を明らかにすれば、「そういうことなら、こんな方法はどうですか?」など、相手から提案を受けられることもあります。

依頼内容を伝える際は、次のような前置きをすることで、恐縮する気持ちを伝えるといいでしょう。

例)「ご無理を承知でお願いしますが~」

「身勝手きわまる申し入れとは承知しておりますが~」

「ご多忙な時期であることはよく承知しておりますが~」

●協力的な姿勢を示す

相手に負担を求めるだけでなく、「自分たちにもできることには対応する」「必要な条件があれば提示してほしい」と、協力的な姿勢を見せます。

例)「当初お願いしておりました~の作業につきましては、私どもで行います(それに伴うお値引きはございません)」

「そのほか、弊社で対応できることがあれば、お気軽にご相談、ご提案ください」

ほんの一行、丁寧な言葉、相手を気遣う言葉を添えるだけでも、メールから受け取る心象はかなり変わってきます。ピンチの状況とはいえ、焦らず慌てず、ぜひ、一手間をかけてみてください。

平野友朗氏/株式会社アイ・コミュニケーション代表取締役、一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事

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1974年生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学専攻。広告代理店勤務を経て、2003年、日本で唯一のメルマガ専門コンサルタントとして独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。ビジネスメール教育の専門家。得意とする分野は、メールコミュニケーション効率化や時間短縮などの業務改善、ウェブマーケティングの戦略立案やメルマガ・ウェブサイトの改善、メディア戦略を含めたブランド構築や出版プロデュースなど多岐に渡る。著書に『カリスマ講師に学ぶ!実践ビジネスメール教室』『ビジネスメールの常識・非常識』ほか。

一般社団法人日本ビジネスメール協会 http://businessmail.or.jp/

(株)アイ・コミュニケーション http://www.sc-p.jp/

EDIT&WRITING:青木典子

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