箸、手ぬぐい、うちわは、すべて縁起物だった?
食事の際、何気なく使っている”箸”。我々日本人にとって欠かせない箸ですが、元々命の糧となる食べ物は神からの贈り物ということから、箸は神様と人とを結ぶ大切な道具であり、箸そのものにも霊威が宿ると考えられていたそう。
たとえば、お正月の祝い箸もその一例。白木の真新しい箸に歳神様を招き、神様と一緒に食事をいただくという考えのあらわれとされています。
そんな箸の材料として圧倒的に多いのは木。しかも、縁起に結びついた木が素材となっていることが多いといいます。
本書『日本のたしなみ帖 縁起物』には、箸の素材に込められた「意味」ついて、こう解説しています。
柳:木質がしなやかなことから”家内喜(やなぎ)”として正月の祝い箸に使われる。挿し木でもよく育ち、生命力が強いので長寿繁栄の木でもある
南天:”難を転じる”との縁起を担いで、厄除け長寿箸として、米寿などの祝い事に配られる
杉:まっすぐに上に伸びる常緑樹で長寿の象徴。割り箸は、南北朝時代に吉野の杉材でつくって後醍醐天皇に献上した箸が起源と伝承され、日本の割り箸は杉材が圧倒的に多い
槐(えんじゅ):”延寿”に通じるとの意もある
柘植(つげ):”家を継ぐ””名を継ぐ”との語呂合わせから縁起の良い木とされる
栗:木質が硬くて丈夫なので、子どものお喰い初めのときの箸などに使われる。何事も”やりくり”がうまい、”金繰り”が順調などの語呂合わせから正月の祝い箸にも使われる
意外にも身近にある縁起物の数々。たとえば、今では手ふきや布巾などとして使われている”手ぬぐい”も、平安時代には布そのものが貴重だったため、神事の際に神に仕える人が身にまとう神聖なものだったそう。また、江戸時代には縁起物の贈答品として配られたりもしていたといいます。
あるいは”うちわ”もまた縁起物。奈良時代に中国から伝来したうちわには、あおいで風をおこし、神の気配を強めるという働きがあるそう。今でも神輿担ぎや盆踊りの際などに、うちわはつきものですが、これも神の力を奮い立たせ災厄を祓う意味合いがあるのだそうです。
本書には、こうした身近にある縁起物はもちろん、日本各地にあるさまざまな縁起物がその由来と共に紹介されていきます。縁起物とは、願いを託して福を招き寄せる手段だといいます。行事やお守り、食べ物や動植物……身の回りに溢れている縁起物の数々から福を招き寄せてみませんか?
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