海江田万里経産大臣による「更迭パフォーマンス疑惑」まとめ――結局、更迭など行われていない5つの理由

海江田氏の著書『僕が小沢政治を嫌いなほんとの理由』より

海江田万里経済産業大臣が8月4日に緊急会見を開いて発表した経済産業省の幹部3名の処分。これがまったくのデタラメだとして話題になっています。その件についてのまとめです。トップ画像は1996年に海江田氏が出した本の表紙。人の心とは移り変わるものですが「人心一新」は貫徹できるのでしょうか。

本当に人心一新を図る、というのであれば、このくらいの思い切ったことをやってみて欲しいと思います。
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結局、経産省で「更迭(こうてつ)処分」はおこなわれていない

今回の福島第一原子力発電所の事故等の一連責任をとってもらうため、海江田万里経済産業大臣は3名の経産省幹部に「更迭処分(こうてつしょぶん)」を行った、との報道がありました。しかし更迭なんてどこにもなかった、ということがわかってきました。緊急会見直後には新聞・テレビ・ネットなど多くの媒体が「更迭」と報じ、本誌でもそのように書かせていただきました。

「更迭(こうてつ)」というのは、偉い公務員の人が左遷(させん)されることを指す言葉で、普通に考えたら退職になり、さらに退職返納などもあるんだろうというイメージですが、しかしフタを開けてみると実際は処分どころか、すぐに顧問に就任した上、退職金も自己都合以外で早期退職するということで自己都合より2割増の7500万円(松永氏の場合)というより良い待遇となっていました。

これは「更迭(こうてつ)」とは言いません。要するに「更迭風」の人事異動の発表がおこなわれたというだけのこと。一体誰がこんな人事を許したのでしょうか。

たとえばあなたが仕事上で問題を起こし、上司に「人事刷新をおこないます。詳細は明日」と言われたら当然なんらかの処分が下ると考えるでしょう。しかし翌日「じゃぁ、今日から我が社の顧問に就任してください」「退職金1100万円上積みしておきました」と声をかけられられたらどう感じるでしょうか。上司は完全にどうかしちまったのかと心配になるのではないでしょうか。もちろん、普通の会社ではそんなことは起きませんが、海江田万里氏の人事とは社会通念を超越したものであるようです。

事実上の更迭であると印象づける会見を緊急に開きながら特定のキーワードを巧妙に避け、最終的にはそのような懲罰的人事はなかったとする手法。最終的に、そう印象づけられた人達の方が負けという指摘もありますが、やはりそれはまったく逆で、そういう印象の操作をおこなう方が問題ではないでしょうか。

海江田万里氏による「人事一新」が単なる「更迭パフォーマンス」だったことを示す5つのポイント

1.海江田万里氏自身が「更迭」という言葉を使わず「人心一新である」と繰り返しており、「懲罰か」という記者の質問は巧みに避けて回答している
2.処分を受けた本人が「更迭ではない」と言っている
3.そもそも「更迭」と報じられた人達は経産省を去るどころか顧問に就任している
4.退職金が自己都合ではなく定年前に退職をうながした、ということで満額の7500万円支払われる
5.大臣が何も言わなくてもこの夏人事異動がおこなわれる予定だったと言われている

「更迭パフォーマンス」に関するそれぞれのポイントについてもう少し説明します。

1.海江田万里氏自身が「更迭」という言葉を使わず「人心一新である」と繰り返しており、「懲罰か」という記者の質問は巧みに避けて回答している

当初の緊急会見から海江田万里大臣は更迭という言葉を使わず、「人事の刷新」とだけ述べています。その様子は会見議事録を読むことで確認できます。一体何のために緊急に会見をおこなったのか。改めてその意味が問われています。

平成23年8月4日(木)海江田経済産業大臣の臨時記者会見の概要
http://www.meti.go.jp/speeches/data_ed/ed110804j.html [リンク]

例えば「懲罰するという意味合いも当然ここには入っているのでしょうか」という記者の質問には正面から答えようとしていません。

2.処分を受けた本人が「更迭ではない」と言っている

処分されたと言われる本人が「更迭ではない」と言っているのですから、これだけでも決定的といえます。雑誌『週刊ダイアモンド』8/27号のP57。人事刷新の対象となった元経産省事務次官の松永和夫氏は記者の「8月22日付で、安達健祐・経済産業政策局長にポストを譲った。自身の人事は更迭だったのか、定期異動ではないかとの指摘もあるが」という質問に対し

更迭ではないと、私自身は理解している。
(元経産省事務次官 松永和夫氏の発言。『週刊ダイアモンド』8/27号より)

と述べています。

3.そもそも「更迭」と報じられた人達は経産省を去るどころか顧問に就任している

TBSによる経産省への取材により、松永和夫事務次官は退職日の8月12日にそのまま経済産業省の「顧問」に就任し、寺坂原子力安全・保安院長は退職の翌日である8月13日に「大臣官房特別顧問」に就任したということがわかっています。今回の人事をおこなったのは海江田万里氏自身であると本人が強調していましたが、これも海江田氏の「決断」に入るのでしょうか。

「顧問」のまましばらく経産省にいて、その後天下りするのではないかという推測もおこなわれています。

4.退職金が自己都合ではなく定年前に退職をうながした、ということで満額の7500万円支払われる

今回の退職は、自己都合退職ではなく、大臣からの勧奨退職とされ、自己都合よりも2割増で退職金が支払われるそうです。

松永和夫 前経産省事務次官:6400万円→7500万円
細野哲弘 資源エネルギー庁長官:5400万円→6700万円
寺坂信昭 前原子力安全・保安院長:5100万円→6200万円

退職金が増える更迭なんておかしいですよね。

5.大臣が何も言わなくてもこの夏人事異動がおこなわれる予定だったと言われている

つまり全て経産省側官僚の予定通りであり海江田氏はそれを発表しただけという可能性がある、ということです。元々予定されていた順送り人事にすぎないのではないかと識者が述べています。そもそも海江田万里氏はこの人事が何に対するものかということについて一切説明をおこなっていません。「人心一新」をするそもそもの理由が一切明らかになっていないなんておかしな話です。

海江田万里氏による「更迭パフォーマンス疑惑」に関する説明が必要

8月4日に「更迭」として報じられた内容について検証してみると、これは「更迭」とは言えない内容だということがわかりました。海江田万里氏はそもそも「人心一新」が何のためにおこなわれ、この結果についてどう考えているのかということについて早急に表明する必要があるのではないでしょうか。それができないのであれば、この人事は詐欺だと言われても仕方のない状況だと思われます。この人事については「1ヶ月前から考えていた」とのことです。しかしこのおかしなストーリーを本当に「1ヶ月もかけて」考えていたとしたら、むしろそのこと自体が問題です。

原発推進派の海江田氏とはいえ、このまま説明もせずに避けて通れる問題ではないでしょう。むしろ、原発推進派であるからこそ、妙な疑いを避ける為にもここはしっかり説明をすべきです。海江田さん、緊急会見まで開いて、一体何をやりたかったんですか?


参考リンク)
更迭経産3首脳、退職金規定通り…6000万~8000万円
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20110825-OYT8T00359.htm

【原発3首脳更迭】更迭、1カ月前から考え 硬い表情の海江田経産相 – MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110804/biz11080411000005-n1.htm

経産省議事録(8月4日海江田経産大臣緊急会見)
http://www.meti.go.jp/speeches/data_ed/ed110804j.html
大臣は更迭という言葉を使わず、「人事の刷新」とだけ述べている

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深水英一郎(ふかみん)

深水英一郎(ふかみん)

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

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