「取り急ぎ◯◯まで」はNG!? 知っておきたいメールの言い換え表現
「取り急ぎお返事まで」「取り急ぎご報告まで」。ビジネスメールのやりとりでよく使われるこの「取り急ぎ◯◯まで」というフレーズですが、相手が目上の人だと簡略化した言い回しを使っていいのか迷ってしまいますよね。
そこで今回はビジネスメールにおける頻出フレーズ「取り急ぎ◯◯まで」に関するメールマナーとその言い換え表現について、ビジネスマナー講師の尾形圭子さんに伺います。
使えるのは至急連絡が必要な場合のみ
そもそも「取り急ぎ◯◯まで」は、ビジネスメールのやりとりにおいて使ってはいけない表現ではありません。 ただ、使用していい場面について尾形さんは「至急連絡することが必要な場合のみ」だと言います。
「詳しく情報を送るための準備や内容の確認は後回しにしてでも、相手に連絡をしたいとき、また連絡してもよい内容に使う表現です。
例えば『メールが届いた』『企画案を確認した』『打合せ日程変更』などの場合に、『取り急ぎご報告まで』『取り急ぎご案内まで』と伝えます」
「取り急ぎ◯◯まで」に関する注意点
また、「取り急ぎ◯◯まで」を使う際は「状況や相手との関係性を考えることが大前提」と尾形さん。使用時の注意点として、以下のようなことが挙げられるのだそうです。
1. あとで必ず連絡を取ることが前提
「本当に『取り急ぎ』の際に使用するフレーズなので、あとでしっかり連絡をとることを前提とします」
2. 取引先やお客様、自分と距離感のある上司・先輩には使わない
「『取り急ぎ』には『とりあえず急いで。間に合わせの処置として。まずさしあたって。一応』といった意味があります。
お互いに急ぎということが認識できる親しい上司や先輩には使っても問題のない表現ですが、取引先、お客様、自分と距離感のある上司・先輩といった目上の方に使うのは失礼にあたりますので、使用は避けるようにしましょう」
3. その他の連絡事項は入れない
「『取り急ぎ〇〇まで』を使うのは、本当に急ぎの内容を伝えたい場合に限ると心得ること。その際、急ぎで伝えたい内容のみを書き、その他の連絡事項を入れないように。その他の連絡事項を入れる場合は、以下のように追って連絡する旨を伝えましょう。
(例)
メールを拝受いたしました。ありがとうございます。 取り急ぎご連絡申し上げます。
また、別件ですが、〇の企画書につきましては、 追ってご連絡させていただきます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
「取り急ぎ◯◯まで」の言い換え表現
それでは、取引先、お客様、距離感のある上司・先輩といった目上の方に対しては「取り急ぎ◯◯まで」という旨を伝えたい場合、どのように言い換えればいいのでしょうか。
◎「取り急ぎ」は「まずは」に言い換える
「『取り急ぎ』は目上の方には失礼となってしまうので、語尾を丁寧に。『取り急ぎ』については、『まずは』と言い換えることでフォーマルな印象となります」
◎「◯◯まで」と省略しない
「また、『◯◯まで』は言い切り型=簡略型であり、文末を省略しているとも言えます。そのため、『申し上げます』『のみにて失礼いたします』など、省略せずに入れるようにしましょう」
(例)「取り急ぎご報告(ご案内)まで」
→「まずはご報告(ご案内)申し上げます」
→「まずはご報告(ご案内)のみにて失礼いたします」
→「まずは用件のみにて失礼いたします」
◎「取り急ぎ御礼まで」は使わず、ひと言気持ちを付け加える
「また、相手にお礼の気持ちを伝えるときに使いがちな『取り急ぎお礼まで』は、『取り急ぎ』の意味と、しっかりと伝えるべき『お礼』とが一致しないため使用は避けるようにします。
お礼の旨を伝えるときは、『取り急ぎ』を『まずは』に変え、語尾を丁寧にするとともに、ひと言気持ちを付け加えるようにしましょう」
(例)「取り急ぎお礼まで」
→「まずは、御礼申し上げます」
→「まずは、御礼かたがたご挨拶申し上げます」
→「まずは、御礼のみで失礼いたしますが、後日ご挨拶にお伺いしたいと存じます」 →「お手紙をお送りするべきところ失礼かと存じますが、まずは、御礼かたがたご挨拶申し上げます」
まとめ
「なんとなく便利だから」と使いがちな「取り急ぎ◯◯まで」というフレーズですが、表現に少し工夫を加えることで、目上の人にも使える表現になることがわかりました。
気付かないうちに相手に失礼な対応を取っていた……なんてことにならないためにも、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
取材協力:尾形圭子
航空会社で研修やOJTのノウハウ、接遇の精神と技術を学び身に付けたのち、大手書店、外資系化粧品会社を経て、2000年に独立。2005年に会社設立。「航空会社からマナー講師へ」というバックグラウンドでは実現できない現場感覚を理解した実践的な電話応対、接遇、クレーム対応、新人研修、リーダー養成などの教育指導や専門性の高いコンサルティングを展開する。著書は20冊以上、テレビ・ラジオ出演、雑誌などへの寄稿も多数。現在、マナー講師、執筆者、僧侶として、幅広く活動している。
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