横山知枝に見るアイドル“円満引退”の姿とは
先月25日、横山知枝さんが引退した。
「横山知枝って誰?」という人でも、かつて“やまだかつてないWink”として山田邦子さんとデュエットしていた女の子、といえば思い出されるかもしれない。
彼女は1973年生まれで、現在37歳。ソロでのCDデビューも果たし、いわゆるアイドル活動後は、舞台女優や音楽ユニット“チコリ”としても活躍していた。プライベートでは、2001年に一般人男性と結婚、一男一女の母親でもある。
下北沢のライブハウスで行われた引退ライブには、70名ほどのファンが訪れ、芸能人としての彼女との最後の時を過ごした。彼女自身の気丈で明るい性格もあって、最後まで涙はなく、笑顔でのお別れとなった。
実は、かつてアイドルであった人が、このように円満引退するというのは稀有な例だ。
「アイドル」という言葉の定義は曖昧だが、一般的には“歌や演技、グラビアなどで活躍する若い女の子”と言ってよいだろう。だとすれば、歳を重ねていくに従い、どこかのタイミングでアイドルを引退しなければならないのは必然だ。
もちろん、明確に時を区切らず、本格的な女優やアーティストになっていく人もいる。
また、最近ではブログやtwitterを使って引退の報告を人もいる。
しかし、徐々に活動が減っていき、「そういえば最近見ないなぁ」などと思っていると、いつの間にか芸能界を引退している、という例が圧倒的に多いのだ。
どこの事務所でも“アイドルのデビューのさせ方”については、かなりのお金をかけ、演出を考えるが、“引退のしかた”については、あまり考えていないように思われる。
当然、辞めていく人に対して、たくさんの費用や手間をかけるのは難しいのかもしれない。しかし、たとえわずかな間でもそのタレントが会社に利益をもたらし、また、引退後もCDやDVDなどが売れることを考えるのであれば、それなりの“花道”を作ってあげるのも無駄ではないのではないだろうか。
かなり昔の例になるが、キャンディーズの解散や、山口百恵の引退コンサートなどは、まさに歴史的な出来事だった。そういった“けじめ”をつけることにより、ファンの中にはそれまでの思い出がしっかりと刻み込まれ、彼女らは伝説となっていったのだ。
横山知枝さんの引退ライブでは、悲しさや淋しさよりも、彼女を含めた会場全体の暖かな一体感が印象的だった。集まった人の多くが、20年来の彼女のファンである様子。皆それぞれに幸せそうで、中にはファン同士で結婚したというカップルもいた。
本人も「明日からは子供たちとの時間を多くとりたい」と引退の理由を語り、人から人へ幸せが伝播していくような、そんなひとときだった。
AKBを中心とする、グループアイドルが数多く活動する現在。その人数から換算すると日に一人ぐらいのペースで引退していくということにもなりかねない。一体彼女たちはどんな形でアイドルを“引退”していくのだろうか。
※写真は横山知枝さん公式ウェブサイトより
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