今月末で著作権保護期間が満了する先人たち‥2015・その2【文学・後編】
前回に引き続き、今月末で著作権保護期間が満了する文学に足跡を残した先人たちを紹介します。
今月末で著作権保護期間が満了する先人たち‥2015・その1【文学・前編】
https://getnews.jp/archives/1281242 [リンク]
江戸川乱歩(1894-1965、代表作『明智小五郎』『少年探偵団』シリーズ)
1894年(明治27年)、三重県名賀郡名張町(現在の名張市)に生まれる。早稲田大学政治経済学部を卒業後、1923年(大正12年)に『二銭銅貨』でデビューする。2年後の1925年(大正14年)に発表した『D坂の殺人事件』で後に“日本三大名探偵”の1人と称される明智小五郎を初めて登場させた。1936年(昭和11年)、講談社『少年倶楽部』で連載を開始した『少年探偵団』シリーズでは明智小五郎を窮地に陥れた怪人二十面相が登場し、同シリーズは掲載誌を変えながら1962年(昭和37年)まで26年間続き児童文学史上に金字塔を打ち立てている。
一方で『人間椅子』や『陰獣』『蜘蛛男』など欧米の恐怖小説にインスパイアされた残虐性や(当時は「変態性欲」と呼ばれていた)フェティシズムを前面に押し出す作風も大きな特徴となっており、ペンネームも『モルグ街の殺人』や『黄金虫』で知られるエドガー・アラン・ポーから取ったものである。晩年は光文社『宝石』の編集長を務め、新人の発掘・育成に力を入れた。
1965年(昭和40年)7月28日逝去。70歳没。『青空文庫』では『怪人二十面相』『少年探偵団』『人間椅子』など75作が公開に向けて作業中。
大坪砂男(1904-1965、代表作『天狗』『私刑』)
1904年(明治37年)、東京市牛込区(現在の東京都新宿区)に生まれる。東京薬学専門学校を卒業後、谷崎潤一郎の書生などを経て警視庁鑑識課に勤務。戦後に『三月十三日午前二時』でデビューした後、佐藤春夫の推薦で『天狗』を発表する。江戸川乱歩からは香山滋、島田一男、高木彬光、山田風太郎と共に「戦後派五人男」と称された。1950年(昭和25年)に『私刑』で探偵作家クラブ賞を受賞。
晩年は新作の発表が停滞し、柴田錬三郎にプロットを提供して生計を立てていたとされる。1965年(昭和40年)1月12日逝去。60歳没。没後に『大坪砂男全集』全2巻が薔薇十字社から刊行された。俳優で劇作家の和田周は長男、脚本家の虚淵玄は孫に当たる。
『青空文庫』では『三月十三日午前二時』『推理小説の原理』『浴槽』の3作が公開に向けて作業中。
山川方夫(1930-1965、代表作『その一年』『愛のごとく』)
1930年(昭和5年)、東京市下谷区(現在の東京都台東区)に日本画家・山川秀峰の長男として生まれる。慶應義塾大学文学部を卒業後、1958年(昭和33年)に『演技の果て』で第39回芥川賞候補にノミネートされる。1960年(昭和35年)からは日本版『ヒッチコック・マガジン』でショートショートを積極的に発表するようになり、都筑道夫・星新一と共に「ショートショート御三家」と称された。
1964年(昭和39年)には『クリスマスの贈物』で第50回直木賞候補、同年には『愛のごとく』で第51回芥川賞候補にノミネートされるが1965年(昭和40年)2月19日、神奈川県内で交通事故に遭い34歳の若さで逝去した。没後の1969年(昭和44年)から翌1970年(昭和45年)にかけて冬樹社から全5巻、2000年(平成12年)に筑摩書房から全7巻の全集がそれぞれ刊行されている。
『青空文庫』では『その一年』『愛のごとく』『クリスマスの贈物』など7作が公開に向けて作業中。
(その3に続く)
画像‥江戸川乱歩(1954年撮影)
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(執筆者: 84oca) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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