投じられた一石!ヤフーとソニー不動産が乗り出す不動産サービスの全貌
ヤフーとソニー不動産の新サービスが発表
先日、ヤフーとソニー不動産が提携し、不動産流通の新サービスを発表しました。その名も「おうちダイレクト」。個人間の不動産売買を促進し、不動産仲介料を無料にするサービスです。このサービスには、どんなメリットデメリットがあるのでしょうか。
従来の不動産業では、不動産の売主は売買価格に一定割合をかけた仲介料を担当した不動産業社に支払い、買主は同じく売買価格に一定割合をかけた仲介料を担当の不動産業社に支払うようになっていました。これは、業界用語で「分かれ」といい、元付け業者と客付け業者が分かれるという意味で続いてきた、宅建業法にも記載されている長らく続く慣習でした。
しかし、これには弊害もあり、不動産売却を委任された業者が売主と買主両方から手数料をもらおうと画策し、売却を委任された物件を流通させないという手段が横行しました。これが、俗にいう「物件の囲い込み」です。
「事前相談業務」が十分に行えない可能性がある
今回のサービスは、この慣行に対し、個人が売却物件をヤフーとソニーの不動産登録サイトに登録し、仲介料を買主ないし売主が負担するようにして不動産の流通が促進されることを狙ったサービスです。
確かに、このサービスでは「業者が売買物件を流通させない」という問題を解決することによって、不動産流通を促進する効果が期待できます。しかし、不動産売却もしくは購入前の諸問題を解決する本来の不動産業社が行っていた、「事前相談業務」が十分に行えない可能性があります。
例えば、「土地を買おうとしても、上下水道が入っていなくて土地を買った後に経費がかかる」「土地が防火地域にあるため、通常よりも建物の防火設備に費用が多くかかる」「近隣の建物が敷地に入ってきている」「塀の位置と実際の境界線が異なる」など、物件を申し込んだ後に発生する問題を事前に解決・整理できない可能性があります。結果として、インターネットに記載された以上の高い買い物になってしまう可能性もあるということです。
今回のサービスは不動産業界の今後に一石を投じることに
欧米でもそうですが、本来、不動産を購入するには不動産購入に対してのエージェントが必要であり、不動産を売却するには売却に対してのエージェントが必要な側面があるということです。ただし、不動産を探す側からすれば、全ての不動産情報が掲載されている情報元は必要です。今後、不動産登録先としてのポータルサイトが、不動産流通サービスに大きな役割を果たしていくことは間違いないでしょう。また、不動産を売る側からしても、売ろうとしている不動産に市場価値があるのかどうかをダイレクトに把握できるメリットはあると考えられます。
今後、不動産業界もIT化、情報の一元化を通して熟成していく必要があることを考えると、今回のヤフーとソニー不動産の動きは、業界の今後に一石を投じたことになります。不動産流通業界のますますの発展を、心から祈るばかりです。
(福間 直樹/ファイナンシャルコンサルタント)
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