宿泊させたら法律違反?規制緩和前に「民泊」業者が摘発
京都市で民泊業者が摘発される
先日、京都市のマンションに無許可で中国人観光客などを宿泊させたとして、東京の旅行会社の男ら2人が旅館業法違反の容疑で捜査されているというニュースがありました。記事によれば、5階建てマンション(44室)のうち36室を借り上げ、1回あたり28~73人、延べ約290人の中国人客を有料でそれぞれ1泊させた疑いが持たれているということです。
これはいわゆる「民泊」業者の摘発に関するニュースです。民泊という言葉はまだまだ聞き慣れないかもしれませんが、簡単にいえば、個人宅の宿泊サービスのことです。自分の家に誰かを泊めること自体は大家さんとの賃貸借契約上の違反にならない限りは基本的に自由ですが、有料で宿泊させるとなると旅館業法との関係が問題となってきます。
政府も公式に規制緩和を検討している
旅館業法は、戦後間もないころに制定された法律ですが、要するに有料で人を宿泊させるには、都道府県知事などの許可を必要とし、違反すれば懲役刑もあり得るという法律です。宿泊客の安全を守るため、安全設備や衛生面を自治体がチェックすることに法律的に大きな意味があります。この旅館業法が適用されるのは「営業」の場合、つまり有料で繰り返し人を宿泊させることを商売にする場合ですから、たとえば友人をたまたま家に泊めてお金をとっても旅館業法の違反にはなりません。
さて、この民泊(個人宅の宿泊サービス)ですが、実は政府も公式に規制緩和を検討しています。今年6月に閣議決定した規制改革実施計画では、インターネットを通じて民泊の宿泊者を募集することを規制緩和するかどうか、2016年中に結論を出すとしています。地域活性化として、小規模宿泊業の規制緩和をすることが目的です。
速やかな判断や法整備が求められている
また、既に先立って国家戦略特区の特例を活用し、大阪府では民泊を条件付きで認める通称「民泊条例」が今年10月に議会で可決されました。東京の大田区でも同様の条例が今後、可決される見通しです。背景には、中国などの外国人観光客の急増で宿泊施設が極めて確保しにくく、また価格も高騰している実態があります。
既にインターネット上では、民泊施設を募集し、検索できるサイトが普及して広く利用されていれている現実もあります。宿泊客の安全や旅館業者との関係で営業としての民泊をどう位置付けるのか、どのようなチェックを行うのか、速やかな判断や法整備が求められます。
(永野 海/弁護士)
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