共通番号制度に識者「導入するには第三者機関が必要」

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高木浩光氏(左)と鈴木正朝氏(中)、そして司会の津田大介氏(右)

 「共通」番号制度とは何か。国民総背番号制との違いは。その問題点とは――。2011年6月13日のニコニコ生放送「一番いいのを頼むための共通番号制度徹底解説~そんな共通番号制度で大丈夫か?~」では、いわゆる共通番号制度のメリットと問題点について議論された。

 共通番号制度により社会保障給付など行政の効率化を進められるとし、政府は6月中に法案の大綱をまとめ、秋には関連法案を国会に提出する方針だという。こうした動きに新潟大学法科大学院教授の鈴木正朝氏は、共通番号制度導入には国民のプライバシー権の保護を図ることが重要とし、そのために「機能する第三者機関」の設置が必要であると語った。

■「共通番号」制度ではなく「番号」制度
 
 運転免許証や保険証、年金手帳などには、すでに固有の番号がそれぞれ書かれており、所持者にはすでに番号が振られているといえる。共通番号制度はこれらの番号をまとめようとするものだが、プライバシー権保護の観点から批判があった国民総背番号制と混同されがちである。産業技術総合研究所セキュリティ研究センター主任研究員の高木浩光氏は、内閣官房の公式サイトを紹介し、重要なポイントとして、

「(内閣官房のサイトには)『共通番号制度』という言葉はもう書いていない。今は(単に)『番号制度』と言っている」

ことを挙げ、「番号は『共通』でなくてもいい」と話す。

 たとえば納税や年金などの情報は現在、監督する行政機関がそれぞれ保有、管理しているが、技術的に情報同士が連携するシステムが出来れば、情報とリンクする番号は必ずしも「共通」でなくともよい。高木氏によると、政府はすでにそうしたシステムである「情報連携基盤」を検討しているという。

■情報を管理する第三者機関が必要

 だが、プライバシー権の課題は残る。「番号」を取り扱う組織は、厚生労働省(社会保障)、国税庁(税)、総務省(住基ネット)、地方自治体と「横断的」で、銀行や証券会社といった一部の民間機関も番号を取り扱う可能性があるからだ。

 鈴木氏は「これらの人たちが、すべて濫用的な行為を行うリスクはある」とした上で、「情報連携基盤」を包括し、制度の事前に技術的・法的にチェックし、事後的にも監査をする「第三者機関」が必要であると説いた。鈴木氏は、この「第三者機関」が「(原子力・安全)保安院のように(同一組織に)アクセルとブレーキを一緒につけるようなことをしない」で作られるべきとし、そこには誇りを持って仕事ができる人を集める必要があると語った。

(山下真史)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]「第三者機関」の詳細から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv52657367?ref=news#0:35:30

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