管理不能?世代間闘争で生まれる「マンション廃棄物」
マンションは「管理を買え」から「集会を見ろ?」
その昔、「マンションは管理を買え」という言葉がありました。しかし、現在は管理がしっかりしていても難しい場面に立たされることがあります。「反対多数、第1号議案、オートロックと防犯カメラと宅配ボックスの設置は否決されました」などと読み上げる声も、紙を持つ手も震えます。とあるマンションの202号室、住人が集まる熱気の中での集会、子供連れの父親はそのまま置物のように力なく座っています。反対に窓際で静かに大きくうなずく高齢者もいます。
ここは、新幹線の駅から徒歩10分、ハイキングコースにもなっている自然豊かな丘の中ほどにあるマンションです。昭和40年台に分譲され、空きが出るたびに中古物件として売買されました。現在では、3DK1戸あたり500万円、分譲時の5分の1の値段。電車も6線使える便利な立地のお手頃マンションには、次第に20代、30代の住人が増えてきました。
マンション運営には「集会の決議」が必要
マンションを購入すれば管理費や修繕積立金の支払いは義務となり、反対にその面積と戸数に応じた集会の議決権が与えられます。各所有者はその議決権を行使することで、マンションの運営を自主的に行うことができます。上の例のような共用部分の変更には、集会で過半数の賛成が必要です。
その詳細は、建物の区分所有等に関する法律に定められています。一人でもできる共用部分の保存行為(=修理)もありますが、通常は過半数で決まります。そして、規約の改正には4分の3、最後に建て替え決議には5分の4もの賛成が必要です。これらをもとに、管理会社のアドバイスをもらいながら、民主的なプロセスで自分たちのマンションを維持していくことが期待されているのです。
マンション内で生じる世代の分裂
しかし、上記の例で出したように、分譲時から住んでいる人たちと、手頃な価格で購入した若い世代の2つに世代が分かれているマンションが増えているようです。若い世代の人たちはマンションの資産価値を維持し、防犯を含め安全で便利なマンションとなるよう行動していきます。収入はそれなりですが、若いのでエネルギーもあふれています。
一方、分譲時から住んでいる人たちは、引退して70歳を超えました。既に年金暮らし、明鏡止水のごとく穏やかな余生を暮らしたいと思っています。今までの生活習慣を変えるようなオートロックや宅配ボックスは不要で、逆に使い方に戸惑うばかり。正直、余計なことをしてほしくありません。分析・判断能力も低下し、痴呆やうつ症状から状況がわからないまま反対する人までいます。
闘争の先にあるものとは
結果、このマンションは若い世代にも、高齢者にも不満のある建物になってしまいます。住んでいる以上、どちらも生存をかけています。所詮、小さなコップの中の争いですが、自己変革もできず、競争力は落ちていくばかり。勝ちも負けもなく、闘争の先に待っているのはコンクリートでできた共有の「金食い遺跡」でしかありません。
今回、世代の分裂を例にしましたが、日本人と外国人、上層階と下層階、セレブと平民の分裂もあり得ます。皆さんがお住まいの建物の40年後は、果たしてどうなっているでしょうか?
(中山 聡/一級建築士・不動産鑑定士)
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