劣悪な環境下に置かれる外国人技能実習生の厳しい現実
外国人技能実習生の問題が多発
日本国籍を持たない外国人が、日本で適法に在留するためには「在留資格」が必要です。「在留資格」は現在27種類あり、そのうちの一つが「技能実習」です。「技能実習」とは、途上国の青壮年が日本の産業上・職業上の技術等を修得し、自国の発展に寄与することを目的とした「在留資格」です。技能実習生の多くは日本に大きな夢と希望を抱いて来日しますが、最近では「失踪」などの問題が多発しています。
また、来日してから日本の現実に絶望し、精神疾患を患ってしまうことも少なくありません。技能実習生が本来の目的を果たせない原因は何なのでしょうか。今回は、日本の制度に焦点を当てて考えてみます。
一部の外国人は劣悪な労働・生活環境に身を置いている
技能実習生を受け入れている事業は、主に第一次産業である農林水産業です。労働基準法では、労働者を一人でも雇えば第一次産業にも必然的に適用になります。しかし、第一次産業の事業主の大半が「第一次産業には労働基準法は関係ない」と勝手に思い込んでいます。結果、違法な長時間労働を強制したり、最低賃金を下回るような賃金しか支払わなかったりと、技能実習生を劣悪な労働条件で雇用することが多々行われています。
地域に設置されている外国人相談センターには、技能実習生から「与えられる住居は、雨風しのぐのが精いっぱいのバラック小屋」「食事も満足に与えてもらえない」といった相談も寄せられています。さらには、失踪等の防止を理由に、技能実習生からパスポートや在留カードを雇用主が取り上げる、賃金からの不当な控除といったことも行われているようです。
今後「技能実習制度」には「介護」が加わる予定
現在の技能実習制度では、「雇用契約」の締結が義務付けられ、技能実習生も労働基準法や最低賃金法の保護を受けられることになっています。技能実習生は建設業にも多く見かけられますが、建設業では比較的うまく機能しています。建設業の事業主は、労働関連法規に関する意識もしっかりしていることから、農林水産業の事業主への労働関連法規の周知徹底が望まれます。
なお、技能実習生の受け入れは、企業単独で行う場合と商工会、同業者組合、中小企業団体等が監理団体となって、各企業に配置する場合があります。監理団体には、受け入れ後も技能実習が適正に行われているかどうかを監督する義務がありますが、第一次産業では、放置されているのが現状です。技能実習生に対する非人道的な扱いが行われていたとしても、それを是正する役割を監理団体は果たせていません。
今後「技能実習制度」には、「介護」が加わる予定です。労働力人口の減少が予測される日本にとって、「介護」は外国人労働者に頼らなければ成り立たない産業の一つです。「技能実習制度」を有効に活用するためには、「技能実習生も、日本人と同様に法律が適用される正当な労働者である」「労働者を一人でも雇っていれば、法律が適用され、事業主は法律を遵守しなければいけない」という意識を事業主が持つことが重要課題といえるでしょう。
(小倉 越子/社会保険労務士)
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