“押し紙裁判”敗訴の黒薮氏「読売新聞は紙面で論争を」
ジャーナリストの黒薮哲哉氏が、2009年6月11日号の『週刊新潮』に書いた「『新聞業界』最大のタブー『押し紙』を斬る!」という記事に対し、読売新聞東京・大阪・西部の3本社が「名誉を傷つけられた」として、新潮社と黒薮氏に5500万円の損害賠償などを求めた訴訟、いわゆる「押し紙裁判」の判決が2011年5月26日、東京地裁であった。村上正敏裁判長は「調査データの客観的裏付けがなく、『押し紙』の存在を認めることはできない」とし、新潮社側に385万円の支払いを命じた。敗訴した黒薮氏は同日に記者会見し、「読売側の訴えが一方的によく認められて、こちらは全く認められなかった」と述べ、判決を不服として控訴することを明言。また読売新聞に対しては、司法の場ではなく「紙面で論争をしたかった」と意見を述べた。
黒薮氏によると、「押し紙」とは新聞社が販売店に対し、実売部数を上回る新聞を押し付け、販売実績のかさ上げをはかろうとすること。「押し」つけられた新聞「紙」ということで、「押し紙」と呼ばれているという。販売店側は、主な収入源である折り込みチラシの部数を水増しするか、新聞社からの補助金を受け取ることで採算をとる。新聞社側がそこまでする理由は、販売実績をかさ上げすることで、紙面広告の価値を上げる必要があるためだ、と黒藪氏は説明する。
黒薮氏は記者会見で、「新聞の広告主は部数の水増しによって迷惑する。こういう詐欺的な行為に対して、仮に警察や公正取引委員会が『メスを入れるぞ』と言えば、新聞は政府の不正や弱点も書けなくなる」と話し、押し紙の存在が新聞の言論を歪めている可能性があると指摘した。
また黒薮氏は、「読売新聞は言論の問題について司法に判断を求めた。こういう態度が、世界を代表するような新聞社のすることなのかという疑いを何度も持ち、不愉快だった」と述べ、紙面上での論争を希望。新聞社側が問題を司法の場に乗せていくことに対して、「こちらの土俵はメディアだから、どんどん載せていく。今後も裁判資料などはインターネットを通じて公表していく」と話した。
なお判決について、読売新聞東京本社の広報部はYOMIURI ONLINE記事内で「根拠のない記事で当社の名誉を大きく傷つけたことを認めており、妥当な判決だと考えます」とコメントを掲載。一方の週刊新潮編集部は「押し紙の存在が認められなかったのは極めて遺憾。判決には納得できないので控訴する」とコメントを出している。
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]黒薮氏の会見冒頭から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv50682019?ref=news
(丸山紀一朗)
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