漫画家・佐藤秀峰日記「不調……」

 佐藤秀峰さんのブログ

今回は漫画家・佐藤秀峰さんのブログからご寄稿いただきました(編集部注:2月23日に書かれた日記です)。

漫画家・佐藤秀峰日記「不調……」
何だかねー……、最近、漫画を描くのがツライです。

締め切りはどんどんやってくるし、来週から新連載も始まるというのに、やる気が全然起きません。頑張ろーって、思うんですけど、漫画を描くのが楽しくないんですよー……。

これまでも、「どうしたら漫画を楽しく描き続けられるか?」ということを、僕は考え続けてきて、その結果、今のスタイルに行き着きました。大手出版社の雑誌で連載して、偉そうにしている編集者と付き合っていくのが嫌だったし、社会性や公共性を過剰に求められるのが嫌でした。

だったら、漫画は1人でも描けるので、活動規模を縮小して、自分の裁量で出来る範囲のことをやっていきたいと思って、サイトも作りました。そして、それをお金につなげる方法も、頭が悪いなりにあれこれ考えて、実践してきましたよ。多分、そうしなければ、僕は漫画を嫌いになって、とっくに描けなくなっていたと思います。

漫画家になろうと思った頃の自分を思い返すと、漫画家というのは落ちこぼれがなるもので、それが社会的なステータスになるとは思っていなかったし、もちろん、漫画家に憧れてはいたんだけど、自由に生きたくて、好きなことを突き詰めたくて、それを目指していました。

僕にとって、漫画というのは個人芸術なんです。

映画やテレビと違い、個人という最小単位で作った作品が、誰かの心に突き刺さる可能性を持ったものなんです。もちろん、集団で創作することが前提になった漫画があってもいいとは思いますが、僕は、仮に編集者や作画スタッフがいなくても、多分、漫画を描くでしょう。

誰か一人だけ読者がいてくれればね。

でも、それでは規模が小さいし、生産性も限られ、商業としても成立しないから、作ったり売るためのサポートがいろいろと必要で、そうすると、周囲に人が増えて、個人という出発点は遠くへ行ってしまい、居場所を見失ってしまうって言うんですかねー……。

ここ数年の自分の活動は、漫画を個人の手に取り返すためにあったと思っています。

漫画は、僕の表現で、誰かの表現じゃ意味がないんです。売れるかどうかは、経営者視点では重要だけど、表現者としてはどうでもいいことです。僕は誰にも描けない、僕だけの漫画を描きたいです。それができれば、何もいらない、と思う時もあるし、やっぱり、結果を出さないと、「毎月給料を支払う」という僕とスタッフの間の約束が守れなくなってしまいます。

「自己表現と同時に、商業として成立させる」というとカッコいいのですが、結局、中途半端です。

でね、漫画を個人の手に取り返すために、たくさんの人の協力を求めたり、実際にお世話になったりして、僕は何だか自己矛盾で倒れそうですよ。いろんな人に迷惑をかけながら、それでも、僕は僕の漫画を描きたいです。

だけど、それはすごく難しいことなんだな、と思います。

まぁ……、頑張るんですけどね。

執筆: この記事は漫画家・佐藤秀峰さんのブログからご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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