書店員が選んだ「この作品のここに注目!「○○」がすごい3冊」(2)

access_time create folderエンタメ
書店員が選んだ「この作品のここに注目!「○○」がすごい3冊」(2)

世の中にはあんな本やこんな本、いろんな本がある。そのテーマも十人十色。「感動したい本が読みたい!」「思いっきり怖い本を味わいたい」と思っても、 どんな本を選べばいいのか分からない! とお悩みの方も多いはずでは?
そんなときにあなたの味方になるのが書店員さんたちだ。本のコンシェルジュとしてあなたを本の世界に誘ってくれる書店員さんたち。
彼らに、テーマごとにお勧めしたい本を3冊答えてもらうのが、この「わたしの3冊」だ。

今月のテーマは「この作品のここに注目! 「○○」がすごい3冊」。
「○○」は書店員の方に設定していただき、「これはすごい」と思う3冊をピックアップしていただいた。今回の選定者はうさぎや自治医大店の田崎達也さん。「○○」に当てはめた言葉は「文章の濃密さ」だ!

 ◇     ◇     ◇

1)『死霊の恋・ポンペイ夜話 他三篇』

書店員が選んだ「この作品のここに注目!「○○」がすごい3冊」(2)

とても甘美な濃密さです。
この著者、テオフィル・ゴーティエの小説全般に言えることなのですが、登場するヒロインの容姿に関する描写が非常に特徴的です。眉毛や唇といった細かい部位をひとつひとつ、色や形について比喩を交えながら形容しており、ひとつの頁をまるごと使ってしまうことも多々あるほどです。
そんな、そこまで言うか!とさえ思わせる形容詞の嵐の中を進んでいくと、抜けた頃には頭の中にとんでもない美人が現れているはず。その姿こそがゴーティエが一生をかけてやろうとしていたことなのだろうなァと思います。
ゴーティエ作品には芥川龍之介、小泉八雲、ボードレールと著名な文筆家にもファンが多いのですが、想像力が優れた彼らにとってゴーティエの文章は相当な愉しみになったことでしょう。
現代ではどうでしょうか? 私は古書まで漁りました。

『死霊の恋・ポンペイ夜話 他三篇』
著者:ゴーチエ、翻訳:田辺貞之助
出版社:岩波書店
定価(税込み):648円

2)『未来のイヴ』

書店員が選んだ「この作品のここに注目!「○○」がすごい3冊」(2)

理屈がとても濃密な作品です。
想像上でしか存在し得ないものを特殊な理論を元に本当にあるかのように語っていくのがSF作品の特徴であり、面白い部分のひとつだと思います。
本作においては、アンドロイドの”ハダリー”がどのように造られ、そしてどのように人間と変わらず動くことが出来るのかという説明が、かなりの大部分を占めています。
1886年の作品ですのでアンドロイドも蓄音機や磁石、水銀、バラの油など当時の技術で作られているのですが、作中人物の電気学者が理論を語る様子がただの文面からさえ感じ取れるほどに自身満々で、本当に出来るんじゃないかと・・・よく考えれば分かることなのに、つい思わされてしまいます。まるで通販番組を見ている気分です。
そうそう、話の筋ですが、
「見た目は美しいが、性格が最悪な女性を好きになったがどうしたら良い?」
「外見を似せたアンドロイドを造っちゃいましょう!」
と1800年代のフランス小説らしい、美と恋をテーマにしながらも少し風変わりなものとなっています。素敵です。

『未来のイヴ』
著者:ヴィリエ・ド・リラダン、翻訳:斎藤磯雄
出版社:東京創元社
定価(税込み):1620円

3)『黒死館殺人事件』

書店員が選んだ「この作品のここに注目!「○○」がすごい3冊」(2)

推理がとんでもなく濃密です。
探偵小説でありながら、探偵の推理を理解することが非常に困難なために奇書と呼ばれています。
とりあえずパラパラめくってみて下さい。それだけで何だか解らないが凄いということは分かると思います。
探偵 法水麟太郎の推理は他の探偵たちと異なり、知識のフィールドが異様なまでに一貫しません。v 近代では探偵小説も増えてきてオカルトや数学で推理をする探偵もいるけども、法水はそれに留まりません。
第一に古書について、それに化学、音響学、言語学、悪魔学、占星術、数学、暗号学、物理学・・・。
彼は多種多様な知識を元に事件の真相を解き明かそうとするが、何故そうなるのかまでは説明がないのです。
読者は置いてけぼりになりながらも、その異形の衒学推理の迫力に圧倒され、ついつい話に付き合ってしまいます。
この探偵、最良でも最善でもありませんが、知識量に関しては探偵の中でも最強なのではないかと思えます。

昭和10年に甲賀三郎が江戸川乱歩の手腕を「一流の粘り気のある名文」と、
一方で本書の著者 小栗虫太郎を「晦渋と思われる一流の迫力」と語ったあたり、この物語に対する印象は古今で一定なのでしょう。
そしてきっとこれからも。

『黒死館殺人事件』
著者:小栗虫太郎
出版社:河出書房新社
定価(税込み):972円

 ◇     ◇     ◇

【今回ご協力いただいた書店】
■うさぎや自治医大店

書店員が選んだ「この作品のここに注目!「○○」がすごい3冊」(2)

雑誌を定期購読でご購入頂きますと、お会計の際に該当雑誌のTポイントを5倍でお付けいたします!
他にうさぎや自治医大店ではお得なキャンペーン、少し変わったフェアなどをこまめに実施しています。
県内では大きめの店舗ですので、ゆったり座って本を読むスペースなどもご用意しております。
是非ともお近くにお越しの際にはお立ち寄り下さいませ。
お客様に楽しんで頂ける店舗になれるよう、スタッフ一同頑張って参ります。

■うさぎや自治医大店ブログ
http://usagiyajichiidaiten.blog.fc2.com/

住所:栃木県下野市医大前3-1-1
TEL:0285-44-7637
FAX:0285-44-7648

■アクセス
JR東北本線 自治医大駅下車すぐ

■営業時間
10:00〜24:00


(新刊JP)記事関連リンク
書店員が選んだ「この作品のここに注目!「○○」がすごい3冊」(1)
全国書店にゴールデンボンバーが登場!? 話題のフェアに迫った
書店での滞在時間はいつもどれくらい?

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. 書店員が選んだ「この作品のここに注目!「○○」がすごい3冊」(2)
access_time create folderエンタメ

新刊JP

ウェブサイト: http://www.sinkan.jp/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。