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「困った時は建築家に相談」とは? 金沢21世紀美術館『3.11以後の建築』を見てきた

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2004年10月にオープンして以来、SANAA(妹島和世氏・西沢立衛氏)によるヴェネツィア・ビエンナーレ第9回国際建築展の金獅子賞を受賞したガラス張りの円形の建物が観光名所となっている金沢21世紀美術館。開館10周年を記念した特別展『3.11以後の建築』を2015年5月10日まで開催しており、2011年3月11日の東日本大震災が建築に与えた影響や、建築家の役割について問いなおす網羅的な展示となっています。ここではその一部をレポートでお届けします。

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フランス・パリのポンピドゥー・センターとの共同主催で、パリ国立近代美術館副館長のフレデリック・ミゲルー氏を総合プロデューサーに迎えて、第二次世界大戦後の日本建築を通して観ることができる『ジャパン・アーキテクツ 1945-2010』展と対となり、過去から現在、未来への「建築」のあり方を網羅的に把握できた金沢21世紀美術館の10周年記念特別展。残念ながら『ジャパン・アーキテクツ 1945-2010』展は2015年3月15日で終了していますが、『3.11以後の建築』展では日本の建築家による現在進行形の取り組みを見て取ることができます。

開放的な雰囲気の館内。訪れた日は小雨が降る午前中で「いつもの日曜日に比べれば来場者は少ない方」(広報)といいますが、さまざまな世代の人が来館しており、外国人観光客の姿も数多く見かけました。

『3.11以後の建築』展は、“21美”の常設作品の中でも人気の高いレアンドロ・エルリッヒ氏の『スイミング・プール』の右手に見ながら、進んでいくことになります。

伊東豊雄氏をはじめとする5人の建築家“帰心の会”が提唱した『みんなの家』。仮設住宅内に集会所を作るという試み。「復興計画から建築家が疎外されたことが始まり」という伊東氏は、「避難所の方がまだ仮設住宅よりもいい」という被災者の声から、自然に人が集まるような集会所を設計したといいます。

ポンピドゥー・センター・メスなどを手がけている坂茂氏による、設営が容易でプライバシーを守る仕切りと、2011年2月22日に発生したニュージーランド地震で倒壊したクライストチャーチの大聖堂を仮設再建した模型やプロセスが合わせて展示されていました。坂氏は災害にあった街にとっての「モニュメント」の必要性について言及。人の集まる場所、という観点では『みんなの家』と通じるところがあります。

中庭には、はりゅうウッドスタジオによる『縦ログ工法パネル』が漆黒に塗られて屹立しています。無垢の木材だけで、断熱や内装、外装、構造材を兼ねるというログハウスと同じような構造になっており、パネル化したものを現場で組み立てることを想定。作業の簡略化を図っています。

まちづくりや建物の設計の時点で、使い手の意見を反映する取り組みも、ここ数年で顕在化してきています。
工藤和美氏と藤村龍至氏、東洋大学ソーシャルデザインスタジオは、鶴ヶ島太陽光発電所・環境教育施設を設計するプロセスでパブリック・ミーティングを実施。学生がさまざまなデザインの模型を出し、それに投票を繰り返して候補を絞り込んでいくという”選挙”のような収束を行っています。

最終案では、設備の共有や部屋のシェアなどで床面積を圧縮。その設計もさることながら、これまで出た案を取り入れながら、建物に求められる“要求”を民主的に減らしていくという、意思決定のあり方が注目点といえるでしょう。

大阪で活動し、1950~70年代に建築されたビルを愛するBMC(ビルマニアカフェ)が、金沢のまちビルを調査した結果も展示。中でも1965年に建てられた北国ビルディングは、外壁に特注の有田焼が張られているのが特徴的。

1971年に建てられた青木クッキングスクールは、設計図や新聞広告のような貴重な資料も。
BMCがピックアップしたまちビルの中には「すでに取り壊しが決まっているところもあります」(広報)というので、ミッシングリンクになりがちな高度成長期時代の建築物の再評価が図られたというところも重要なのではないでしょうか。

会期前、そして会期中には、さまざまなワークショップやギャラリートークが行われたという『3.11以後の建築』展。
西村浩氏が手がけた佐賀市の「わいわい!!コンテナプロジェクト」では、駐車場や遊休地を“原っぱ”に変えるという試みですが、“21美”のフロアでは、ワークショップの参加者が円形の芝生を好きな場所に置いていったままとなっていました。芝生が置かれるだけで”美術館”とは別の空間のように感じられるのが不思議!

また、金沢の沿岸部の大野地区で、日建設計ボランティア部の指導のより住民が津波時の避難の道と時間を示す「逃げ地図」も行なわれ、「金沢+建築+災害対策」といった展示に、多くの人が足を止めていました。

ゲストキュレーターに、建築批評家の五十嵐太郎氏とコミュニティデザイナーの山崎亮氏を迎えた『3.11以後の建築』展。彼らの対談では、建築家が持つプロデュース力や発想力、美しく見せる力を「社会も生活者も、もっと利用した方がいい」(五十嵐氏)と述べ、一見関係がないようなことでも「何かに困ったらまずは建築家に相談だ、と考えてみる」(山崎氏)を勧めています。
ちょっと家を建てること以外では縁遠い存在に感じられがちな建築家が、まちづくりや地域資源の見直し、住民のコミュニケーションのあり方まで「デザイン」するという成果が、見て回ると詳らかになるという試みは、ひとまず成功といっていいのではないでしょうか。

『3.11以後の建築』展は2015年5月10日まで。「特に建築を勉強しているという人が多く訪れています」(広報)といいますが、まったく知識がなかったとしても、資料や説明が用意されていて、十分に楽しむことができます。

筆者が訪れた時は葉桜がキレイだった“21美”。自然に囲まれた建物やオブジェを茶室“松涛庵”の側から眺めて時間を過ごす、というのもおススメです。

金沢21世紀美術館 『3.11以後の建築』

期間:2014年11月1日(土)~2015年5月10日(日)
   10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休場日:月曜日、5月7日
料金:
一般   1000円(前売・団体800円)
大学生  800円(前売・団体600円)
小中高生 400円(前売・団体300円)
65歳以上 800円

金沢21世紀美術館 オフィシャルサイト
https://www.kanazawa21.jp [リンク]

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記者:

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

ウェブサイト: http://yaplog.jp/parsleymood/

TwitterID: parsleymood

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