あの人の影響を受けた本を聞こう! ジャズシンガー・森岡“マレーネ”典子さん

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あの人の影響を受けた本を聞こう! ジャズシンガー・森岡“マレーネ”典子さん

 一線で活躍している人には、その礎となった本がある。では、それは一体どんな本なのでしょうか? さまざまなジャンルで活動をしている人々に「影響を受けた3冊」について語ってもらう不定期の新連載企画です。

 今回は1月11日に2枚目のアルバム『セパージュ』をリリースした注目のジャズシンガー、森岡“マレーネ”典子さんに登場していただきました。
 森岡さんは、東京を拠点に名古屋や福島、栃木などでもライブ活動を行っています。4年ぶりとなる新作は大坂昌彦さん(ds)がアレンジを担当し、「セパージュ=ブドウのブレンド配合比率」の意味通り、奥深い味わいが広がるアルバムに仕上がっています。
 新刊JPでは、そんな森岡さんに「影響を受けた3冊」と、読書にまつわるお話をうかがいました。
(新刊JP編集部)

  ◇    ◇    ◇

――森岡さんがこれまでの人生の中で影響を受けた3冊をご紹介いただけますか?

森岡:そうですね…。まずは、ギ・ド・モーパッサンの『女の一生』(新潮社刊)です。
20代前半の頃に、人から勧められて読んだのですが、当時は年齢的に、恋愛や結婚に関してまだまだ夢や理想を思い描いている真っ只中でした。でも、この本に出会って、未来に対して少し冷静になったというか、理想と現実について、立ち止まって考えさせられた1冊でした。
今でこそ女性が自らのキャリアを追い求め、夢を実現出来る時代になりましたが、自分の親の世代、祖父母の世代を考えたら、女性は生まれた家系や環境に抗えず、受け身な一生を過ごすのが当たり前。嫁いだ先のしきたりに従い、夫・子どもの為に自分の人生を捧げて一生を終えていく。そんな状況に散々傷つき、やがて虚しさや諦め・悟りのような境地に行き着く。20代前半の自分にはかなり重い内容でした。結果的に私はキャリアを追求する道を選びましたが、今の立場で改めて読んでみたい気がします。

――では2冊目はいかがでしょうか。

森岡:野村克也さんの『エースの品格〜一流と二流の違いとは〜』(小学館刊)です。野村監督の執筆された本は何冊も持っているので、「この本1冊」と言うより、野村氏の数々の著書から影響を受けました。野村氏は著書が多く、書店でまだ読んだことのない物を見つけるとつい買ってしまうんです。プロ野球の選手として、そして監督としての長年の経験の中から得た、勝負の極意や選手の育て方、選手1人1人の個性の見極め、そして敵を徹底的に分析し、蓄積されたデータに基づいて相手を攻略するという考え方。野村氏の緻密で鋭い分析力は、野球のみならず、様々な業界でも通用するヒントに満ち溢れていると 思いますし、とても参考になります。
ちなみに私の座右の銘は、野村氏の著書の中で出てきた言葉「念ずれば花開く」です。自分の夢をひたすら心に念じて、それに向かってたゆまぬ努力をすれば、いつかきっと花開く時が来る。長嶋茂雄氏のように常に脚光を浴びる花形スター選手ではなかったけれど、地道な努力で野球界に足跡を残した野村氏らしい言葉だと思います。

――最後になります、3冊目はいかがでしょうか。

森岡:ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』(早川書房刊)です。この本に出会ったのは、確か20歳前後だったでしょうか。元々、心理カウンセラーなど、カウンセリング的なものに興味があって、精神分析に関する本や心療内科系の本を読むのが好きだったのですが、そんな中で出会った本だったと思います。
私にとって愛読書といっていい本で、今まで何度も読み返しました。今回も紹介するにあたって読み返しましたが、読む度に涙が止まらない、何とも言えず切ないです。実験によって一旦得た高い知能、それによって様々な事を知り、恋をし、沢山の喜びを得ると同時に、知能が低かった時には知らずにいて幸せだった事に気付いてしまい、知らなくて良かった苦しみも味わい……。でもその知能が、獲得した以上のスピードで急速に衰えていく。薬の副作用による凶暴性と闘いながら、自らの知能が衰えていく様を自ら見つめる。あまりに残酷で悲しいストーリーですが、最後に自分と同じ境遇を辿った実験用のネズミの事を案じるくだりには、涙を禁じ得ません。

――普段、森岡さんはどのようなときに本を読んでいるのですか?

森岡:電車での移動時間や、知人のライブに行った時の休憩時間等、日常生活の隙間の時間ですね。あとは休日まとまった時間がある時とか。近頃忙しくてなかなか読書に時間を費やせないですが、子供の頃は本の虫だったので、今でもそれが時折り顔をのぞかせます。

――ジャズシンガーとして2枚目のアルバム『Cepage(セパージュ)』がリリースされますが、どのようなアルバムなのですか?

森岡:「セパージュ」とは元々はワイン用語から来ており、「ワインに用いるブドウの配合割合」という意味を持ちます。そこからイメージを膨らませて、「アルバム参加メンバー5人の個性の融合」というコンセプトを導き出しました。私自身ワインが大好きなので、ニューアルバムには是非ワインにちなんだタイトルを、と考えていました。
本作では、トータルプロデュース及び全曲アレンジを日本のトップジャズドラマーである大坂昌彦さんにお願いしました。バンドも大坂さんのバンドです。ドラムリーダーユニットによるタイトなサウンドとのコラボレーションにより、私の新たな一面が引き出されたと思います。

――アルバムの内容については、どのような仕上がりになっていましたか?

森岡:正統派のヴォーカル・アルバムとしての流れを大事にし、王道を追求しつつも、斬新なアレンジを取り入れ、最新のトレンドを組み込んでいて、アグレッシブな側面も併せ持つ内容となっています。コンテンポラリージャズアレンジの曲にも挑戦するなど、幅広い層にアピールできる、個性ある作品に仕上がりました。洗練・繊細さと骨太・肉厚なサウンド、この2つの相反する特徴が、大坂氏の類い稀なるプロデュース力により、新鮮な調和を生み出しています。

――本作を引っ提げての名阪でのライブツアーも控えているそうですね。

森岡:4月から5月にかけて名古屋や大阪でのライブを予定しています。ぜひお越しいただけたら嬉しいです。

■『Cepage(セパージュ)』

あの人の影響を受けた本を聞こう! ジャズシンガー・森岡“マレーネ”典子さん

森岡“マレーネ”典子/Vocal、大坂昌彦/Drums、今泉正明/Piano、島田剛/Bass、山田拓児/Soprano Sax、Alto Sax、Bass Clarinet
オルタード・レコーズ ALTV-1004
定価:3000円+税 全12曲収録
Amazonなどで発売中

■今後のライブ活動予定(一部)
3月18日(水)銀座シグナス
http://www.jazz-cygnus-aries.co.jp/cygnus/cygnus.html
3月25日(水)六本木オールオブミークラブ
http://www.allofmeclub.com/jp/
4月1日(水)心斎橋アートクラブ(初出演/『Cepage(セパージュ)』発売記念!関西〜中部ツアー)
http://artclub-osaka.com/index.html
4月2日(木)名古屋Swing(『Cepage(セパージュ)』発売記念!関西〜中部ツアー)
http://www.jazzspotswing.sakura.ne.jp/index.html
4月20日(月)東京倶楽部水道橋店
http://www.tokyo-club.com/about/
5月22日(金)名古屋Star eyes(初出演/バースデーライブ)
http://www.stareyes.co.jp/
5月25日(日)吉祥寺サムタイム(初出演/バースデーライブ)
http://www.sometime.co.jp/sometime/index.html
*詳細は森岡さんのオフィシャルサイトにて

■森岡“マレーネ”典子さんプロフィール
2005年頃よりライブ活動を本格化。2010年にファーストアルバム「Sophisticated」をリリース。翌年Jazz Day記念ボーカルコンテスト特別賞受賞。2014年には第7回澤村美司子音楽賞受賞。老舗有名ジャズクラブにレギュラー出演する一方で、一流ホテルでのパーティーやイベントにも精力的に出演。活動は多岐にわたる。
http://norikomorioka.music.coocan.jp/


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