「zipでどうぞ」漫画家自ら作品バラまき翻訳者募集 そしてニコニコ静画が立ち上がった!

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zipでどうぞ

出版不況の中、出版社に頼らずプロ漫画家が作品を発表し続けるためにはどうしたらいいのか考えぬき、試行錯誤を続ける佐藤秀峰さん。取り組んでいるテーマのひとつが”過去作品をどう使っていくか”なのです。先日、それに関連する面白い動きがありましたので、簡単に報告しますぞ。

要約
漫画家の佐藤秀峰さんが原稿zipであげるから誰か勝手に英訳してくれないかと発言

面白そう、と周りの人が興味を示す

ひとまず『ブラックジャックによろしく(ブラよろ)』の第1話をアップ

みんなコメントで翻訳始める

画像共有サイト『ニコニコ静画』の開発者が「英訳しやすいシステムつくる」と発言

名前は「ブラよろ英訳モード」。再来週には形にしたい、とのこと。本気(マジ)である
(今ココ)

ブラよろ第1話より引用

『ブラよろ』の英語版がない
漫画家、佐藤秀峰さんの代表作のひとつである『ブラックジャックによろしく』という作品は既に10ヶ国語に翻訳され、海外で販売されたそうなんですが、なぜか英語版がない。これは不思議なんですが、ホントにないそうです。

だからかどうかわからないですが、作者が以下のような発言をTwitterでおこないました。

「zipで漫画のオリジナルデータあげるので、誰か勝手に英訳してくれないかな?」
2010年10月26日 21時09分

まず、作者自身がzipで作品をあげる、と言ってます。これどういうこと? 本人にきいてみると、もともと無料公開しているものだから好きにしていただいて構わない、とのこと。確かに『ブラックジャックによろしく』という作品は『漫画onWeb』という、作者自身が運営するサイトで全巻無料公開されている。でもそれはそれ、作者自身が集客のために無料公開しているわけで、それ以外のことに使われては困るのではないだろうか。しかし本人は商売にするんだったら取り分は欲しいというのを前提にしつつも、「犯罪や詐欺に使うのでなければ、なんでもどうぞ」とのこと。さらに、二次創作や作品の改変までやってよいとのこと。

上記の作者のツイートは瞬く間に拡がり、さてどうやって作業を進めるかという話に。zipをそのまま共有するというアイデアもあったけど、結局TwitPicという画像共有サイトに原稿画像をアップロードしてそのコメント欄で翻訳を進めることに。またニコニコ動画内の画像共有サービス『ニコニコ静画』にも画像アップロードをして、コメントで翻訳してくれる人を募集することになった。TwitPicではいい感じのペースで翻訳が進みはじめた。

ニコニコ静画

ニコニコ静画の開発者が立ち上がった!
そうこうしてるうちに『ニコニコ静画』の担当者さんからこのようなツイートが。

—–
ぶっちゃけニコニコ静画は共同英訳で使いやすいサイトではないので、この用途で使いやすくしようと思うのですが、議論の対象を明確にするために漫画をコマ単位でアップするのはどうでしょうか?OK頂ければその方向で機能改修を進めたく思います
10月27日21時27分

コメントの制限はこちらでも問題として話題に出てました。なんとか対応を考え中です。「ブラよろ英訳モード」みたいなものを作ろうかと
10月27日22時20分
—–

”ブラよろ英訳モード”!? マジかよ!……。なんかすごいことになってきた。『ニコニコ静画』というサイトそのものが全面バックアップして、この英訳プロジェクトを応援しよう、という機運が高まりつつあるようなのだ。

『ブラよろ』作者の佐藤さんにきいてみたところ、原稿データを分割してコマごとに切り出すことに関しては問題ないとのこと。ちなみに第1話は作者自身がコマごとに分割した画像ファイルがあるので、それを提供できる、とまで。以降の原稿データに関しても順次『ニコニコ静画』へ提供されることに。あとはどんな便利な機能が『ニコニコ静画』に追加されるのかという点だけど、まだ明かされないものの、翌日のニコニコニュースでの記事でもかなりな本気度で動いている様子が伺えました。

「ブラックジャックによろしく」×「ニコニコ静画」 みんなで英訳化プロジェクト始動
http://news.nicovideo.jp/watch/nw1253

上記のニュースによれば『ニコニコ静画』の中の人は
—–
「本気です。ニコニコ静画は本プロジェクトに協力を惜しまない。機能改修の目途も立てているので問題ありません。再来週までには形にしたい。現状の静画がプロジェクトに適した形にはなっていないため、翻訳を行う人に使いやすい形、また訳されたマンガを見る外国の方向けに、機能改修を現在考えています」
—–(上記ニコニコニュース記事より引用)

と発言したとのこと。

思わず「本業は大丈夫なんですか」と声をかけたくなるほどの話の発展ぶり。英訳プロジェクトを進めるにあたってのいくつかの課題、例えばどうやって継続的に参加してもらうか、コマ分割作業は誰がやるのか、複数の訳があった場合どれを採用するのか、できあがった英語版の作品の扱いはどうなるのか、などなどまだモヤモヤとした部分がある今回の話だが、『ニコニコ静画』が再来週なんらかの回答を出してくれるのをきっかけに話が進むに違いない。引き続き動向に注目したい。

佐藤秀峰さん

……今回の英訳プロジェクトに関して、作者の佐藤秀峰さんに動画インタビューをおこないましたので、興味のある方はご覧ください。脱線話もあります。ちょっとマイクの設定が悪くて、佐藤さんの声が小さめなので、会話の部分はボリューム大きめでお願いします。そうするとインタビュアー(私)の声が大きすぎますが、そこは我慢してください。本当にごめんなさい。動画は二つにわかれています。それぞれ別の内容ですが、最初の動画だけで概要はつかめます。もっと濃い話を観たい人は【さらに】の動画もご覧ください。

取材動画(ニコニコ動画)
「ブラよろ」英訳「天下一翻訳会!」について作者本人に直撃したよ!
http://www.nicovideo.jp/watch/sm12581103

【さらに】「ブラよろ」英訳「天下一翻訳会!」について作者本人に直撃
http://www.nicovideo.jp/watch/sm12581244

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第4回:電子出版はマンガの救世主になるのか?
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深水英一郎(ふかみん)

深水英一郎(ふかみん)

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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