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ヤマト運輸「メール便」を廃止に追い込んだ郵便法とは

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メール便の廃止、利用者が郵便法違反に問われるリスクがあるため

国内流通最大手のヤマト運輸が、3月31日受付分をもってメール便を廃止すると発表しました。メール便は、全国一律料金で送付先の郵便受けなどに荷物を配達するサービスで、低額な価格と利便性から多く利用されており、突然の廃止に戸惑っている人や企業も多いでしょう。

ヤマト運輸は、メール便の廃止の理由について「利用者が知らないうちに信書を送ってしまい、郵便法違反に問われるリスクがあるため」としています。原因とされる郵便法とは,どのような内容なのでしょうか。

日本郵便株式会社以外の者による「他人の信書」送達は禁止

郵便法は、昭和22年に制定された法律で、その目的として「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによつて、公共の福祉を増進すること」を掲げています(郵便法1条)。具体的には、郵便の役務の内容や取り扱いについての種々の規則を定めると共に、違反した場合の罰則も設けています。

今回、メール便との関係で問題となったのは同法4条2項です。同条では、日本郵便株式会社以外の者が「他人の信書」の送達を行うことを禁止することを定めており、違反した場合は同法76条により「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」という刑罰が定められています。ここで「信書」についても定義があり、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」が信書に当たります。

信書の配達を日本郵便の独占とすることには一定の合理性はある

では、なぜ郵便法はこのような罰則を伴う独占を認めているのでしょうか。それは、郵便は重要な通信インフラであり公共性が極めて高いことから、例えば原則として日本全国に一律料金で届けること、利用の公平を確保することなどの条件が課され、また、憲法が保障する通信の秘密に基づき、信書の内容の秘密が厳重に確保されているなど、郵便事業者に対し厳しい規制がかけられているためです。

このような規制を守り、かつ郵便法の目的である「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供する」ことを実現しするために独占が認められているのです(一部例外はあります)。このような目的からは、信書の配達を日本郵便の独占とすることも、一定の合理性はあるといえます。

「信書の定義が曖昧である」という問題は残る

ただし、「信書の定義が曖昧である」という問題は残ります。ヤマト運輸の報道発表でも、郵便法により規制される信書と、規制を受けない「書籍や書類」との区別が曖昧で、利用者が明確な区別ができず、郵便法違反で検挙されるおそれがあるとしており、報道でも2009年7月以降で計8件、郵便法違反容疑で書類送検または警察から事情聴取されたケースがあるとされています。

また、そもそも郵便事業を独占させるべきか、という点も、いずれは問題になるでしょう。しかし、インターネットや携帯電話などの通信手段が発達した現在においても、郵便は重要な通信手段です。特に離島・山間部や高齢者など、郵便が主な通信手段である人がいる限り、郵便法の目的である「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供する」ことは求め続けられるのではないかと思います。

(半田 望/弁護士)

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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