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緊急生中継! 表紙絵のない『新ブラックジャックによろしく』最終巻、作者による幻のカバーイラスト描きおろしライブ

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表紙イラストのない『新ブラックジャックによろしく最終巻』

人気漫画『新ブラックジャックによろしく』の最終巻が9月30日に発売された。医療の現場を舞台とし、社会的にもさまざまな反響をまきおこしたこの物語もいよいよ完結である。だが、単行本を書店で手に取り、その表紙を眺めて違和感を覚える人も多いのではないだろうか。これまでこの『新ブラックジャックによろしく』の単行本表紙にはすべて作者の手によるカラーのカバーイラストが描かれていた。しかし、この最終巻の表紙にはイラストがなく、ほぼ白紙の状態なのだ。

もちろん作者である佐藤秀峰(さとうしゅうほう)氏の頭の中にはこんなイラストを描きたい、というイメージはあったに違いない。しかし、諸般の事情により書店に並んでいる紙の単行本のカバーイラストは描かないという決断を作者自身が下し、カバーイラストがない状態で単行本は完成し、発売日がきてしまった。紙の単行本では幻となってしまったカバーイラスト。でも僕たちにはネットがあるじゃないか、ということでその幻のカバーイラストを実際に描く、というネット生中継が本日10月1日におこなわれる。

佐藤秀峰『新ブラックジャックによろしく』 幻のカバーイラスト描きおろしライブ
放送予定日時: 2010年10月1日(金) 21時30分頃~

ネット生中継なので、コメントも可能だ。普段は見ることができない漫画単行本カバーイラストの制作過程をのぞきながら質問コメントをすることが可能だ。そして、イラストつきの表紙が欲しい読者は、この完成した表紙別バージョンを印刷してカバーイラストつきのオリジナル表紙をつくることができる。一体どんな表紙になるのだろうか?

白い表紙の最終巻が書店に並ぶまで

それにしてもなぜ表紙のイラストがないのだろうか。作者の佐藤秀峰氏の日記(4月19日)を見てみると、こんなことが書かれている。どうも出版社とぶつかり合いがあったようなのだ。佐藤氏の日記より引用する。

今回の1件を通して、第9集発売の際、カバーイラストは描かないことになりました。
理由はいろいろあるのですが、正直に言うと、僕はもう紙の本に興味を失ってしまいました。

この「漫画 on Web」が、僕の表現の舞台であり、僕はここで発表をするために、
漫画を描いています。

カバーイラストは描いても原稿料は出ないし、単行本は出版社の商品であって、僕の商品じゃないので、なぜ他社の商品のために無償で絵を描かなくてはいけないか理解できません。
細かいと言われるかもしれないけど、僕は大事なことだと思っています。
「仕事を依頼したら、対価を支払う」というビジネスの基本中の基本が、漫画業界では守られていません。
ずっとガマンしてカバーを描いてきましたが、矛盾が限界にきてしまいました。

(「漫画 on Web」佐藤秀峰氏の日記より引用)

佐藤氏によれば、漫画業界では単行本を出す際に表紙のイラストは作者が無償で描くのが慣習となっているとのこと。他の業界の人間からすれば驚きだが、そういうことが漫画業界では日常化しているらしい。これはつまり、絵を描くのが仕事の人に絵を描かせて報酬を払わないということだ。本人が了承しているならともかく、全員にそれを強制するのは無理というものではないだろうか。この話題はすぐネットにも広がり、作者の佐藤氏のもとには1000通ほどのメールが届いたとのことである。もちろん意見は賛否両論あり、その後の日記で、この件で夫婦ゲンカしてしまったということも書かれている。

佐藤氏の妻の智美さんもプロの漫画家なのだが、夫婦ゲンカでは明らかに意見がわかれているように見える。日記によれば智美さんは、
「あなたは、これからネットで作品を発表していくつもりだと言っているけど、紙の読者はどうでもいいの?
すぐにネットに移行できない読者は、いくらだっているだろうし、そういう人たちを、あなたは切り捨てるの?
あなたは紙の読者に支えられてきたんでしょう?
まず、読者のことを考えてよ。
せっかく単行本を楽しみに集めてくれている人たちが、真っ白なカバーの単行本を見て、どんなにがっかりするか、ちゃんと考えたの?」

(「漫画 on Web」佐藤秀峰氏の4月20日の日記より引用)

と佐藤氏に詰め寄ったとのこと。この後、智美さんは泣いてしまった。さらに、自身も漫画家である智美さんは以下のようにも述べたらしい。
「原稿で忙しい時に、カバーなんて描いていたくない気持ちも、正直言ってある
けど…私は新人だし、単行本を出してもらえるだけありがたいって思うし、本が
出たら嬉しいし、その上、お金が欲しいなんて言えないよ…。」

(「漫画 on Web」佐藤秀峰氏の4月22日の日記より引用)

このあたりの気持ちは、漫画家じゃない人でも想像できるだろう。私もわかるような気がする。駆け出しの漫画家は、単行本が出るだけですごく嬉しいはずだ。表紙のイラスト料がでないことなんて、おそらくほとんど気にしていないのではないだろうか。もちろん、気にしていたとしても新人であれば払って欲しいと言う事なんてできないだろう。おそらく、この「表紙のイラストに対する報酬を払わない」という慣習は、そういう漫画家の気持ちにのっかる形でできあがっていったのだろう。もともとそこに悪意はないとしても、時代の変化に伴って見直すべき慣習はあるのではないだろうか。

これまで、出版社がなければ漫画ビジネスは成り立たなかった。確かにこれまではそうだった。そして作家との力関係でいうと圧倒的に出版社が上だった。でも、そういう時代もそろそろおしまいになりつつあるんじゃないだろうか? ちょっとおおげさかもしれないけど今回の“白い表紙”事件は、そういう新しい時代の幕開けを象徴する出来事にも思える。みなさんはどう感じるだろうか。

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記者:

ニュースサイト『ガジェット通信』発行人。未来検索ブラジル代表。東京産業新聞社代表。ハリウッドエンターテイメントビジネス誌『Variety Japan』Senior Editor。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラクターに興味がある。好きな食べ物はシュークリーム。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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