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妖怪を目指す男の異色ドキュメンタリー『加藤くんからのメッセージ』 綿毛監督&「僕は、妖怪になる!」と叫び続ける加藤くんにインタビュー

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加藤くん、36歳・独身。2010年、青春のすべてを過ごした早稲田大学を、中退期間を含め11年かけて卒業するも、契約切りにおびえながら月収9万円で働く日々。そんなどん底にいる彼は、“妖怪になる”という夢を掲げ、日々“妖怪活動”に励みます。「夢は叶う! だから僕は、妖怪になる! 僕らの夢よ、届け!」と本気で叫び続ける加藤くんを2年間に渡って追いかけた異色ドキュメンタリー映画『加藤くんからのメッセージ』は、何者にもなれないモラトリアムな感情を抱えた人々の心を打ち、『イメージフォーラムフェスティバル 2012』で観客賞に輝くなど高い評価を獲得しました。

12月6日(土)より、シアター・イメージフォーラムにてレイトショー、ほか全国順次拡大となる本作の公開を前に、現在も妖怪活動を続ける加藤志異(本名:加藤寿信)さんと、製作・撮影・編集をひとりで務め上げ、彼の妖怪活動を2年間ウォッチし続けた綿毛監督を直撃取材。なぜ彼が妖怪活動に熱意を注ぐのか、そして綿毛監督がなぜそれを見守り映像作品に仕上げたのかをたっぷりとインタビューしてきました!

映画『加藤くんからのメッセージ』予告編(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=rErRRSDZd48

※加藤さんについては、敬意を表して以下“加藤くん”と表記しています。

妖怪になりたい男と素人監督の出会い


大学を卒業して大手住宅メーカーに入社後、職を転々としながら、撮影当時には派遣社員として企業の営業事務をしていた綿毛監督。実は今作が初監督作品であるどころか、当初は撮影や映像制作に関する知識が一切なかったとのこと。

共通の知人を通じて加藤くんと出会った監督は、「声が異様に大きくて、いちいち言うこともうるさかったから叱りつけたんです。そしたらしょぼくれちゃって、後から頭を下げて謝ってきたんです(笑)」と彼の第一印象を語ります。

その後、加藤くんが妖怪活動として独自に続けてきた演説の様子を『YouTube』の映像で観た監督は、「自分も何か映像を撮りたいと思っていたら、しばらくして加藤さんの方から撮影の依頼があったんです。私が学生時代、写真研究部で撮っていた写真に興味を持ってくれたみたいで」と密着をスタート。

「最初はただ何となく妖怪活動に興味を持って撮影していたんですけど、だんだん加藤さんの活動に新鮮味も面白みも感じなくなってきて(笑)」と語るように、監督はそもそも映画にすることなど考えていなかったそうですが、「でも加藤さんは“妖怪になる”と本気で言うから、彼がなぜ妖怪になりたいのか、加藤さん自身の心の中を突き詰めていく視点にシフトチェンジしてみたら、最終的に1本の作品になった感じです」と当時の様子を振り返ります。

加藤くんはなぜ妖怪になりたいのか


ここで、加藤くんが考える妖怪の定義を整理しておきましょう。

1.妖怪は死なない
2.妖怪は夢と現実をつなぐ
3.妖怪は世界と社会をつなぐ
4.妖怪は子どもに似ている

加藤くんがイメージする妖怪の特徴はこの4点。そして映画では、“妖怪活動”と称してホウキで空を飛ぼうとしたり、動物園でゾウと会話しようと試みたりするのですが……。

「周りの人からはドン・キホーテと思われるかもしれませんが、何でもやってみないと分からないし、やってみることで少しだけ現実に“揺れ”を起こすことができるはずなんです。テレビでよく奇跡体験を取り上げた番組がありますよね。僕は社会的には底辺のダメ人間ですが、“夢は叶う”ということだけは確信として持ち続けようと決めたんです」と語る加藤くんがゾウと会話をすることができたのか、それはぜひ劇場でご確認ください。

さらに、妖怪として不老不死を目指す加藤くんは、「人間はみんな死ぬと言われているけど、僕は子どもの頃から“死”について考え出すと本当に怖くなっちゃうんです。だから、“死”を克服したいんです」とあくまでも大真面目に続けます。彼は他人に妖怪の存在を押しつけたり、妖怪活動を強要したりすることは決してありませんが、「もちろん世の中では不可能だと言われていますけど、挑戦してみる人がひとりくらいいても良いのではないかと。僕には医学や科学の知識はないですから、できること、つまり“叫ぶ”ことを続けているんです」と、なぜ演説というスタイルをとるのかも説明。


筆者も少し混乱気味になってきたところで、綿毛監督が「はっきり言って意味不明ですよね? 私も最初は働きたくない人の言い訳だと思っていましたから。加藤さんの言葉って、必死に就職活動をしてちゃんと生活をしている人にとってはイライラするんですよ(笑)」とひと言。頭がグラグラしていたところをその言葉に救われるとともに、本作が加藤くんのメッセージに同調して一方的な主張を垂れ流すのではなく、客観的に彼を見つめて理解しようとする作品になった理由が分かりました。

「誰も妖怪活動について理解できる人はいませんよ。でも、コイツ面白いなって思ってくれて、自分に寄って来てくれる人が増えたからそれは成果ですね。“妖怪は世界と社会をつなぐ”ということです」と加藤くん。つまり、奇異な目で見られたり批判されたりすることも含めて、世の中が自分に反応すればそれは妖怪活動の成果だということでしょう。しかしインタビューを通じて、それでも加藤くんが本気で空を飛べると信じて、本気で妖怪になりたいと思っていることだけは確かだと伝わってきました。

『加藤くんからのメッセージ』というタイトルがついた今作ですが、監督は、「私自身としては、家に引きこもっていたり、殻に閉じこもって周囲とコミュニケーションが取れないような人たちに見てほしいと思っています」と、自身が観客に伝えたかったメッセージを明かします。さらに、「だから、この作品を劇場でみなさんに見てほしいのはもちろんですが、外に出るのが困難な人でもDVDで観られる環境になるのが今後の理想であり、目標です」と述べ、現在はDVD化に向けて活動中とのこと。


ちなみに、昨今の妖怪ブームについて加藤くんに聞いてみると、「自分は自分の妖怪を目指すだけです!」とひと言。どちらかというと『ゲゲゲ』の世代なので、決してブームに乗っかろうとしている訳ではありませんよ!

どうやったら劇場で公開される映画になるの?


映像作品の撮影自体が初めて、しかも最初は機材も持ち合わせていないため『iPhone』で撮影していたという綿毛監督に、気になる質問をぶつけてみました。今作はどうやって劇場公開されるに至ったのでしょうか?

「映像関係の知り合いは皆無だったので、とにかく誰でも出品できる映画祭に応募し続けました。あとは、DVD化という目標がどうしても強かったので、名前を知っている配給会社に片っ端から作品を送りつけましたね。そうしたら、ミニシアター系のドキュメンタリー映画を多く扱っている東風さんから幸運にも連絡をいただいて」と、すべて自力で配給会社とのつながりを作ったことを説明。その後は、配給会社と一緒に劇場公開できる映画館を探すことになったそうです。なんとストイック!

異色の妖怪(になりたい男)と異色の経歴を持つ監督が放つ異色だらけのドキュメンタリー作品『加藤くんからのメッセージ』。加藤くんが叫び続けるその声と、一歩引いた視点でその言葉の本質に迫ろうとする綿毛監督からのメッセージに耳を傾けてみてはいかがでしょうか?


『加藤くんからのメッセージ』公式サイト:
http://www.yokai-kato.com/index.html

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記者:

PR会社出身のゆとり第一世代。 目標は「象を一撃で倒す文章の書き方」を習得することです。

TwitterID: stamina_taro

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