日立の年功序列廃止、日本の人事制度に与えるインパクト
日立、国内の課長以上の管理職を対象に年功序列を廃止
日立製作所は9月26日、国内の課長以上の管理職を対象に、10月から賃金体系を改めると発表しました。これは、これまで管理職の社員について、給与全体の70%を年齢や勤続年数に応じ支給してきた制度を、給与の全額を仕事の内容に応じて支給する仕組みに見直すとするものです。
日立製作所は、2009年3月期に7873億円の大幅な赤字を計上しましたが、その後インフラ事業などの重電機器を扱う事業に集中することで業績を回復しつつある中、今回の見直しを行った目的は、単なるリストラではなく、さらなる事業発展を見据えてのことであると思われます。
全世界的に事業を展開する日立製作所は、国や地域を超えて、外部から多様な人材を集める必要があります。年功序列制度は、勤続年数少ない中途採用者や外国人などに対して不利な部分がありますが、グローバルに共通の基準を用いて、役割や評価と報酬との関係を明確化することで、この問題を解消することとなります。
ソニーも追随?今後、成果主義が企業の主流に?
日立製作所という日本を代表する企業が、日本の人事制度の大きな特徴の一つである年功序列制度を廃止するという発表は、非常に大きなインパクトがあります。実際、ソニーなどもこれに追随する動きがあります。処遇の判断基準を業務内容とすることは非常に明確です。グローバル化が進む中、年功序列制度の廃止を考える企業は今後増えることが予想されます。
政府も安倍総理大臣が「労働生産性に見合った賃金体系への移行が大切だ」と述べるなど、成果主義への動きを進める方針です。ただ、2000年代以降、成果主義という考え方の元、多くの企業が給与体系の見直しを進めていきましたが、成功しなかった事例が多いのが実情です。
日本の企業すべてに年功序列制度廃止が正しいというわけではない
日本の企業が大きく発展した理由の一つは、終身雇用の下、企業が社員を育てることで、社員は単なる雇用関係以上に、会社の発展に寄与しようとするロイヤリティを持ち働いたことがあったと思われます。しかし、成果主義を第一とする制度の場合、中長期的な人材戦略を作ることができなくなり、結果として企業の競争力が落ちてしまった場合があります。
社員が将来的な不安を持ち、自らを守るため、より良い条件のもと会社を去ることが生じるような状況が増えれば、企業の発展に大きな損失が生じてしまうことでしょう。日立製作所のようなグローバル企業が今回の大きな変更を導入することは事業の中身を考えると当然の流れに見えます。ただし、日本の企業すべてに年功序列制度廃止が正しいというわけではなく、事業の内容、規模などによって年功序列制度と成果主義をバランスよく取り入れていくことが安定的な企業の発展に必要だと思われます。
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