散骨場に住民反発、条例施行で問題は解消へ?

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熱海市議会、散骨場の規制を可能とする条例改正案を可決、施行

散骨場に住民反発、条例施行で問題は解消へ?

静岡県熱海市の山林で計画されていた散骨場に対し、住民らが反対運動を展開していた問題で、熱海市議会は今月、散骨場の規制を可能とする条例改正案を可決、施行しました。改正された条例案では、散骨場のような墓地に類似する施設の開発については、規模にかかわらず事前協議や審査が必要になることなどを定めています。

現状、散骨(火葬後の焼骨を撒く葬送方法)を明確に規制する法律はありません。また、散骨は、論理的には、刑法190条の「遺骨の遺棄」に当たる可能性もありますが、現時点において葬送としての散骨に刑法190条を適用した事例はないでしょう。

むしろ、散骨が葬送方法として行われる場合には、葬送の自由として憲法が保障する基本的人権に含まれる可能性があります。もっとも、無分別に散骨がなされた場合には、焼骨の性質上、周辺住民の生活や感情に大きな影響を与え得るため、公共の福祉による規制も避けられません。

今回の熱海のような散骨場の条例での規制では、このような2つの権利自由の調和の観点が重要になると思います。散骨場を規制する条例は、2005年の北海道長沼町のケースを最初として、各地で制定されてきています。仮に、今後も民間業者が散骨場の計画を次々に進めた場合には、このようなトラブル、条例による規制は増加するものと思われます。

葬送の問題と、住民の権利をいかに調和させていくか

今回の熱海のケースを具体的に見てみると、当初の計画では、パウダー状にした焼骨を、水や植物の栄養剤と混ぜジョウロで散布するということで、地面に浸透し風で舞うことはないと業者側は説明していたと言います。しかし、その後、住民らの反対運動などを受けて計画を変更。熱海沖に散骨した後、くみ取った海水を区画内に埋めた竹筒の中へ遺影・遺品と一緒に入れる形にしたようです。

この形であれば敷地に焼骨は入らないとも思われ、そもそも「散骨場」に当たらない可能性も出てくるでしょう。しかし、熱海市が条例で規制するのは「墓地類似施設」のため、変更後の計画でも条例の規制対象となるというのが熱海市側の主張のようです。

同時に、熱海市は、多数の遺族からの大量の焼骨を霊園施設以外の場所に散布する行為は、節度のある葬送とはいえないとの観点から、墓埋法に基づく墓地の経営の許可の取得も求めたとのことですが、海洋散骨は既に多数の業者が営んでいる中で、「節度の有無」という抽象的な概念の議論には、異なる立場からのさまざまな意見がありそうです。

散骨場に限らず、葬儀施設全般は社会的に嫌悪施設ともいわれ、故人を悼む誰にとっても必要なものでありながら、近隣に計画が立ち上がると住民から反対運動が起こることが多いのが現実です。その中で、墓埋法制定当時と異なり、散骨など葬送方法について新しい需要が生じている中で、今後、故人や遺族の尊厳にもかかわる葬送の問題と、住民らの権利をいかに調和させていくか、自治体には難しい舵取りが迫られそうです。

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