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【ロングインタビュー】韮沢靖が描くロックスター、阿佐ヶ谷で公開中!

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近代『仮面ライダー』怪人のデザイナーとしても有名な「世界の韮沢」こと、韮沢靖(にらさわ・やすし)氏の個展が東京・阿佐ヶ谷にて開催中です。

今回のタイトルはなんと「PUNK!!」。「オールドロック、ゴシックパンクの名曲のそれぞれからインスピレーションを得て」の「全作描きおろし」とのこと。えー!

今までと多少趣(おもむき)の異なる韮沢ワールド。そのあたりについて、直接ご本人にお話を伺ってみました!
全ての写真を観るにはこちらからどうぞ

- 『NIRAISM版 最後の晩餐』について
ガジェット通信(以下、ガジェ): 前回の個展、「Succubus」(2010年2月)から4ヶ月を経ての開催ですね。今回は描きおろしと思われるものが多数見られますが。
韮沢先生(以下、韮沢): そうですね。これ、全部描きおろしです。オールドロックとか、自分の世代で聞いてたゴシックパンクとかですね、そのへん題材でやろうかと思いまして。あと、自宅にデザインのストックがなくなってしまったので(笑)、B2で描きおろしで10枚くらい。
あと、ライブペイントではロックのオールスターズ、といいましょうか。(レオナルド・ダ・ヴィンチの)「最後の晩餐」風に横長のキャンバスに、どんどん(人物を)増やしていこうかと思いまして。
ガジェ: おぉー!
韮沢: これ、(人物が)ちょっとずつ増えてるんですけど、…1日1人のつもりが3日でこんなになっちゃいまして(笑)※編注:インタビュー時点でもう13人
ガジェ: え!これで完成じゃないんですか?製作途中なんですか?※編注・開催数日にして、かなりの完成度まで仕上がっていました。
韮沢: まだ、途中です。
ガジェ: うーん、なるほど……(感嘆)。だいぶ描きこまれていますね。
韮沢: ここから、さらに色つけていこうかと思ってるんですよ。こう…全体にセピア調に、ハイライトも入れて。
ガジェ: うわー。それじゃあ、会期の前半、中盤、後半で全く違うものが見られるということですよね。すごい。
ギャラリー「白線」さん(以下 白線): 製作段階が、全て見られる、という。
ガジェ: 毎日来ても楽しいですね。ところで、先生は、こうした伝統的なロックなどの音楽はお好きなんですか?
韮沢: ええ。我々が中学・高校くらいのときに聞いていたもの(が題材)なんで、40代の方なんかはわりと共通のものが多いかと思いますよ。20代とか、今の若い人にとっては珍しいかもしれませんね。(来場者の記帳の)メモには、「全く未知のロックバンドをありがとうございます」なんてのもあったりしましたから(笑)。「帰りにランナウェイズ(※The Runaways:1975年に結成されたアメリカのガールズロックバンド)買っていきます!」みたいな。
ガジェ: 若い人にとっては、一回りして、逆に新しいかもしれませんね。
韮沢: そうですよね。

- 「夏休みの宿題」
ガジェ: これは描き溜められるまでに、結構お時間がかかったのでは?
韮沢: 時間はあったんですけど…夏休みの宿題みたいに、最後まで引きずっちゃって。結局、5日間くらいで仕上げてしまいまして。
ガジェ: えぇーっ!(驚)
白線(以下 白線): 始めたのはもっと遅かったですよ。6月入ってからですもん。
ガジェ: この前じゃないですか!(笑)
韮沢: あぁ、そうだ。「KISS」が3枚失敗しているので、それで日にち食ったんで…そうですね、もうちょっと濃縮された期間だったかと思います!
白線: 怖かったですよー。だから。
一同: (苦笑)
白線: 6月入ってしまって、これでイケるのか?と。
韮沢: いやあー。

- 「スピード感」
ガジェ: こんな言い方すると失礼かもしれませんが、韮沢先生が失敗される、という話を聞いて、逆に新鮮な気がします。あのライブペイントでずっと描かれているところとか拝見させていただいて、「失敗するパターン」というのが想像つかなかったんですね。

※編注・韮沢先生のライブペイントは、無地の等身大の巨大なキャンバスに、市販のマジックでグイグイと線を引いていくうちに、緻密かつ迫力のクリーチャーが登場することでも定評があります

韮沢: 結局、焦ってきて、さらに前日酔っ払って描いているわけですから(笑)、それなりの「スピード感」が(筆に)出るわけですね。
ガジェ: ふむふむ。
韮沢: それで、(シラフに戻った翌日の)昼間に見ると「飾るにはちょっと…」というものになっているわけですよ。(B2という大きさよりは、等身大の)ライブペイントくらいのがちょうどいいですね、大きさ的にも。
ガジェ: 締め切りがあって、あわてて描くよりは、ライブで好きなペースで描くほうがいいと。
韮沢: そうですね。まあ、面白かったですけど。
白線: 大きいほうが早いんですよ、描くのが。多分、描くのが楽なんですよね。
韮沢: そうなんですよ。
白線: 今回描きおろし、って事で10枚、韮沢さんが描いたんですけど「ライブでやっている絵とは差別化したい」ということで、…勢い重視でライブでは描いているんですけれども、「展示しているものはライブでは描ききれないところまで描いていこう」という趣旨なんです。
ガジェ: ほうほう。
白線: で、(先の話の失敗したという)『KISS』のときはベロベロに酔っ払って描いて(笑)、ブワーッと、ライブのときよりも早いくらいの勢いで描いていて。絵としては悪くないんですけど、狙っている趣旨と違ったんで描き直しになったんです。
ガジェ: 展示されているものはどれも緻密な描画ですね。
韮沢: (椅子から立ち上がり、1枚の絵を持ってくる)これなんですけどね。
ガジェ: おお!「KISS」だ!
韮沢: さっき言っていた「失敗」なんですが。
※編注:展示されているバージョンとは違った、ものすごく勢いのある描写の「KISS」が描かれている。これはこれで、ものすごくカッコいい!
韮沢: もう少し密度を上げたものを描いて(展示のバージョンに)仕上げました。「スピード感」は弱まるんですけど、作品としての落ち着きがあるかな、と。
ガジェ: うーん、カッコいい…。あ!(床の立体造形を見て)これはマリリン・マンソン(のライフマスク)ですか?
※編注:アメリカのロックバンドおよびヴォーカリストの名前
韮沢: これは下北沢のお店で売ってるガレージキットで、プロデュースをやったんです。(マリリン・マンソンは)コンサートごとに毎回メークが違ったりするから、(彩色していない顔のガレージキットを出す事で)塗りを楽しんでもらえるかなあ、と。
※編注:ちなみに、韮沢氏は世界的に有名なデザイナーということもあって、マリリン・マンソンが直接「フィギュアを作ってくれ」と韮沢氏に押しかけたこともあるそうだ。その際には、韮沢氏が直接マリリン・マンソンに蕎麦を茹でてあげたという冗談みたいな話もあるのだが、これは実話である。

- 誰を描くか
ガジェ: 「この人を描いてほしい!」というような、リクエストなどはありましたか?
韮沢: YAZAWAを描いてほしい、というのはありましたねえ。
ガジェ: ああー。ロックではありますね。
韮沢: 今回はメモでアンケートも取ろうかな、と思ってたんですがまだやってないですね。
(『最後の晩餐』を指差しながら)YAZAWAも入れるかあ。内田裕也とかを入れたい気持ちもあったんですけどね。
ガジェ: カート・コバーン(※アメリカのボーカリスト、ギタリスト。『ニルヴァーナ (Nirvana)』 でボーカルとリードギターを担当、27歳没)とかどうですか?
韮沢: カート・コバーンいいですね。今回、(作画対象からは)外しちゃいましたけどね。「ニルヴァーナ」も聞いていたんですが、絵的にどうかな?という気持ちがあって。今回は、ビジュアルがショッキングな人たちをチョイスしています。
ガジェ: 確かにそうですね。
韮沢: まあ、画家じゃないし…似顔絵も下手なんで、
ガジェ: いやいやいや(笑)
韮沢: 出来るだけ、ロックを題材にしたクリーチャー的に描ければ、という気持ちでやりました。
ガジェ: (パンク)ロックがテーマの『NIRAISM』(韮沢ワールド)ですもんね。
白線: まあ、そうは言っても、「似ている、似ていない」の方も(韮沢さんが)結構気にするんで(笑)
ガジェ: どうせ描くなら、せっかくなら似せたい、と。
韮沢: あと今回、楽器を一切描いていないんですよ。楽器描くとなると、それなりに資料なんかが必要になってしまったりする、という理由もあるんですが。
ガジェ: 楽器が全く無いのに、ロックな雰囲気は伝わってきますねえ…。そうそう、こちら(ライブペイント用のキャンバス)を見ると、今回は鉛筆の下書きの跡がありますね。
韮沢: ええ、今の話じゃないんですけど、やはり(実在の人物をモチーフにするという)性質上、やや似せたいという欲求がありまして今回これらは下書きしてみました。
白線: それもあって、(今回のライブペイントは)普段見せないようなキャラクターの顔もありますね。
韮沢: ライブペイントは、日々1時間半を30分ずつに分けて、やっています。毎日5時から、6時から、7時から30分ずつです。
ガジェ: 1日3回ですか。だから同時進行で3つのライブペイントのキャンバスがあるんですね。
ガジェ: 最近のオススメのロックバンドありますか?
韮沢: うーん、最近で…かあ。最近でも聞いているのは、「ロブ・ゾンビ」(※アメリカのミュージシャン)、「マリリン・マンソン」あたりになるんですよ。あとは「ヴェルヴェット・リヴォルヴァー(※元『ガンズ・アンド・ローゼズ』のメンバーや元『ストーン・テンプル・パイロッツ』、元『Zilch』のメンバーで構成されたアメリカのバンド )」とか、ちょっと古いテイストの入っているのが好きで。「カサビアン」(※イギリスのロックバンド)とかもいいですねえ。逆にラップっぽいのはあんまり良く知らなくて。
ガジェ: 音に厚みが有って、昔の流れのあるほうがお好きなんですか。
韮沢: うんうん、そうですね!
ガジェ: ライブを見に行ったりはされるんですか?
韮沢: こないだは、「ロブ・ゾンビ」来てたので、行きましたよ!新曲2曲もやってくれたんで、いやあー、燃えましたよ!(笑)
ガジェ: (笑)
韮沢: 燃えたんだけど、昔みたいに前のほうには行けなくって(笑)。「前、怖えー!」って。ええ。

- 「KISS」5人目のメンバー
白線: 韮沢さん、上京した理由が「”KISS”に入るため」、だったんですよ。
ガジェ: ええええええ(驚)!
韮沢: 「KISS」に入れるかなー、って。
ガジェ: そうなんですか?!それで新潟から?
韮沢: かなり本気だったんですけどね。楽器が出来ないんで、それがネックでしたねえ。
ガジェ: ど、どうやって「KISS」のメンバーに入ろうと思ったんですか。
韮沢: 「上京したらなんとかなんじゃねえか?」って(笑)。(自分用の)メイクも考えていたんですけどね。
ガジェ: ちなみにどんなメイクだったんですか。
韮沢: こう、かなり(顔の)真ん中が黒い、”Black JAPAN”みたいな感じで。額にドクロとかね。
ガジェ: KISSに入ろうと思って上京したということ自体が、パンクですよね。
韮沢: 頭悪いですよ(笑)。
ガジェ: そのメイクもぜひ、描いてほしいですよ。
韮沢: あ、じゃあ、描いときますよ。
白線: 1人増えているわけですね。
ガジェ: 「このメンバー誰なんですか?」っていう。
韮沢: 「ああ、俺!」ってね(笑)。

- 制作時の音楽について
ガジェ: 作業中にアトリエで音楽はかけっぱなしですか?
韮沢: そうですね。
ガジェ: 音楽によって筆の進みとか、テイストが変わったりとかしますか?
韮沢: あると思いますね。まくし立てたいときは早めのとかかけますね。タッチにスピード感が出るか出ないか、という影響はあると思います。
ガジェ: 今回、締め切りギリギリだったということは、かなり早い曲とかだったんですか?
韮沢: やはり(そうですね)。面白いもんですよね。
ガジェ: どんな曲を?
韮沢: やっぱり(前述の)「マリリン・マンソン」とか。「ロブ・ゾンビ」もいいですよー。
ガジェ: おおー。
韮沢: あと、ここでライブペイントやっていて気が付いたんですが、音楽とかって、好きな曲は歌詞がどんなでどういう風に曲が終わるとか、わかっているわけじゃないですか。だからライブペイントが終わるときに、終わりに合わせてこう(両手を挙げながら)フィニッシュするのがいいな、とここで(ライブペイントをしながら)気がついたんですよ。
ガジェ: 曲と動きと絵が、一緒になって…いいですねえ。そういう瞬間に立ち会えた人はラッキーですよね。

– 今回の『NIRAISM PUNK!!』のチョイスと次回

ガジェ: 反響とかどうですか?
白線: 『仮面ライダー』系のファンの方々が多いので、そちらから入った方にとっては、新鮮だ、というご意見をいただきましたね。
ガジェ: ちょっとだけレイヤー(層)が違うんですね。僕もクリーチャー系の韮沢さんの作品から入ったクチなので、相当新鮮でした。新しい韮沢さんの世界という意味で、他の人にも見ていただきたいですね。高円寺、阿佐ヶ谷近辺という(アングラ、ロック文化としての)立地も含めて、実は好きな人が多いのではないかという気がします。
白線: 「本当に好きな曲を10曲あげてください」となったら、かなり難しいんですけど、今回そのピックアップをしてみたんです。で、その曲というのはその人の性格というか、”人となり”をあらわすものなんですが、今回の展示物を見ても「ああ、韮沢さんだなあ」という感じですね。
韮沢: 本来なら外せない(ローリング)ストーンズとか(レッド)ツェッペリンとか、外してあるんですよ。「(エリック)クラプトン、居ねぇじゃん!」とか(笑)。
ガジェ: (笑)
韮沢: 本来なら「最後の晩餐」の中央は、クラプトンだろ、って話もあったんですが、「いやいや、ジーン(シモンズ)でしょ!」と。
白線: 韮沢靖が選んだら、こうなる、と。「これが外してあるんだ」というのはありますね。(ローリング)ストーンズとビートルズも外してありますからね。
ガジェ: さっきのYAZAWAじゃないですが、ジャパニーズロックはどうなんでしょか。
韮沢: (忌野)清志郎が好きなんですよ。RC(サクセション)ですね。なんで、多分RCだけで1個(個展が)できるかもしれないですね。
ガジェ: 見たいです。
韮沢: 追悼1年ってことで考えてはいたんですけど、今回は洋モノを先に出してみました。
ガジェ: ネタはつきないですね。
韮沢: (笑)
ガジェ: 会期中ではありますが、「次」はどんな?
韮沢: 夏辺りに、ホラーやりたいんですよね。初めて話すけど。
白線: こっち(白線のスタッフ)でも、実は同じこと話してました。
韮沢: え、すごいねー!
ガジェ: シンクロしてますねー。
韮沢: さっき、「ブギーマン」かかっているときに思いついたんだよね。
白線: (『13日の金曜日』の)「ジェイソン」とか(『エルム街の悪夢』の)「フレディ」とか完成されすぎちゃってるから、韮沢版フレディとかね。
韮沢: アレンジしないと。
ガジェ: うわー、見たい!見たいです。
韮沢: ユニバーサルモンスターとかも居ますからね。フランケンとかドラキュラとか。あの辺もいいなあ。
ガジェ: 楽しみにしています。

全ての質問に、快く答えてくださった韮沢先生。好きなお酒はビールと焼酎とのこと。ライブペイントも含め2010年6月20日(日)まで開催しているそうなので、直接足を運んでみるのを強くオススメするぞ!

韮沢 靖 個展 “NIRAISM PUNK!!”
東京・阿佐ヶ谷 「白線」
http://hakusen.jp/
2010年6月5日(日)~2010年6月20日(日)絶賛開催中。
13:00~20:00の展示で、期間中は毎日17:00、18:00、19:00に韮沢 靖氏本人によるライブドローイング予定。
入場は500円。

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記者:

「予備校生のような出で立ち」で写真撮影、被写体(スチル・動画)、記者などできる限りなんでも、体張る系。 「防水グッズを持って水をかけられるのが好き」などの特殊な性質がある。 好きなもの: 食べ物の写真、昔ゲーム(の音)、手作りアニメ、昭和、穀物

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