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アスタルテ書房が選ぶ一冊:著者、翻訳と挿絵も”僕のベストの作家“だから『バタイユ作品集「マダム・エドワルダ 死者 眼球騨 他二篇」

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『アスタルテ書房』はちょっとミステリアスな古書店です。

場所は、京都三条通りのにぎわいから少しだけ北へ上がったところにある住居用マンションの一室。扉を開くと、なまめかしくも重厚なインテリアの書斎が現れます。玄関に並べられたスリッパに促されるように靴を脱いで室内に入るとぐっと濃密な空気に包まれるのです。

店内には、“異端の画家”と呼ばれる金子國義の絵画作品や、四谷シモンの人形などがディスプレイされています。『アスタルテ書房』を象徴するフランス文学——とりわけ幻想的でエロチックな作品——を翻訳した澁澤龍彦や生田耕作、挿画を手がけた金子國義をはじめとした著名な作家たちもこの古書店を訪れました。

まるで文学サロンのような古書店『アスタルテ書房』の店主・佐々木さんに、「今、面白いと思う本」を一冊紹介していただきました。(取材日:2014年6月13日)

アスタルテ書房が選ぶ一冊:バタイユ作品集「マダム・エドワルダ 死者 眼球騨 他二篇」

書名:バタイユ作品集「マダム・エドワルダ 死者 眼球騨 他二篇」
著者名:G. バタイユ/生田耕作 訳/金子國義 挿絵
出版社:角川文庫(昭和51年初版)

「バタイユは政治学者で哲学者、そして小説家としては最高のエロティック小説を書く作家。『マダム・エドワルダ』と『眼球潭』はともにすばらしい作品です。この作品集では、生田耕作さんが翻訳、金子國義さんが挿画を担当しています。三人とも僕が最も大好きな、最高の作家たちです」。

実は、意外と接点の少なかった生田耕作と金子國義を引き合わせたのは佐々木さんだったそうです。今回紹介していただいた本をはじめ、「生田耕作 訳/金子國義 挿画」による数々の名作が生まれた背景には『アスタルテ書房』が一役買っていたのですね。

1984年、池田屋事件の跡地でオープン


『アスタルテ書房』は1984年にオープン。当時は、幕末に新撰組が尊王攘夷派の志士を襲撃した、池田屋事件の跡地に建てられた雑居ビルの1フロアに入居していました。半分は佐々木さんの古書店『アスタルテ書房』、もう半分は友人の中古レコード屋さん(現『Bootsy’s(ブーツィーズ)』)というスタイルでした。

5年後、ビルの取り壊しが決まったときに現在の場所に移転。マンションの窓をふさいで、本棚にぐるりと囲まれた書斎風の古書店を作り上げました。

「晩年、京都に移り住んで来られた生田先生は、2、3日に一度はかならずうちに顔を出されていました。ものすごい本を好きな方でしたから。澁澤先生は、今の場所に店を移した頃にはもう入院しておられて。新しい店の写真だけ持ってお見舞いに伺ったら、筆談で『面白そうな店だからぜひ行きたいものだ』と」。

『アスタルテ書房』は小部数での出版も行ってきました。定価の表記もなければ帯もない、一般には流通していない『アスタルテ書房』のお客さんだけが買える本……それは、書物を愛する人たちにだけ届く佐々木さんの「理想とする本」でした。300部限定で作られた本たちは、それぞれ約1年ほどの時間をかけてほぼ完売しているそうです。

本の魂が揺れるような本棚に会いに行く


あらためて、佐々木さんが古書店を始めた理由を尋ねてみると、「ああ、もう本が大好きだったから」とまっすぐな答えが返ってきました。

「うちには専門分野はありますけれども、たとえば映画や芝居、写真集などもあれば、入り口近くには文庫本のコーナーもあります。お客さんは100人いれば100人の好みがありますが、来てもらった以上は何か買ってもらえるようなものをとわりと手広く置いているつもりです」

中学生のときには古本屋に通って文庫本を買って読み、学生時代には古本屋さんでアルバイトもしていたそうです。「中学生の頃の出発点が文庫本だったから」と、文庫本のコーナーには50円の本もあります。

私が初めて『アスタルテ書房』を訪れたのは大学生のとき。お店の雰囲気に気圧されて、ひとりで恐縮していたことが忘れられません。正直言って、大人になった今でもこのお店の空間に足を踏み入れるとぴりっとした緊張感を覚えます。

でも、『アスタルテ書房』は、「本が大好き」な店主のもとに「本が大好き」なお客さんだけが集まってくる古書店。ほんとうの意味でぜいたくな本のための空間なのです。もし、興味を感じるなら、そっとその扉を開いてください。きっと、あなただけを待っていた一冊の本に出会えるはずです。

『アスタルテ書房』について

店名:アスタルテ書房
住所:京都市中京区三条御幸町上ル東側ジュエリーハイツ202
営業時間:12時〜19時(木曜休)
電話:075-221-3330
※遠方からの来店の場合は、電話にて営業を確認することをおすすめします。

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記者:

京都在住の編集・ライター。ガジェット通信では、GoogleとSNS、新製品などを担当していましたが、今は「書店・ブックカフェが選ぶ一冊」京都編を取材執筆中。

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