悪人が善人を駆逐する(2) 「野蛮」と「文明」(中部大学教授 武田邦彦)

悪人が善人を駆逐する(2) 「野蛮」と「文明」(中部大学教授 武田邦彦)

今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

悪人が善人を駆逐する(2) 「野蛮」と「文明」(中部大学教授 武田邦彦)

このブログは、社会に起きていることを「科学的・論理的」に見たら、どのように見えるのだろうか? 人間の歴史を見ると、「街角を歩いている女性を捕まえて「台風が来たのはお前のせいだ」と言って「魔女の火あぶり」で殺す」ということはつい最近(500年ほど前)まで行われていた。理由もなく捕まえて首をはねるというのも普通に行われていた。

私はこれを「野蛮な行為」と思っている。人間が人間らしく(少なくとも頭脳の発達した動物らしく、科学的・論理的な行動)生きていくためには、また日本が他民族に不当に支配されることなく、子供たちが幸福に生きるためには、日本社会の「野蛮性」をできるだけ除くことが大切と思っている。

「野蛮」の反対は普通「文明」という言葉が使われる。日本は見かけは確かに「文明国」だが、その中で行われていることはそれほど文明的なことではない。たとえば、お金を送るときに「銀行振り込み」という手段があるのに、見つかるとまずいからということで鞄に現金5000万円を詰め込み、膨大な税金を使っている東京都議会で「詰められる、詰められない」と論争しているのだか、これを「文明国」ということはできない。

「なんで現金で運んだのですが?」と聞けば、文明国なら「悪いことをしようとしたので」と答え、「都知事として恥ずかしいので辞職します」というのが文明というものだろう。

「政治にはいかがわしいお金が必要だから」という気持ちが都議会にも日本社会にもあって、それが野蛮な言動を引き起こしている。「政治にはいかがわしいお金が必要」というのは、イコール、「野蛮」ということだ。

地方の議員が、近くの人にご馳走して投票を依頼するのとなんら変わらない。でも、都知事選挙では「選挙法に基づく正しい選挙をしなければならない」とか、「都知事は重要な職であり、みんなから尊敬され、所得も多いのだから、普通の人が選挙法を守るより、より「文明的」な言動が求められる」というような初歩的なことも守られない。

守られないというより、社会全体が暗黙のうちに・・・これが私が嫌いな「空気」というものの一つだが・・・「政治に金が絡むのは仕方がない。政治家になるのはお金を儲けたいためだ。そうでなければ選挙で土下座はできない」と認めているからだ。

そして、「都知事は正当な所得(都知事報酬)だけで、都知事としての仕事を全うしたい人だけが立候補すべきだ」という文明的な意見は、野蛮な社会では「青二才」として排斥される。今の日本はその状態にあると私は思っている。

生活が厳しく餓死する人が多いような場合は、命を守るために人間は野蛮になるけれど、「豊かで野蛮」というのは恥ずかしいことだ。そして今まで全体から見ると「文明国が繁栄し、野蛮な国が亡びる」という経験から見て、日本社会を少しでも文明的にしておくことが日本の子供たち(これから50年後)のためにやっておかなければならないと思うからだ。

野蛮な社会では、悪人が良い人を非難したり、殺したりする。それは日本社会で日常的に行われている。

執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年12月28日時点のものです。

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