Twitterでは「つぶやく」な

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最近、爆発的な広がりを見せている『Twitter』。私の周りにも『Twitter』人口がだいぶ増えてきました。この『Twitter』について、今回は青木理音さんのブログ『経済学101』からご寄稿いただきました。

Twitterでは「つぶやく」な
最近、「Twitter を「つぶやき」と翻訳した罪」なんて記事を読んだ。記事中には次のように「つぶやき」という訳の問題が指摘されている:
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「140文字限定」、「つぶやき」、「フォロワーにのみ伝える」。こうしたキーワードだけで判断すると、いかにも閉じた空間の自己満足的なツールにしか見えない。
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『日経ビジネス』2010年1月19日「Twitterを「つぶやき」と翻訳した罪」 / 須田 伸
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20100115/212210/

これは確かに残念なことだ。何故なら『Twitter』が『Facebook』や『mixi』のようなSNSと異なる点がまさにその開放性にあるからだ。『Twitter』も元々は『Facebook』におけるステータス更新をSMSで行う仕組みだった(参考:Wikipedia*)。『Twitter』のオフィシャルサイトでの質問が”What are You Doing?”だったことがそれを象徴している。
* http://en.wikipedia.org/wiki/Twitter

では『Twitter』が『Facebook』のステータス更新や『mixi』の日記と違うのは何か。それは『Twitter』の仕組みの根底にある一方向性だ。従来のSNSでは友達になるためには相手の承認が必要だ。昔の友達を発見したり、最近会った人を見つけたりするのには役立つが、あくまで既存の人間関係を補完するものに過ぎない。見ず知らずの人間が友達リストにたくさんいる人は少ないだろう。それはまさに「友達」リストなのだ。

逆に『Twitter』における「フォロワー」は一方向的な概念だ。相互にフォローすれば「友達」と変わらない状況になるが、最初は常に一方通行で始まる。例え現実に友達同士だったとしてもどちらかがフォローを始めるのには変わりない。この一方的にフォローし始めるのがデフォルトという仕組みが『Twitter』の革新的なところだ。

まず私がだれかをフォローし始める場合を考えよう。これは『Facebook』や『mixi』ではまずうまくいかないが『Twitter』ではごく自然なことだ(だから『Twitter』がSNSと何が違うかを知りたければまず一方的にいろんな人をフォローしてみよう)。この状態ではフォローした相手のTweetが自分のタイムライン(TL)に表示されるだけでブログをブックマークしたりRSSで購読しているのと大差ない。しかし、ここから相手に@でメッセージを送ったり、Retweetで相手のTweetにコメントすることが可能だ。意味のあるコメントをすれば相手がフォローし返すこともあり、何の関係もなかった人間と「友達」になることができる。相手は決まっているのでこれは「つぶやき」でも「フォロワーにのみ伝える」でもない。しかしこの特性を生かすためには、できるだけ有益なコメントをする必要がある

逆に自分がだれかほかの人にフォローされるのはどんな場合か。それは自分のTweetに価値がある場合だ。現実の友達であれば朝何を食べたかにだって興味があるかもしれない。しかし、既に有名人でもなければ見ず知らずの人間があなたのごく普通の日常に興味を持っていることはない。他人にフォローしてもらうためには、なるべく有益な情報や興味深い議論を提供する必要がある。しかも、『Twitter』は多くのネット上のシステム同様にストリーム型のコンテンツであり、紙媒体とは異なりぱっとみて取捨選択するには一工夫(リスト・フィルター・ボットなど)が必要だ。ストリームの価値を上げるにはノイズ比を下げる必要があり、それは大した意味のない「つぶやき」をしないことを意味する

これらの特徴はブログにもそのまま当てはまり、『Twitter』がミニブログ(microblogging)に区分されるのもうなづける。旧来のブログと異なるのは、情報の送り手・受け手という関係が固定的でないこととリアルタイムであることだ。ブログでもコメント欄などを通じて読者と交流することは可能だが、相手もブログを持っていない限りやりとりは限定的だし、常に非同期な形でしかない。『Twitter』 はその交流を自然な形で広げることができるという点で、ブログを書いている人にとってコメント欄を代替する必要不可欠なチャンネルになりつつある(『Topsy』のような『Twitter』のアグリゲーターが役に立つ)。

先ほど、『mixi』や『Facebook』について「既存の人間関係を補完するもの」と述べた。これは別の見方をすれば非常に不自然なシステムだ。現実の人間関係は常に新しい可能性へと開かれている。その意味で『Twitter』は「既存の人間関係の在り方をネット上で再現するもの」と言えるかもしれない

ちなみに、相互にフォローしあっている、つまり「友達」状態の場合には@でやりとりすることで、両者をフォローしている人以外のTLにはTweet が表示されなくなる。これにより、そのやりとりに関係ない人に対しての自分のストリームの価値を下げないで済むし、既存の友達との間のインスタント・メッセンジャーとしての役割も果たせる。

執筆: この記事は青木理音さんのブログ『経済学101』より寄稿いただきました。
文責: ガジェット通信

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