ホテルのインチキ  「誤表示」より「偽装」が潔い(中部大学教授 武田邦彦)

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ホテルのインチキ  「誤表示」より「偽装」が潔い(中部大学教授 武田邦彦)

今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

ホテルのインチキ 「誤表示」より「偽装」が潔い(中部大学教授 武田邦彦)

ホテルのレストランの食材表示の偽装が話題になっている。この問題の背景には4つの深い問題が潜んでいる。

1)日本社会全体を覆う「偽装」の倫理
2)ホテルのレストランのレベルダウン
3)「プロ」意識の欠如
4)五感のレベルダウン

福島原発事故の後、「直ちに健康に影響はない」と繰り返した。放射線障害の主たるものは「致命的ガンと重篤な遺伝的障害」だから、「直ちに」ではないことは誰もが知っている。つまりこれもはっきりした「言い訳できる偽装」だ。政府が率先して「言い訳できる偽装」を推進している社会になった。

マスコミはそれを受けて、自分たちの社員を福島から総引き揚げさせた一方、報道では「直ちに健康に影響はない。そこにいても大丈夫」を繰り返した。言い方は上品ではないが「はっきりした茶番劇」を見せられて、日本社会の倫理がしっかりするはずもない。

第二にはホテルでもレストランのレベルダウンは数年前から著しかった。遠因は「レストランだからホテルそのものではない」という意識、「コストダウンするため」などがある。旅行の多い私はレストランのレベルダウンの現状を体験してきたので、メニューなど見ないことにしている。

第三に日本の職人が持っていた「プロ意識」が低下してきたことだ。日本の職人は強いプロ意識があって、たとえばすし職人があの切れる長い包丁で人を殺傷したということはほぼ皆無である。彼らは「自らの仕事について、それが神聖なもの」であることをはっきりと意識している。

それから見ると、政治家、マスコミの記者、学者、医師などの「高度な専門家」の方がプロ意識に欠如しているのは言うまでもない。東大の教授が御用学者になり、東北大学の名誉教授が嘘をつくのだから、プロ意識の欠如は目を覆うばかりだ。

そして最後に私たちの問題で、賞味期限といい、メニュー表示といい、私たちはすでに五感を失い、大脳皮質で味を判断するに至っている。社会が複雑になり、自分の舌を信じられなくなると「あそこの鮨はうまい。1万円もする」などという全く関係のないことが言われる。

消費者庁はそれなりにチェックを厳しくするだろうけれど、この世には法令やチェックでは根絶できないものがある。それが「倫理」であり、小学校の時に昔話などで繰り返し、「誠実、正直、礼儀」などを教えることだ。

執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年11月05日時点のものです。

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