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【インタビュー『万年野党』について】 事務局長・高橋亮平氏「国民一人ひとりが政治や政策を監視していく仕組みができればと思います」

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かねてよりお伝えしております『非営利法人万年野党』ですが、先日の岸博幸氏のインタビューにおきまして“秋の『臨時国会』のタイミングから「完全に活動を本格化」”とのお話がありました。

本格化していくその活動内容について、さらに取材してまいりましたので、全文を書き起こしでご紹介いたします。

書き起こし

記者:先月、設立が発表された『特定非営利活動法人 万年野党』について事務局長の高橋亮平さんにお話を伺ってまいりたいと思います。

先日、理事の岸博幸さんにもインタビューを行ったのですが、発表された『万年野党』のメンバーを見ますと、会長の田原総一朗さん、理事長の宮内義彦さん、アドバイザリーボードに竹中平蔵さんなど、錚々たる方々の中で、高橋さんは若くしてこの団体の設立に関わっていらっしゃいますが、その経緯やキッカケについて教えていただけますか?

高橋氏:学生時代からNPO、政治家、行政職員、シンクタンク、大学など様々な立場を経験しながらも、一貫して、この国の民主主義の質を高めるために、「民主主義のインフラ整備」が必要だといってきました。インフラと言っても公共事業や下水道、公共交通というものではなく、この国の民主主義の質を高めるための環境整備といった意味合いでのものです。

この「民主主義のインフラ」には、いくつもの要素があると思っています。1つは、「この国の市民や国民が社会や政治に参画する場をどのようにつくるか」という事。そして「判断するための能力をどう養成するか」などだと思っています。日本では、まだまだ参画の場すらほとんどないのが現実ですが、こうした状況を変えていくための仕掛けを少しずつでも積み上げていきたいと思っています。

本来なら政府の監視は、野党などの役割であり、また別の側面では、メディアがその役割を果たさなければならないものだと思いますが、残念ながら、日本では、こうした政府の監視機能がうまく果たされていないように思います。とくに政局ではなく、政策に対する監視機能というのは、この国にはほとんどなく、こうした政府や議会の政策に対しての監視、さらには、「議員一人ひとりの政策活動などについてもしっかりと監視する仕組みが必要」との想いから、万年野党の立ち上げに参加しました。

記者:こうした仕組みの必要性を感じられた具体的な経験などがあったのでしょうか?

高橋氏:高校時代に生徒会長として県内の学校に呼びかけ生徒会の連盟組織を創設したり、大学時代には、若者の政治参加を求めるNPOを立ち上げたりもしました。当時から「自分たちのルールは自分たちで創る」などと言っていましたが、とくに「同世代が社会や政治に関心が薄い」と思った事は1つのキッカケになっているように思います。

例えば、「同世代が関心を持たない事による問題の1つ」に、『世代間格差』の問題があります。生まれてから死ぬまでの生涯で受け取る年金や医療費、各種サービスなどの受益と、税や保険料などで支払っている負担との差が、生まれてきた世代によって1人当たりで1億円もの差があるという問題です。高齢世代が人生で約5,000万円のプラスになるのに対し、将来世代と言われる若者は、逆に生涯で約4,500万円のマイナスなります。しかし、同世代や、さらに若い日本の若者は、こうした事実を知りません。自分たちが政治に関心を持たない間に、こんなにも搾取されているなんて思ってもいないのです。

一方で、New York Times、CNN、BBCなどの海外のメディアの取材を受けると、必ず「なぜ、日本の若者は暴動を起こさないのか」と質問されます。この背景には複雑な要因があり、細かい話はまたの機会にしますが、少なくともこうしたギャップを作り出す要因の一つに、政府や国会などの政策やその前提となる状況も含め、分かりやすく国民に説明する仕組みがない事もあるように思うのです。「デジタルディバイド」や「災害弱者」などという言葉がよく使われるようになりましたが、『万年野党』の活動が、政治的な能力や政策的な能力をこれまで培う機会がなかった人たちをも巻き込んだ民主主義の仕組みや環境を創るきっかけにできればと思っています。

記者:万年野党では、どのような活動をやっていくのでしょうか?

高橋氏:この夏の参議院選挙では、万年野党の元になった政策監視会議で「国会議員の通信簿」と題して、国会での質問回数や議員立法発議数、質問趣意書件数などといった国会議員の活動データだけでなく、質問の中身についても評価する取り組みを行いました。まだまだ精度を上げていかなければならないと思いますが、こうした取り組みは、選挙という、唯一国民の政治への関心が高まるタイミングで、普段なかなか接点のない方々にも、テレビに出ている議員だけではなく、地道にしっかりと活動している議員がいる事、議員がどういった質問をしているのかなどを知ってもらったり、議員の役割はどういうことなのか、どういう活動している議員を評価するべきかなどと考えてもらうキッカケになればと思っています。

これまでの選挙では、政党の政策で判断される事はあっても、多くの場合、メディア報道などによる政党や政治家の印象によって判断されることが多かったように思います。「テレビに出ている議員が当選する」などと揶揄されることもある程です。政党の公約のチェックもそうですが、その政党の候補者だということだけでなく、さらにその候補者がどういう活動を行ってきたのかをしっかりと評価していく必要を感じます。参院選で公表した国会議員の質問力評価は、単にどの国会議員がランキングのどの位置にいるのかという事だけでなく、どの議員のどういう活動が、同僚の国会議員、カウンターパートである官僚に評価されているのか、また政策関係者などが、どのような視点で評価しているのかといった視点を、他の議員や候補者を評価する際にも参考にしてもらえるようになればと思います。
 
この国の政治に不信感が広がり、政党や政治家に期待できないなどという言葉をよく耳にします。ならばなおさら、有権者自身がこの国の未来のために変わっていくしかないのではないかと思うんです。

記者:今後の『万年野党』の活動の方向性についてお聞かせください。

高橋氏:『万年野党』では、この他にも『アベノミクスチャンネル』という動画放送による政府の政策監視の仕組みも行っています。今後は、さらに「政府や議会の政策に関する監視機能を強化するための仕組み」についても考えていかなければならないと思っていますが、個人的には、もう1つ、今後考えていきたいと思っているのが、地方自治の問題です。
 
先日もYahoo!ニュースなどに『議員による政策的条例提案はわずか0.17%、98.8%の原案がそのまま通過。地方自治を変えなければ私たちの生活は良くならない。』とコラムを書きましたが、議会には大きな役割として『政策提案』があるはずです。しかし実際には、地方議会の現場では全体の90.2%は行政側からの提案であり、議員提案はわずか9.8%、とくに議員による政策的条例提案はわずか0.17%しかありません。

総理が国会議員から選ばれる国政と異なり、市長も議員も選挙によって選ばれる二元代表制をとっている地方自治現場では、「行政と議会は車の両輪である」と言われる事も多く、議会側からの提案だけでなく、国政以上に行政をチェックする事もまた議会の重要な役割だとされています。しかし、市長提出による議案の議決対応について見ると、議会によって修正されて可決した割合は、わずか0.4%しかなく、全体の98.8%は、市長提案を原案そのままで可決しています。もちろん何でも反対すればいいという事ではなく、市長提案の中で、良いものは、そのまま原案可決すればよいですが、98.8%もの原案がそのまま可決している状況では、議会の「行政チェック機能」とは、どういうものかと考えさせられます。

記者:「国政以上に政策監視が弱い地方自治体や、地方議会の監視もやっていこう」ということでしょうか?

高橋氏:こうした話をするとすぐに、「地方議会はレベルが低い」といった単純な誤解がありますが、こうした実態は、決して地方議会だけの話ではなく、国会でも同じ様な構造です。また、「だから地方議会はいらない」、「地方議員の報酬を減らそう」などと単純に考える人も多いですが、こうした発想は、問題の本質を見失う可能性が高いどころか、より本質的な問題が悪化する可能性すらあります。
 
昨今、地方議会においては、自治体の憲法とも言われる『自治基本条例』の制定に続いて、『議会基本条例』の制定が流行っています。この『議会基本条例』を制定した市は158市まで増え、『自治基本条例』を制定している市も338市、そのうち150市は、『自治基本条例』の中に、議会に関する規定を含んでいます。こうした流れは、議会の活性化と共に、地方自治のガバナンスを機能するようにするにためのものであるべきですが、地方議会の「政策提案機能」や「行政チェック機能」は、必ずしも改善されてきていません。一自治体あたりの議員提出議案数の推移も、市長提出議案の原案可決率の推移も、ほとんど変わっていません。議員の個人質問の一自治体あたりの年間平均述べ人数にいたっては、2006年以降逆に減少傾向になっているほどです。
 
地方議会関係者でも、「地方議会は、国会の地方版」などと思っている人が多いですが、実際には国会と地方議会では、役割が違う部分が数多くあります。とくに、地方自治においては、住民の直接請求に基づく住民投票で、条例の制定改廃の請求ができるほか、議員や首長のリコール、議会の解散などの請求も住民の権利として認められているなど、住民が直接行使する事が位置づけられています。地方自治体におけるガバナンスは、国政と異なり、議会・行政・市民との3者のバランスにより成り立つ仕組みになっているのです。

記者:高橋さんとしては、地方自治現場においても『万年野党』の活動を広げていきたいという事ですね。

髙橋氏:そうですね。民主主義の質の向上が必要なのは、決して国政だけの話ではありません。「地方自治は民主主義の学校」とも言われます。自分たちの街や生活を役所や政治家に依存するのではなく、自らが主体的にどうしたいのかと関わっていく事が、重要であり、こうした地方自治から成功体験を増やす事で、国政への関わり方についても変えていける仕掛けにできればと思っています。
 
日本では「お上に任せておけば大丈夫」などと言われてきたように、これまでの政治や行政は、官僚をはじめとした行政職員と政治家を中心に行ってわれてきました。この事は逆に、「多くの国民が官僚や政治家に依存してきた」と言い換える事もできます。国はもちろん、地方自治現場も含めて、行政や議会の監視的な仕組みを構築していく事、またこうした仕組みを作る事によって、とくに議会や議員の質、有権者一人ひとりの質も高まる仕組みも同時に考えていかなければならないと思っています。自分自身、26歳で議員になり、34歳で部長職として行政職員も経験しました。組織の中には、現状を何とか変えていかなければならないという想いや志を持ったものたちもいます。

しかし一方で、これまで長年続けてきた仕組みや組織はなかなか簡単には変わりません。こうした地方自治のガバナンスの仕組みを変えるためには、「議会の常識」や「役所の常識」といったこれまでの限られた人たちの中での常識から、乖離してしまいつつある「市民の常識」で判断されるようになる様なパラダイムシフトが必要だと感じます。企業がマーケットの中において市場原理で淘汰されていくように、特定の人たちしか関わらないという力学から、多くの市民による監視の中で淘汰されていく仕組み、言い換えれば、市民や国民の総意による市場原理が働く仕掛けや、さらにはその先にある集合知による新しいガバナンスの仕組みを創っていきたいと思っています。

記者:ありがとうございました。

高橋亮平(たかはし りょうへい)氏:プロフィール
特定非営利活動法人Rights代表理事。明治大学世代間政策研究所客員研究員、ワカモノ・マニフェスト策定委員、地方自治体公民連携研究財団客員研究員、政策工房客員研究員。
1976年生まれ。明治大学理工学部建築学科卒。市川市議会議員、東京財団研究員、松戸市政策担当官・審議監・政策推進研究室長などを経て現職。テレビ朝日『朝まで生テレビ!』などに出演。AERA『日本を立て直す100人』や米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムに選ばれる。著書に『世代間格差ってなんだ』『20歳からの社会科』など。

参考

[【発表】「特定非営利活動法人万年野党(政策監視会議)」(仮称)の設立について(2013年7月3日)]2013年07月04日『ガジェット通信』
http://getnews.jp/archives/373221[リンク]

[【緊急インタビュー『万年野党』について】理事・岸博幸氏(慶応義塾大学院教授)「政治家の方々に深く反省をして欲しいと思います」]2013年07月16日『ガジェット通信』
http://getnews.jp/archives/379914[リンク]

「アベノミクスチャンネル」『東京プレスクラブ』
http://ch.nicovideo.jp/abenomics[リンク]

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